許すまじ
無事訓練を終え、一番にアランに報告へ行った小雨。ステータスが一つ増えてルンルンの小雨はアランに対戦を申し込み、いざ対戦するがボッコボコにされてしまい、悔しさで泣いた。
「コサメー、ほら、泣かないで起き上がって」
「びゃああああ!俺の努力があああ!」
「……はぁ、全く。でも一分持っただけすごいと思うぞ俺は」
アランは小雨の為に少々手加減してやるべ気だったか……アランは少し罪悪感を持つ。小雨の涙が日光に反射してキラキラと光りながら頬を伝う。
「泣きすぎなんだよお前」
「アラン……許すまじ」
「許すまじ……?あっはは、何だかんだ許してくれるんだな」
小雨の許すまじと言う言葉を聞いて何だかんだ許してくれたと勘違いして思わず笑うアラン。
それを見た小雨は驚く。本来許すまじと言うのは古典の打ち消しを利用した言葉で、本当の意味は 許さない だ。この世界にこの言葉が存在しないのか、それともただアランが知らないのか。
「許すまじって言葉知らないのか?」
「え?知らないって言うかそのまんまの意味だろ?」
「ふーん」
心の中でこいつは馬鹿なんだなと少し軽蔑した。小雨は不貞腐れた顔をしながら立ち上がり、袖で涙を拭いた。小雨は昔から泣きっぽい。
「じゃあ相棒がが成長したお祝いに、一緒にご飯食べに行かないか?」
アランは小雨の肩を叩き、小雨に元気を出してもらおうと思い、提案してみる。
「食べる!お腹すいた!」
右手を挙げて即答した。バカな小雨はまんまとご飯に釣られてしまう。その様子を見たアランは小雨に向かってニコッと笑った。
「急に元気になるな小雨は……時間もいいくらいだし早速行くか」
小雨はご飯屋さんに向かうアランの後ろについて行く。ご飯屋さんの入口の上には大きい看板にはルルパと書かれていた。どういう意味があるのか疑問に思いながらアランに続き、入店する。
「お!アランくんじゃないか。よく来てくれたねぇ」
そこそこ年寄りのおじさんがカウンターに立っており、アランの様子を見て嬉しそうな顔をした。店内を見回すと壁には大きいメニュー表やレコードが貼られており、全体的にレトロな感じだった。それにお昼の割には小雨とアラン以外には客がいない。
「おじさん久しぶりだな〜!」
「アランくんが来てくれて嬉しいよ……おや、その後ろの男の子は誰なんじゃい?」
「俺は小雨って言います!」
小雨はアランの横に並ぶ。
「ほっほっほ、元気があってよろしい……今は他のお客さんが居ないから好きなところに座っておくれ」
二人は店内の奥にある二人用の座席に座る。アランの気遣いなのか、小雨をソファー方へ座らせ、アランは椅子の方に座った。
「ほれ、お水とメニュー表じゃよ」
おじさんはメニュー表とお冷を持ってきてテーブルに置いてくれた。そのまま去るかと思いきやいきなりアランの話を始めた。
「少年、聞くが良い……実はな、アランはこう見えてお酒めちゃくちゃ弱いんじゃよこの前だってなーー」
「なっ……?!おじさん〜?それは言っちゃダメだろ!?」
「えぇ?!そうなのか?」
おじさんの爆弾発言でアランは飲みかけていた水を吹きかけてむせた。アランの頬は少し赤みがかっており、ゴホゴホと咳をしながらおじさんの事を睨む。小雨はオーナーが言う事実にただ驚くことしか出来なかった。
「ほっほっ……そんなに怖い顔しないでおくれ」
「じゃあ余計なことを言うな、もうこの話は終わりだ」
「えぇー?もっとアランの話聞きたいーー」
アランはガタッと椅子から立ち上って小雨の頬を右手で掴みぷにっと潰した。
「俺の話を聞きたいなら二人の時に俺が言うから今はダメだ……おっけー?」
「ふんふー!」
訳:おっけー!
