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クソみたいな世界と決別を  作者: いっち
第一章 【予言】
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習うより慣れろ

簡単な剣術を学ぶため、リンの指導を受けることになった小雨。広場に誰も居ない時間を狙って、二人は早速本部を出てすぐ目の前に広がるコンクリートの訓練場に足を踏み入れる。


「じゃあこの木剣を持ってー!」


リンは小雨に練習用の木剣を押し付けるように渡した。小雨は戸惑いながらもリンから渡された木剣を受け取る。


「じゃあ構えて!」


「え、もうやるって聞いてなーー」


リンは小雨の目の前に立ったと思えばいきなり一対一の対戦が始まった。小雨が最後に剣を握った時と言えば、中学の体育の時にした剣道ぐらいだ。


「うわああ!無理無理無理無理!」


「ほらほら!ちゃんと受け止めてよ!」


小雨はリンから一方的な攻撃をされるが、昨日のアランとの枕戦争である程度の回避能力がついたのかーー

リンからの攻撃を綺麗に避けていく。


「ひっ!はっ!ふっ!」


「ええっ?!コサメくん思ってたよりなかなかやるね!でも避けてばっかじゃだめだよ!」


「そもそも!いきなりタイマンとか聞いてないんですけど!?」


「まずは自分の実力を知らないと……ね!」


リンは本気を出して小雨に攻撃をしかけた。しかし相手はただの一般人。敵相手ではないため、多少は手加減をする。


「ひいっ!」


リンが思い切り振りかざす木剣を見て小雨は後ずさり、そのままコンクリートの段差に足を引っ掛け尻もちをついてしまう。だがしかし小雨は自分の木剣を横にして受け止めた。

がーー


「ぐえっ!」


小雨の腕力がリンの腕力に負けたーー

小雨の腕が耐えきれずに自分の木剣を離してしまい、そのまま小雨の顔面にぶち当たる。


「ひゃっ!コサメ大丈夫?」


「う……何とか」


大丈夫そうでは無かった。木剣が顔面に直撃した小雨は鼻血を垂らして背後に倒れ、目は回っており、頭上には星が回っている。その姿を見たリンは急いで小雨の所へ駆け寄った。


「ごめんごめん!あたしが強くやりすぎちゃったから」


「お?ここで何やってるんだ?」


二つの足音が広場に響く。二人を見たリンは急いで木剣を置き、二人に向かって敬礼をした。


「お疲れ様です!エンゲル大団長様、ルカ副団長様!」


エンゲルと言う名の男は大剣を背に背負い、赤と黒を基調とした制服を着ている。赤い髪のセンター分け、襟足のある髪型で瞳は鮮やかな紫色だった。隣に居たルカと言う名の男は灰色の髪の毛でハーフアップをしており、瞳は深い緑色で表情筋があまり豊かでは無さそうだった。


「お!リンはいつも通り元気そうで何よりだ」


「当たり前ですよ!」


リンはは鼻を鳴らすように胸に手を当てて自慢げに返事をした。しかし副団長の方はと言うと、倒れて鼻血を出している小雨が気になって仕方がない様子だった。


「リンさん、こんにちはと言いたい所ですが……こちらの倒れている男性は一体何ですか?」


「あ、その子はーー」


「ん……んん」


やっと目の焦点が会った小雨はむくりと起き上がる。鼻血は幸いもう止まっていたーー傷が浅かったのだろう。髪の毛は戦ったせいでボサボサで、括っているところが解けかけていた。髪を括り直していた小雨に影がさす。


