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クソみたいな世界と決別を  作者: いっち
第一章 【予言】
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しつこいファミリー

驚いた小雨は声の主の方向を見ると以前出会った赤髪の狐のような目をした男性がいた。名前は確かーー


「……ヴァノン? 」


「覚えててくれたんだね、嬉しいよ……ところで、君は一体ここで何をしていたんだい?」


「いやそんな事より助けて欲しい!……って」


雷の玉は止まることを知らずにぐるぐると色んな所を回り続ける。玉の方を向いてこう言い放ったーー


「コサメ!何とか耐えて!」


「え……リンは何を言ってんだ?!」


リンが放った言葉に小雨は驚く。小雨はここにいるのにどうして三人の視線は玉の方へ行くのか疑問に思った。それ以前にヴァノンの存在にすら気がついていない。


「どうやら今の状況が気になるみたいだね?」


小雨は剣を抱きしめながら二回程頷く。


「これは僕の特異魔法なんだ。人の目を欺くことができる優れものだよ。僕は偶然ここに通りかかって君を見つけてね」


「ありがとうヴァノン、助かったよ」


小雨は思わず胸を撫で下ろす。ヴァノンは返事をする代わりにニコニコしている。その顔はまるで何かを企んでいるようにも見えた。安堵するのも良いが、この状況をどうするかーー


「ヴァノン、必要な薬草は集まったよ……この人誰?」


「おや?薬草を集め終わったんだね。お疲れ様、マリー。この人は例のコサメくんだよ」


いきなり少女が木々の間から現れる。手から溢れ出るくらいの薬草を持っており、ヴァノンに話しかけた。しかし小雨の存在を認識してから柔らかい目から鋭い目へと目付きが変わった。


「この人がコサメくんなんだね……ふーん」


「俺に何か付いてる?」


ヴァノンの言葉を聞いて、マリーの鋭い目は柔らかい目に変わる。マリーは小雨に近づき、小雨の全身を見るように周りをくるくる回りながら小雨を観察した。


「安心して、何も付いてないよ。そして、初対面の人にそんな態度をとったら失礼だよ、マリー」


「だって気になるんだもん」


マリーはヴァノンからの言葉を気にもせず、ずっと小雨をまじまじと眺めている。


「チッ……やはりファミリーはしつこいですね……!」


ケインは舌打ちを打ち、エミルから距離をとる。ケインの額からは汗が止まず、リンが攻撃を仕掛けるがエミルは綺麗にかわしてしまう。小雨を構ってられないほど向こうはかなり苦戦しているようだ。


「ヴァノン!いきなりでめっちゃごめんなんだがあのファミリーをどうにかしてくれないか? 」


「おや?でも君は武器を持っているようだけれど……」


「何のための剣なの?」


ヴァノンとマリーの言葉に小雨は固まる。確かに自分は実践をするためにここに来た……しかしほぼ強制だったが。



(俺は見てるだけでいいのか?)



ここに来たくせに自分は見ているだけで何もしない。それは嫌だった。この世界に来て自分は護られてばかりいる……何も出来ずにただ見るだけの傍観者だった。自分は何のためにあのアレクサンダー家に行ったのか、小雨は考えて黙り込んでしまった。