小雨はアランに向かってニコニコしながらグッドサインを出した。
アランは確認を取ると小雨の頬から手を離して再び椅子に座る。もう既にメニューが決まっていたのか、おじさんの方を向いて言う。
「俺トマトパスタで……小雨はどうする?」
「じゃあ俺もパスタで!」
おじさんはコクリと頷き、ゆっくりとした足取りでカウンターに向かって歩いていった。
パスタが届くまでの間、二人の間にしばらく無言の時間が出来た。
しかし小雨は正直無言の時間があってもアランが近くにいるだけでも全然良かった。この世界で初めて会った唯一の味方、おまけにめっちゃ強い。この人が近くにいたらとりあえず大丈夫だという圧倒的安心感を感じる。
「そういえばアランの特異魔法って何なんだ?使ってるとこ見た事ないなって思って」
「俺の特異魔法?一応戦闘向けではあるけどな」
「もうちょっと詳細を……」
小雨は興味津々の顔でアランに向かって追加の情報を求める。アランはその眼差しに耐えられなかったのか、あるいは年下からのお願いは断りずらかったのか……口を開く。小雨はアランの次の言葉に耳を傾ける。
「……内緒」
「え?」
「ぜってー言わねー」
「え……えぇっ?俺たち相棒じゃないのかよ!」
「言えねーよ絶対!恥ずかしい!」
アランは両手でバツ印を作る。何故言いたくないのか、それを知るのは本人のみ。しかしさっきのアランの表情を思い出すと、少し悩んでいたようにも見えた気がしたが……
「ふーん、アランのケチ!」
「はっ、別にケチじゃねぇだろ」
小雨の子供みたいな発言に思わず笑みを溢すアラン。
「ほいお待たせ、トマトパスタ二人前じゃよ」
テーブルの上に置かれたトマトパスタは具沢山で見ているだけで美味しかった。それに店内の蛍光灯の光に当たりテラテラと輝きより一層美味しそうに見えた。
「おぉ!うまそう!」
「だろ〜?ここの店は穴場なんだ」
アランは早速一緒にテーブルに置かれたフォークを取り、パスタを巻いて一口に運ぶ。それに続き、小雨もパスタを口に運ぶとトマトの酸味がいい感じに効いていてどのお店にも負けない味だった。
「うっま、何これ」
「ほっほっほ、気に入ってくれて良かったよ」
小雨の反応におじさんは頬を綻ばせた。飲食店をしている以上、自分の料理で喜んで貰えるのは何よりも嬉しいことだろう。
「そういえばアラン、この後何する?」
「この後か?うーん……ファミリーのことも追いたいけど今日ぐらいは休憩させたいし……とりあえず食べ終わってから決めるか」
「そうだな」
小雨はアランの言葉に頷く。パスタを食べ終えた二人はアランが纏めて会計をしておじさんに挨拶したあと店から出て行った。
「ふぅ、お腹いっぱいだな」
アランはお腹をさすりながら小雨に問いかけた。
「またここのパスタ食べに行きたいな!」
「そうだな、また行こう!じゃあ今からーー」
アランが言葉を続けようとした時、森の方から爆発音が聞こえた。二人は驚いて森の方向を見ると、黒煙が上がっていた。
「あ……アラン?あれって」
「……行くか?どうせ警備兵が行くだろうけど……俺は気になるから行く。あんな事になっているのに見て見ぬふりはできない」
魔物がいつどこで現れるか分からない森、前までのアランなら小雨の事を絶対連れて行かないだろう……しかし、今回は小雨に問うことにした。
質問された小雨は驚いたような表情を見せる。一瞬不安そうな表情をしたがーー
「……アランが一緒なら行くしかないだろ!」
「ははっ!さすが相棒だ!」
二人は顔を見合せて笑った後、二人は急いで森の方へと向かった。
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ファミリー本部
ファミリーの本部の建物から黒煙が上がる。窓には血飛沫が付いていたり、窓ガラスが割れている所もある。次々と人ではない悲鳴が上げ、構成員が気が狂ったようにお互いを傷付け合い、その姿はもはや人間ではなく、ただの狂人だった。
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