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クソみたいな世界と決別を  作者: いっち
第一章 【予言】
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この世界で生きていくために

クレアが死んでから数日が経過した。今まで住んでいた宿はクレアとアランの戦いで崩壊し、そのまま取り壊されることになった。住む場所が無くなった小雨はというとーー


「あっはは〜!死ね〜!」


「うわぁっ!ほんと容赦ねぇなアラン!」


しばらくアランの家に泊めてもらう事になった小雨。数日一緒に居ると、二人の仲はより深まり、今日は朝っぱらからアランは小雨を全力で追いかけて枕で小雨を攻撃した。その姿はとても二十一歳とは思えない。


「あははっ!俺から逃げるなんて酷いじゃないか〜!相棒!」


「いやいやいやいやそんな怖い顔で追いかけられても!」


廊下のガラス張りの窓から朝日が入ってくる。そんな中、二人はローレンス家全体を使い、枕を持って追いかけっこをしていた。キッチン、ホール、アランの部屋など、様々なところを走り回った。小雨も時々反撃するが、全て躱されてしまう。


「なんで当たんないんだよ!」


「こんなんで当たってたら俺この家居れないし」


ニヤニヤしながらアランは言った。

武器は枕、もちろん魔法の使用は禁止。すれ違う召使い達が小雨達の様子を見る度に苦笑いした。


「おーおー、楽しそうだね〜」


召使から状況を聞いたレオがアランの部屋の前の廊下で戦っていた小雨とアランの前に現れる。右手を腰に手を当てて興味とと困惑でいっぱいの顔で言う。


「お客が人の家で暴れるなんて礼儀がなってないぞ…まぁアランの友達っていう事だから許してあげるけど……で、何してたんだ?」


「コサメにある程度の回避能力を持たせておこうと思って特訓中だ!」


「そうそう!優しいアランが特訓してあげるって言ったから俺はありがた〜く特訓して貰ってるんだ!」


「え〜?もっと他にやり方があるだろ」


レオは額に手を当てて呆れたように二人を見る。しかし友達と仲良くしている弟の姿を見て嬉しく思ったのか、堅かった口がだんだん綻ぶ。


「特訓って言っても暴れるのはダメだ」


「「えー」」


アランと小雨の二人がハモる。アランが口をとんがらせていかにも不安がありますよと言う顔をした。そんなアランを見たレオは思わず許してしまいそうになる。


「……はぁ、ったく。アラン、お前はもう二十一になったんだからもう少し大人っぽい振る舞いはしないのか?」


「え、こいつ二十一だったのか?」


「……逆に何歳だと思ってたんだ?」


レオの言葉に小雨は口を抑えて瞳を揺らして驚愕する。小雨自身、今までアランの事を同い年ぐらいだと思っていた。それと同時にアランが小雨を呆れたように見た。


「同い年くらいだと思ってた」


「じゃあ逆に聞くがお前は何歳なんだ?」


「……十八」


「……え?」


アランは一瞬固まった。アラン自身も小雨と同い年くらいだと思っていたが、まさか年下だとは思いもしなかった。そんな二人を見たレオは手を叩いて話題を切り替えた。


「さっき召使いにパンケーキを頼んでおいたんだが、一緒に食べるか?」


「「食べる!」」


また二人はハモった。ここまで来れば前世は双子だったかもしれない。キラキラ目を輝かせた二人にニコッと笑ってからレオはこう言う。


「じゃあ俺は先にリビングに行って準備してるから、あと十分後くらいにリビングに来てくれ」


そう言って先にリビングの方向へ去ってしまった。その場に取り残されたアランと小雨はしばらくお互いを見つめ合ってから二人はニヤッとしてから再び枕を持って追いかけっこをした。二人の間に年齢の壁なんてないのだろう。


十分後、なかなかリビングに来ないアランと小雨心配して探しに行くことにした。廊下を歩いていると二人の声が聞こえた。


「ぎゃあああ!」


「ずっと逃げてちゃ面白くないぞ!相棒!」


アランの本気の攻撃に小雨はビビるが運良くその攻撃を避けていく。それを見つけたレオは目を伏せ、ため息を吐いてから目を開ける。


「……レイト」


レオの特異魔法が発動した。レオの周りの時空が遅くなり、その間に小雨とアランのみを回収し、枕は放置した。その後、リビングの椅子に座らせ能力を解除する。


「「……え?」」


本日三度目のハモリ。二人はポカンとした顔をするのを気にせずにレオは二人の向かい側に座って険しい顔をしている。三人の目の前にはメープルシロップがたっぷりかけられ、その上にバターが乗せられたパンケーキが置かれていた。


「あ、やっべ」


「……あ」


二人はレオの様子から何かを察したのか、お互い冷や汗をかきながらレオから目を逸らした。レオがゆっくりと息を吸ってから言う。


「さっき俺が言った事、覚えてるよな?」


「「……」」


二人は黙った。レオのこんなにも低い声を聞くのは初めてだったからだ。アランでさえ聞いた事のない声だった。レオが怒っている原因は、さっきレオが言った事を無視して再び枕で戦闘を始めたからだ。心当たりはめちゃくちゃある。