「ケイン!あまり無理はしないで!ここで魔法を消費しすぎると良くない!」


「わかってますよそんな事!」


二人が目を合わせた時、リンとケインに隙ができてしまった。その隙をエミルは逃すことなくまずはリンに向かって雷魔法で生み出した雷の棘を撃った。


「なっ……リンさんっ!」


「え……」


リンが正面を向いた時、それはすぐ近くにあった。ケインがリンを助けようとしても距離は遠く、とても希望が見えない。


しかし、そこに影が現れたーー


「っ……!!!」


「なっ……!私の魔法を!」


小雨は自分の持っていた剣でエミルの魔法からリンを護った。小雨の瞳の中にキラッと一瞬光が走る……その姿を見たケインは少々驚いたような顔を見せた。


「コサメさん魔法使えるんだ」


ケインはその隙を狙ってエミルへ一気に距離を詰め、上へジャンプする。そしてケインが持っていた剣に光が宿ったその時ーー


「ウィークネス」


エミルは反射的に雷魔法を撃つが、特異魔法を使ったケインにはビクともせず、そのまま斬られてしまった。


「なんで魔法が効かな……がはっ」


エミルは斬られた胸を抑えてその場に倒れ込む。その目はケインより小雨を睨んだが、すぐに失血で気絶してしまう。

一方小雨は自分がした事をまだ受け入れられていなかった。


「コサメ、ありがとう!あなたがいなかったらあたしどうなっていたか……というか、あなた雷魔法撃たれたんじゃなかったの?!」


「コサメさん、雷魔法を撃たれて向こうで倒れてたじゃないですか、今はもう大丈夫なんですか?」


二人の質問に全く記憶は無かった。恐らくヴァノンが三人に見せた幻覚の小雨は雷魔法に撃たれて倒れていたのだろう……話を混乱させたくなかった小雨は適当に返事をする事にした。


「ぜ……全然大丈夫だ!」


二人に向けてグッドサインを出すが、魔法を受け止めた反動なのか、ずっと手と足が震えている。そして小雨は思い出したようにヴァノンとマリーが居た所を見た。


「……あれ?」


「どうかしましたか?」


ヴァノンとマリーがいたところを見るがそこには誰も居なかった。


「いや、何でもない」


「怪しいですね?……というか小雨さん、魔法使えるんですね」


「魔法?!コサメ実は魔法使えたの?!」


「えぇ?!使えないに決まってるだろ!!」


ケインの言葉にリンと小雨は驚いた。しかしケインは冗談を言うような人ではないとリンは知っている。二人の視線に小雨は思わず叫んでしまった。


「小雨は魔法なんて存在しない異世界から来たんだよ?」


「え、そうなんですか?!」


リンの言葉にケインは瞳を丸くした。今まで生きてきて一度も異世界から来た人なんて見たことも聞いたことも無かったからだ。


「リンの言う通りだぞ!だから俺が魔法なんて使えるわけがない!」


「……ではさっきのは僕の見間違いと言うことですか?」


「そういうことだよ」


「……なるほど」


小雨とリンの言葉にケインは渋々納得してしまった。確かに今考えてみればあの魔法の気配はリンのものだった可能性もある。


「さ、今日はもう魔法を使いすぎたから帰るよ!」


空は藍色に染まりそうだった。森の中は昼の時と違い不気味だった。こんな所一人で居ればロクなことがないだろう。


「俺ももう疲れた……」


「コサメ、異世界から来たんだったら住む場所も食べるお金も無いでしょ?しばらく警備兵の寮に止まったら?大団長にはあたしから話をつけておくから!」


「リンさんの言う通りです」


二人の言葉に小雨は申し訳なさそうな顔をしたが、断ったら今の小雨一人ではどうしようも無いためありがたく提案に乗ることにした。


「じゃあお言葉に甘えて!」


「よし!」


リンは嬉しそうにガッツポーズした。

それから三人はエミルを連れて本部へ戻ることとなった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


空が完全に藍色に染まった頃、森の中に突然一人の男性と少女が姿を現した。


「今日は面白いのが見れたね、マリー」


「うん……やっぱり予言はすごいよ」


「まさかもうここまで来ているとは思いもしなかったよ、今後のコサメくんに期待だね」


二人は森の中を歩いていく。向かった先はーー


「ファミリーの本部って意外とちっちゃいんだね」


二人はファミリーの本部の正面玄関で立ち止まった。ちょうど正面玄関から胸のバッジにNo.六と彫られた髭が生え、スーツを着た男性が出てきた。


「お、お前たちは誰だ!」


「おや?そこまで驚かなくてもいいじゃないか。僕の名前はヴァノン、魔女遊戯会の偽りの魔女さ」


「……マリー、呪いの魔女」


「ま……魔女遊戯会が何をしに!」


焦る男を見てヴァノンはフッと笑う。


「脇役の仕事をしに来たんだ」


「わ、脇役ってなんだ!言っていることの意味がーー」


男が発言している最中にいつの間にかマリーは男の首に刺すタイプの注射器を刺していた。


「……なっ?!」


注射器の中身が血管を通り、男の体内に巡っていく。男はその場に座り込み、二人を睨むがすぐに気絶した。


「別に死にはしないよ……ちょっと小細工をしただけ。起きたらマリー達のことも忘れてる」


「さぁ、マリー。脇役の仕事といこうか」


二人の姿が消えると同時にファミリーの建物内では次々に悲鳴が上がっていった。

最後までお読み頂きありがとうございました!

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