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クソみたいな世界と決別を  作者: いっち
第一章 【予言】
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異人に拒否権は無い

二人は再び向き合い、どちらが先に動くかお互い無言で伺い合う。


先に動いたのはーー


「……っ!そう来るんだね!」


珍しく小雨が先に動いた。ずっと受け身では成長しないと思っていたのだろう。リンの動きが大体読み取れてきたのか、攻撃は受けることは無いがーー


「ほら、早く一発入れてみてよ!」


いつまで経っても一撃が入れられなかった。隙を見て一撃を入れようとしたが、さすが隊長という肩書きがあるだけ……ぶつける攻撃を全て避けられる。


「ほらほら早く早く〜!」


「そう急かすなよ!」


小雨はリンの言葉に急かされていた。実際に魔物と戦っていたらもう既に死んでいるかもしれない。

小雨はリンからの反撃に耐えながらどう一撃を入れようか考える。

だがしかしーー


「そんなにもたもたしてたら本番じゃ殺されちゃうよ!」


「なっ……」


リンが本気を出して小雨に攻撃を仕掛ける。勿論戦闘経験がない初心者の小雨はリンの本気の攻撃を受けきれるはずがなく、木剣を落として両手を上げて降参した。


「こ、降参です!」


「はい、あたしの勝ち〜」


リンは木剣で小雨の頭を痛くない程度にコツコツと叩く。その姿が自分は負けたんだと実感させられて微妙にイラついた。


「よし、お昼にしよっか!異世界から来たコサメくんのご飯はあたしが奢ってあげる!」


「えぇっ?!いいのか?」


「あたしたちはもう友達だからね!」


リンの言葉に小雨の顔が向日葵が咲くようにパッと明るくなる。小雨の中で、自分に友達ができること以上に嬉しいことはなかった。


リンは小雨を連れてアレクサンダー家の一階にある警備兵とアレクサンダー家専用の食堂へ行く。食堂に入ると椅子とテーブルが沢山並べられており、自分たち意外にも何人かの人が食事をしていた。


リンが小雨の手を引いて窓側のカウンター席へと案内する。

窓からはアレクサンダー家の豪華な中庭が見える。

色鮮やかな花が植えられていたり、ベンチも設置されていて、ここでお昼寝をしたらとても気持ちよさそうだ。


「ここはあたしが気に入ってる席なんだよここからは中庭が見えて落ち着くんだよね」


「その気持ちちょっとわかるかも」


「でしょでしょ?」


意外なところで気が合うリンと小雨。二人は大量のメニューの中からお揃いでオムライスを選んだ。


食堂のカウンターからトレーに乗せられたオムライスを受け取り、先程の席へとリンと共に戻る。


「そういえばコサメはもうこの世界に慣れた?」


リンはオムライスを一口分掬いながら言う。小雨はその質問を聞いて少し悩んだ。


「慣れたっちゃ慣れたと思うけど……まだまだわかんないことだらけで苦労する面もある」


「元々居た世界に魔法はあった?」


「魔法なんてないよ、それに貴族も居ないし」


「えぇ?!嘘っ?!」


小雨の返答にリンは目を丸くして驚く。魔法は使えない、貴族も居ない。そんな世界はリンの中では信じられなかった。

二人は雑談をしばらく続けているその時ーー


「師匠!」


「おっと、この声は〜?」


トレーを持って近づいてくる小雨と身長が同じくらいの青年が見えた。トレーの上には美味しそうなトマトスープとパンが乗せられていた。

スッキリした緑髪の短髪で、目が綺麗なオレンジ色。そんな彼はリンを師匠と呼んでいる……リンの弟子だろうか。


「奇遇ですね!……って、隣の人は誰ですか」


青年は食堂のトレーを持ったままリンの隣にいる小雨を睨みつける。その姿はまるで飼い猫が初めて他人に会った時の反応のようだった。


「俺の名前は小雨!お前は?」


「馴れ馴れしくしないでください!僕の名前はケイン、第二部隊の隊員でリンさんの弟子です」


「リンに弟子がいたんだな!」


「そうそう、私の剣術に惚れたのか分からないけどね。初めて会った時にいきなりね、僕を弟子にしてください!って私に言ってきたんだよ」


リンはケインの声真似をして言う。それを聞いたケインは自分の前髪をちょいちょいといじりながら恥ずかしそうに頬を赤らめる。


「し、師匠何やってるんですか!そんな事されたら恥ずかしいじゃないですか」


「えぇ〜?面白いしいいじゃん」


「リン声真似上手いな!」


「コサメさんは黙っててください!……はぁ、全く。」


ケインは呆れたようにため息を吐く。しかし頬はまだ赤いままだった。


「僕もお隣いいですか?」


「もっちろ〜ん!」


リンはケインに向かってグッドサインを出す。それを見たケインはリンの隣のカウンター席に座った。席に座った時、つい頬を綻ばせてしまいそうになるが手で口を被って隠す?


「ケイン大丈夫か?」


「いえ何でも」


ケインは即答した。バレたら困る事情でもあるのだろうか。もしくはーー


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


三人はお昼ご飯を食べ終わり、トレーを返却棚へ持って行こうとするが、ケインが率先してリンと小雨の分のトレーをひとつに纏め、持って行ってくれた。三人は食堂を出てアレクサンダー家のロビーで立ち話を始める。


「ケイン普通に良い奴だな〜!」


「何ですかその言い方」


「気が利くね、ケイン。今度リアムとの手合わせお願いしてあげようか?」


「え、いいんですか!」


なかなか手合わせをして貰えないような相手だからだろうか、リンの言葉にケインは顔を輝かせた。


「リアムって、あの一番隊隊長の事だよな……?ケインってもしかしてめっちゃ強いのか?」


「習うより慣れろ……これはリンさんがいつも僕に向かって言ってくれる言葉です。」


「そうそう!初めから生ぬるい相手に対戦してちゃダメ!強い相手にいっぱい立ち向かっていかないと!」


「な……なるほど」


ケインとリンの言葉に小雨は納得したような反応を見せたが、実際心のどこかではそんな事も無いのでは……?なんて思っていた。


「何か言いたげな顔をしていますね……コサメさん」


「いやいやいや〜!そんな事ないですよ〜」


ケインは小雨の様子を伺った後、再び小雨を睨んだ。思っていた事が表情に出ていたのかと思って小雨は焦り、謎の丁寧語を繰り出してしまった。


「まぁまぁ!そんな事なんてどうでもいいじゃん!……あ、じゃあ早速行こうよ!」


「……どこに?」


「どこへですか?」


小雨はポカンとした顔をして首を傾げた。それに続きケインもリンの急な発言に困惑した様子で首を傾げる。


「魔物狩り!!」


・・・


「「え?」」


小雨とケインがハモった。おまけに同じおどろきかたをしている。


「今から……ですか?」


「当たり前じゃん!」


「お……俺は剣術教えて貰うだけで魔物狩りにはーー」


いきなりの提案に小雨は驚きが隠せなかった。流石に無茶だと思い、リンの提案を断ろうとした小雨だったが隣にいたケインに囁かれる。


「師匠の提案を断ったらぶっ殺す……」


「ひいっ……!」


ケインの言葉に小雨は固まってしまう。やはりこの世界にロクな人がいないと改めて実感した。


「コサメ?大丈夫?」


小雨の様子を見たリンが心配した。


「い……行きます!行きます魔物狩り!」


「お!ノリいいね〜!じゃあ早速本部に戻って準備よ!」


そうしてリン、ケイン、小雨の三人は急遽、魔物狩りへ行くことになってしまった。


最後までお読み頂きありがとうございました!

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