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安全第一異世界生活  作者: 笑田
愚王の崩壊
96/217

95話 皆さま、しばし美しきバラの数々をご覧ください 1

会場の皆から、壁に移った美しい女性に感嘆する声が漏れる。


「我、妻だ。」


静かな低い声でガルーダ殿がそう言うと、「美しい」「儚げだ」「可憐だ」と言った声が上がってきた。僕もそう思う。彼の夫人はとても儚げな人だった。その彼女が愛おしそうに手をつなぎ、微笑みを向けているのが映像に映っている。


「子供が映像石を付けているのね。」

「なるほど。」

「市井の皆も良い笑顔だ。」

「王都はやはり活気がありますなぁ」


次々にいろいろな声が上がってくる。見てる会場中の王侯貴族全員が夫人の美しい姿と街の様子にくぎ付けになっていた。少しすると彼女たちの前に男が出てきては、逃げていくを2回繰り返したところで笑いが起きた。


「美しい奥方を持つとこのような事が起こるのですね」そんな言葉と共にクスクスと聞こえてくる。そんな和やかな映像が、一台の馬車が止まった事により、一気に市井の民たちの顔つきが変わった。民の視線の先にはセフェリノ第二王子。王子が登場したからと言って誰も頭を下げず、睨んでいる。

その異様さに会場がどよめき出した、そして白狼殿の視線が兄をとらえて目を細める。兄は息をのんだ後、顔を引きつらせながらブンブンと首を横に振る。白狼殿が、画面に目線を向けると、夫人がにこやかに第二王子を追い返してるさまが映し出され、王も会場に居る皆も安堵の息を吐く。


そして次の瞬間無音だった映像とは全く異なる大きな男の声が会場中に響き渡った。


『ハァハァ!良い!良いぞ!あの二人のなんと可憐で、なんと美しいことか!あの宝石のような瞳に焼き付いて、その奥底まで覗き込みたい!ああ、あの瞳から流れ落ちる涙を、舌で掬い取って味わいたい!彼女たちのすべてを剥き出しにして、この腕の中に抱きしめたい!欲しい……!あの二人が、たまらなく欲しいのだ!』


その浅ましい欲望の塊の言葉を聞いた瞬間、視線がセフェリノ兄上に集まった。顔をしかめる者、侮蔑・嫌悪の視線、ご婦人方の口元には扇子が咲き、令嬢たちからは蔑みの視線が突き刺さる。兄上は顔面蒼白になりながら映像を映し出した壁を見ていた。音声と映像は切り離されているみたいで、市井の様子を変わらず映し出している。夫人が小さな手を引きカフェを指刺しそちらに座る様子が映っている。席についてから馬車が走り去る姿も映っている。ガタッと立ち上がり王妃が叫ぶ


「なんなんです、その音声は!側室の子の分際で、この私の愛しい子を陥れようなどと、一体何を企んでいるのかしら!」


そう激昂した王妃を見て、陛下が王妃を睨み、僕はコテンと首を傾げた。


「僕が用意したのは映像ですよ?市井の映像をご覧くださいと申し上げました。声は僕ではございませんよ。ただ、」


僕が言いよどむと、憤怒の形相の王妃は扇子を突き付け叫ぶ


「言いたいことがあるのなら、この場で全て吐き出すがいいわ!ただし、その言葉一つ一つが、そなたの命取りになる覚悟で語るのよ!」


「さようでございますか。王妃様からお言葉頂きましたので伝えさせていただきます。」


僕がそう言うと、映っていた映像が切り替わり暗い路地に放り込まれた。夫人と子供の手足を映したかと思うと、その前に大きな甲冑の男が現れ、抵抗する二人を馬車に乗せる姿が映る。暗転して次に映ったのは、どこかのベットの上。やはり夫人が映り、隣には子供の手足が映る。手には拘束用の鎖が映る。夫人も鎖に片手を拘束されているのか動きが制限されているようで、それでも子供を守るように抱きしめている映像が映った、次の瞬間だった。その映像に、興奮して顔を真っ赤にした、にやけ顔のセフェリノ兄上の顔が映り、子供の足を掴み引っ張った。その瞬間またしても壁から耳をつんざく子供の悲鳴が聞こえた。


『きゃぁ!やめて!!やめてください!!いやぁーー!』


会場中の人の視線が壁の映像に釘付けになっている。そして抵抗する子供に蹴られたセフェリノ兄上は二人に最低な言葉を投げかけた


『おい!この娘の鎖を足せ!俺様にこんなことをして許されると思うなよ!お前が抵抗した分、お前の横で母親を犯してやる!抵抗したことを悔いる様が目に浮かぶ!』


瞬間会場の空気が変わった。重く重く押しつぶされそうな空気に会場の中でご年配の夫人や令嬢など抵抗できない者が次々に膝をついていく。

王族席も一緒だ。圧が凄い息がしにくい…

陛下が胸を押さえながら、騎士に指示する!


「セフェリノを取り押さえろ!」


それはこの重い重い静かな空間に広がる。急ぎ騎士二人がやってきて取り押さえられた兄上は、ハクハクと言葉が出ずに口を開閉する。目の前には白狼がすごい圧で兄上を睨み付けている。兄上はS級冒険者の圧に耐えきれず泡を吹いて気を失った。兄上が気を失ったことにより、ガルーダ殿の圧が霧散し王妃に向いた。後ろで陛下が


「第二王子の宮に行き映像の二人を今すぐ助け出せ!!」


その指示を出してすぐ睨み合う王妃を叱責した!


「王妃今すぐ謝罪せよ!それが出来ぬならこの場でおまえを幽閉するぞ!」


陛下の言葉に王妃は目を剥き絶句した。

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