「君、鼻血出てるが大丈夫か?」


エンゲルは座り込んでいる小雨に手を差し伸べた。日光がエンゲルの髪に反射して光っているのが小雨の意識をより鮮明にした。


「え、誰」


「良かったコサメ生きてた……」


リンは起き上がった小雨を見て思わず安堵で胸を撫で下ろした。リンは突然現れた二人に困惑する小雨に向かって説明した。


「こっちの赤髪の人、この人はエンゲル・アレクサンダー大団長様で、隣のハーフアップはルカ・レイヒル副団長様だよ!」


「……アレクサンダー」


小雨はアランとレオとの会話を思い出す。あの時確かエンゲルという言葉にアレクサンダーと言う言葉も会話の中に出ていた事を思い出し、小雨は驚きでハッとした。


「アレクサンダーって四大貴族貴族の?!」


「あっはは、そこまで驚くもんか?」


「で、話は戻りますけどこの方は誰ですか?服装を見る限り警備兵ではありませんよね?」


ルカの質問にリンは答えた。


「彼は最近この世界に転移してきて、今後の為にちょっと鍛えてあげようと思ってるんだよ!」


「……異世界から?」


ルカは怪しむようにリンを見る。当たり前だ。異世界から誰かが転移してしまったなど、大体はファンタジーの世界の話だったからだ。


「へぇ、それは気になるな」


エンゲルが興味深そうに小雨を見る。


「いやいや、異世界転移したからって言ってめっちゃ強い訳じゃないし!」


「なるほど、今後のための育成ですか……」


「はっはっは!面白い話もあるものだな!……そういえば君の名前を聞いていなかったな」


エンゲルは小雨を見下ろして目を合わせる。エンゲルのその瞳はどこからか圧があった気がした。小雨はその場から立ち上がって二人に向かって口を開いた。


「俺の名前は小雨、つい最近異世界から転移してしまったんだ!」


「コサメ……?異世界の人間だからか珍しい名前ですね」


「なるほどコサメか……よし、覚えた。これからよろしくな!」


エンゲルは小雨に向けて手を伸ばす。その手は握手を求めていると小雨は気が付き、迷うことなく手を握って握手をした。


「そういえばコサメ!さっきはごめんね!楽しくて強くやりすぎちゃって……」


「大丈夫だぞ!俺はそんなんじゃ死なないからな!」


「コサメ……!」


リンは寛大な心の小雨を見て瞳をうるうるさせた。しかし、エンゲルとルカ前で情けない姿など絶対見せられないため、涙をグッとこらえるーー

そしてすぐさま大団長と副団長の方を向いて言葉を放った。


「大団長はどうしてここへ?」


「あぁ、俺たちは見回りをしていたんだ。たまたま家の前を通りすがるついでに様子を見に来てな。毎朝二人で予め決めているエリアを巡回するんだ。最近ファミリーほ方も活発になってきたし、警備も緩くなってきてしまっているから俺たちが直接見るようにしたんだ」


「エンゲルの言う通りです。俺たちはこれ以上敵からの被害を減らすため、日々魔物退治を積極的に行ったりしているんですが……」


ルカの言葉が途切れる。それを補うようにエンゲルが口を開いた。


「最近、コロップ地方の森に現れる魔物の量が書こと比べて増加していてな……俺たちが何度討伐へ向かっても次の日にはまた別の魔物が現れているんだ」


小雨は二人の話を聞いて固唾を飲んだ。この世界で生きていくうえで魔物との遭遇は避けられないだろう。いざ魔物と戦うことを考えたら気分が悪くなってくる。


「小雨?大丈夫?」


「大丈夫……だけど、魔物って例えばどんなやつなんだ?」


小雨は魔物の詳細が気になり、二人に聞いた。


「魔物は僕たちと同じでそれぞれが違う属性を持っています。なので自分の属性と相性が悪い属性と出会ってしまった時は要注意です」


「そうそう、ルカの言う通りだ。あまりこう言ってしまうのも良くは無いが……我々の警備兵が魔物に殺されたっていう事例もあってな。もし魔物と出会った時は気をつけるんだぞ」


「おう!任せろ!」


さっきの様子とは真逆になった小雨にエンゲル、ルカ、リンの三人は戸惑う。初めて魔物の話をされておまけに死人が出ていると聞いても小雨は動揺する様子を見せない。


「こ、コサメ?なんか軽くない?」


「あっはは!これはおったまげた」


「全く……」


リンに続き二人がそれぞれが違う反応を見せる。そんな中小雨は再び口を開いた。


「俺はこれからここで修行して強くなるんだ!だから魔物なんてへっちゃらだ!俺に歯向かうヤツは全員ぶっ倒す!」


固まった血が鼻や頬に付着させながら言う。さっきまでリンに負けて鼻血を出していた人とは思えない言い様だった。


「お!そりゃあ頼もしいな!」


「さすが異世界から来たまでありますね」


二人の言葉を聞く限り、二人は小雨に期待をしているようだった。エンゲルが建物に吊るしている時計を見て、申し訳なさそうに小雨とリンに向かって言った。


「本当はお二人さんにもう少し付き合ってやりたいところだが、残念なことに今からルカと魔物の討伐に出かけないといけない……リン、小雨にもっと剣術って言うもんを教えてやれ」


「はい!このリンにお任せ下さい!」


リンはエンゲルに敬礼する。横からその姿のリンを見ていた時、リンの頬が少し赤いことに気がついた。


そうしてエンゲルとルカの二人は訓練場を後にした。今回は小雨が先に口を開いた。


「リンってエンゲルのこと好きなのか?」


「ええっ?!」


リンの顔は一気にゆでダコのように赤くなる。


「ま……まぁ……嫌いか嫌いじゃないか聞かれれば嫌いじゃない……し……むしろ好きまで……って!何で分かったの?!」


「見てたら普通に分かったぞ」


小雨はそう言って鼻を鳴らした。小雨の余裕そうな態度にリンがますます困惑していく。


「と、とにかく!早く続きやるよ!」


「え〜?また?」


「習うより慣れろって言うでしょ!」


「まぁ確かに」


小雨は渋々木剣を拾い、二人は再び向き合った。

最後までお読み頂きありがとうございました!

毎日PVの数が増加しつつあり、非常に嬉しいことです!ここまで読んでくれる皆様に感謝してもしきれません!毎日投稿ですのでこれからもよろしくお願いいたします!

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