「次はない……よし、パンケーキ食べよっか!」


レオの変貌っぷりに二人はしばらく怯えていたが、何とか場を明るくしようと二人は口を開く。


「あ……ははっ、そうだね。パンケーキ食べようか…相棒!」


「はは……あははははっ……そうだね、わーい楽しみー」


二人の会話は棒読み過ぎて違和感があった。しかしレオは気にせずにルンルンでパンケーキを頬張る。続いてアランと小雨もパンケーキを口に運んだ。


「……うっま」


小雨は思わず思ったことが口に出てしまう。口に運んだ瞬間シロップとバターの甘さがパンケーキとちょうどいいバランスがとれている。

今までパンケーキを何度か作って食べたことはあるが、ここまで美味しいのは食べたことがなかった。


「ははっ、相棒が気に入ってくれて良かった、ここの召使いが作るパンケーキは絶品なんだ!」


「アランの言う通り、ここの召使いが作るパンケーキはこの街のどこのお店と比べても勝てないよ」


三人はしばらくパンケーキを夢中で頬張った。一番最初に食べ終わったのはレオだった。食べ終わったレオは、頬ずえをついてまだ食べ終わっていない二人を見守った。


しばらく二人を見ていると何か思いついたように小雨に向かって言う。


「コサメ、強くならアレクサンダーの所行ったらどうだ?」


「……あれくさんだー?」


「アレクサンダー家は四大貴族のうちの一つで、剣士の家系って言われてるんだ」


アレクサンダー家。この世界に来て聞いた事も会ったことの名前だった。剣士の家系と聞いてまず最初に思うのは怖いマッチョの人が大剣をブンブン振り回してることだ。


「えー……エンゲルに会わせる気か?」


「嫌なのか?」


「だって……」


アランはレオの返答を聞いた後、顔をしかめた。小雨をエンゲルの所へ連れて行くのが嫌なのかそれともーー


「……エンゲルのところに連れて行ってコサメがムキムキになって帰ってきたらどうするのさ」


「……え?」


小雨は驚く。連れていくのが嫌とか、せっかく出来た友達と離れたくないとかなら分かるがまさかムキムキになって帰ってくる心配をしてるとは思いましなかった。


「ぷっ……あっははは!アランが嫌なのはそこか」


「だって嫌じゃね?コサメがムキムキになって帰ってくるとか耐えられないんだ」


「俺、アレクサンダー家のところに行ったらそこまで厳しい訓練させられるのか?!」


レオがアランの言葉を聞いて吹き出すように笑った。アランはつられて笑うこともなく、ただしかめた顔を維持している。そんな中、小雨は一人でアレクサンダー家に対する想像を膨らませていたーー


「安心しろ、アラン。実際に訓練をして貰うのはエンゲルじゃなくてリンに頼めばいいし、教えて貰うのは簡単な戦い方だけだ」


「あ、確かに」


アランは右手で指を鳴らした後レオを指差す。納得するのが異常に早い。


「じゃあ早速明日行ってみるか?アレクサンダー家」


小雨は悩んだ。しかし、今までの戦闘を思い出す限りいつもアランに頼ってばっかだった。一度アランを見るがアランはただ目が合った小雨に首を傾げた。


「行くだけ行ってみる」


「え、行くのか?」


アランは驚いたように小雨を見た。まさか本当に行くとは思っていなかったのだろう。


「いいじゃないか、この世界で生きていくためにはある程度の戦闘能力も必要だろ?いきなり魔物が現れたりしたら小雨はどうもできないじゃん?」


「それは確かにそうだけどさ」


「俺頑張るからさ、アランはのんびり待ってろよ」


小雨の言葉にアランの曇っていた表情が晴れた。今回ばかりは小雨を信じようと思った。


「……わかった、気をつけるんだぞ」


二人はハイタッチをして約束を交わした。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

次の日


アレクサンダー家と書かれた札の横にある訓練場に小雨はやって来た。場所は事前にアランから地図を貰っていたため、簡単にたどり着くことができた。


開いている門を入ったすぐそこには広い一面コンクリートの地面を囲むように建物がある。高さはマンションの四階くらい。


しかし人の土地に勝手に足を踏み入れるほど非常識なことを小雨はしない。

ただ門から中を覗くと他の人たちもそれぞれ特訓をしているのが見えた。一体一や二対一で手合わせする人。剣の素振りをする人が見える。


そんな中、一人の女性の警備兵が門の前に立っている小雨に気がつき、近づいて来る。


「あら?こんな朝からどうしたの?」


彼女は身長は小雨より高く、オレンジ髪で高い位置でポニーテールをし、その目は鮮やかな青色。服は黒と赤を基調とした動きやすい服装だった。他の人達も同じ服を着ているのが見える……この服が警備兵の制服なのだろうか。


「俺、基本的な戦闘能力が欲しくてここに来ました!」


「すごく元気な子ね?あたしの名前はリン。国家警備兵二番隊隊長をしているの!あなたの名前は?」


「小雨って言います!」


「コサメくん、珍しい名前ね!気に入ったよ。簡単な戦闘能力が欲しいならあたしが色々教えてあげるからついてきてちょうだい」


リンと名乗る女性は小雨の手を引っ張って訓練場の中に連れて行ってくれた。

昨日レオが言っていたリンと言う人はこの人の事なのだろう。見た目は凄く優しそうで小雨は安堵した。


しかし小雨はこれから待ち受けている試練をまだ知らない。

最後までお読み頂きありがとうございます!

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