番外編①/とある日の深夜のお話
間章なので、文字数は本編より少なめです!
俺の名前は小雨。そこら辺にいる至って普通の男子高校生だ。ひょんなことから異世界に転移してしまい、元いた世界を捨ててこの世界で生きていくことを決めた。そんな俺は今、噴水の前にあるベンチで一人、夜空を見上げている。
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誰だって一人になりたい時くらいあるだろう。限界まで追い詰められた時、ただただやる気が出ない時、何も考えたくない時、人それぞれ要因は違う。今の小雨の状態はというと、眠れない。ただそれだけだった。
深夜に一人、ベンチに座って夜空を見上げる小雨を月光がスポットライトのように照らしている。
「蟻って……寝るのかな」
誰もいない深夜の噴水の広場は静寂に包まれた。そんな中聞こえるのは微かな水の音と小雨の呟く声だけだった。
小雨はスマホも何も持たずにこの世界に転移してきてしまい、知りたくても何も調べられなかった。スマホがどれだけ便利な代物だったのか、つくづく思った。
肝心なスマホは飛び降りる時にズボンのポケットからスマホが飛び出てしまったのだろうか……しかし持っていたとしても一緒に転移できない可能性が無いことは無い……
過去には戻れない、考えるだけ無駄だと思った小雨は蟻の話題を頭の端に追いやって再び空を眺める事にした。
「……てか家どうなってるんだろ」
クソみたいな世界と決別しよう!なんて決意したがやはり元の世界の事を忘れられる訳がない。小雨が居なかったら妹の面倒は誰が見る?親の老後は?気になることが沢山あった。
「……ま、いいや」
考えるだけ無駄だと思った小雨はベンチに深く腰掛け、足を目一杯伸ばした。人が多い昼間こんな事をしたら常識がなってないと住民に怒られるだろう。
ただし今は深夜、誰もいない噴水の広場で普段はできないようないけないことをしている事に少し愉悦感に浸った。
「足を伸ばすなんて常識がなってないわね」
その声に驚き、小雨は座り直した。聞き覚えがありすぎる声、例のピンク髪のサイドテール。小雨はそんな期待を胸に声がした方向を見ると案の定、白いワンピースを着ている人が居た。
「クレア?!何でこんな時間にいるんだよ」
小雨は小声で声を上げた。
「そんなに驚かないでちょうだい。私も気分転換したい時だってあるわよ」
クレアは小雨の隣に座る。小雨は気を使って少し左に寄ってあげた。ベンチに座ったクレアは身長のせいか、地面に足が届かずブラブラしていた。
「クレアはさ、どうして異世界から来た俺のことをすぐに受け入れてくれたんだ?」
「何よ急に……」
小雨の急な質問に戸惑うクレア。首を傾げて悩む仕草をしてから答える。
「もし変な事をしてもすぐに殺せるからよ。魔法を持っていないのは知ってるからちっとも怖くないわ」
「……へぇ」
「なによその反応。答えてあげたんだからお礼くらい無いの?」
「……まずはありがとう。でも知らない方が良かったかもしれない」
「聞いたのはコサメじゃない」
クレアからの正論攻撃に小雨は瀕死だった。聞いたのは確かに自分で自業自得だ……しかし衝撃が大きすぎる。クレアの口から殺すなんて出てくるなんて思いもしなかった。
「聞かなきゃ良かった」
「自業自得よ……じゃあ次は私の番ね」
「……何でもどうぞ」
落胆する小雨を気にもとめず、話を続けていくクレア。
「この生活、続いて欲しいと思う?」
クレアは小雨の方を向く。小雨もクレアの方を向き、目が合った。クレアの瞳は月光に反射して綺麗で、まるで吸い込まれそうな感じがした。
「……うーん、帰りたいか帰りたくないで言うと……正直帰りたくないかな」
「なるほどね……」
クレアの反応は薄かった。いや、普段から話していても反応は基本、薄かったと思う。一体何故こんな事を聞いたのか、小雨は変な探りを入れるのを辞めた。
「まぁ、コサメが向こうの世界で何があったかは聞かないけれど……何かあったら相談に乗ってあげるからいつでも言ってちょうだい」
「……わかった。ありがとう」
小雨のその言葉で二人の会話は終わる。しかし小雨はお互い無言でも気まずさも何も感じて居なかった。再び噴水の広場が静寂に包まれる。
「さ、もう遅いし宿に戻るわよ」
「確かに……俺もちょっと眠くなってきたかも」
「帰ったらホットミルク作ってあげるから、それ飲んでから寝てちょうだい」
気づいた頃には空は若干明るくなっていた。二人はベンチから立ち上がり、たわいもない会話をしながら宿へと向かった。
最後までお読み頂きありがとうございました!
一章を読んでからだと更に番外編の面白みが増すかと思います!
次回番外編②の投稿日は十月八日です!




