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安全第一異世界生活  作者: 笑田
愚王の崩壊

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96話 皆さま、しばし美しきバラの数々をご覧ください 2

第一王子アルドリックは、今この状況に困惑していた。

いつも我らの顔色ばかり見て、おどおどしていた出来損ないが、城から数日出ただけで何と態度の変わる事か、一体城下で何があったのか?

奴が私を置いて先に、陛下と会話し始めたことも腹立たしいのに、なぜセフェリノができ損ないにやり込められているのか…そしてなぜ陛下が母を幽閉するなどと発言するのか、意味が判らない。悪夢か?


相手はS級と言っても、たかだか平民だろ?平民の女を王族が召しあげただけに過ぎないのに何を言っているんだ?冒険者とは蛮族であろう。であれば平民以下ではないか。大体この目の前の男、人にも成れない獣の獣人風情ではないか。

先ほどもこの醜い獣人が、この国の頂点たる陛下に頭を下げぬことを、寛容に受け止めただけでも、希に見る恩赦であるはずなのに、なぜ弟や母が責められているのだ?


「王妃!いい加減にせぬか」


陛下がまた母上を叱責するのを私は止めに入ろうとした。


「陛下お言葉ですが!…」

「アルドリック兄上それ以上言葉を発すると後悔いたしますよ」


私が発言をしようとした言葉を遮り、出来損ないが言葉をかぶせた。その事に私はかっとなり、いつもは陛下の前で決して言わない言葉を使った。


「この出来損ないが!側妃腹のお前のような下賤の血の入った弟とも呼べない者が、第一王子である私の発言の邪魔をするなど無礼であろう!」


私はふうふうと息を荒げまくし立て、奴を睨みつけた。奴の後ろの陛下の顔を見て血の気が引いた!や、ヤバい!父上の顔に怒りが沸き上がっているのが分かる。対応を誤れば下手をすると後継に選ばれなくなるかもしれない!最善はなんだ!どう対応すれば!私が考えを巡らしている中、静かな声で出来損ないは陛下に話し始めた


「陛下、今のアルドリック兄上の言葉聞かれましたか?」


「しかと聞いた。」


「兄は選民志向がとても強く、自分の血は尊きものと、辺境伯家の僕の母の出自を軽んじられてきました。そして、この城で働くもの、民たちの事も自分よりも愚かで踏みつけても良いものとして踏みつけてきたのです。この城で働く者達の声を聴いてくださいますか陛下?」


私は眉間に皺をよせ、出来損ないを睨みつけた。すると壁にまた映像が映った。そして今度は映像と音声がきちんとあっている、音声付きの映像記席で撮ったらしいことが分かる。誰かが廊下を歩いている。映像の人物が歩くと、誰も頭を下げない…いや今メイドが頭を下げたな。


「会場の皆々様、最初に皆さまに周知の事実として、映像石の特徴だけお伝えいたします」


出来損ないは、大げさに映像石を持ちあげ映像が出ている光の前にそれをかざした。そうすると辺りにその石の色、ルビーの赤い色が光を覆った。


「映像石は元はただの魔石です。魔石にごくまれに石に記録を封じ込める魔法陣を刻むことができるものがあります。魔法陣の記入を、この小さい石にセットすることが出来る者も国に数人しかおりません。そして石の映像は、一部分を切り取るなどの手を加えることができないことをご了承ください。そこを踏まえまして、ご観覧ください」


出来損ないがそう言って、宝石を光から外すと靴音を鳴らすその映像に、会場の皆々様は目をやった。


コンコンコンドアを叩く音、扉の向こうから大きな音がする。ドアを叩いた人物は返事も待たずにドアを開けた。


『殿下何をしているのですか!』


映像には、小柄な人物が液体を頭から垂らしながら散らかった書類の中立ち尽くしていた。その横の応接セットに座る人物は私だ!映像の私は入ってきた人物を見やると、大きなため息を吐き


『私は、昨日の昼にお前に言っただろう。西の商人の街「アルカイナ」の10年分の予算の見直しと不審な金の流れが無いか確認報告をしろと。なぜ今の今までかかった?もう伝えてから一晩明けてしまっただろう、お前は文官だろう。職務を全うするべきだ』


『殿下?まだ朝ですよ?その者は一睡も取らずに一晩で調べ持ってきたと思います!それなのに何をしているんですか!』


『遅すぎるから叱責しているだけだ。やはり下級貴族では私のいう事を遂行するのに荷が重かったのか?なぁサウスト?』


サウストは大きなため息を吐き、私の言葉に返事をしないまま。転がったティーカップを拾い上げ、部屋にあったベルを鳴らしメイドを呼んだ。そして濡れ落ちた書類を一枚、一枚拾い上げすべてを拾い終わると。立ち尽くす文官に


『殿下が無茶を頼んで悪かった、やけどはしていないか?何かあったら騎士団の方の救護室のシラスに言って。やけどの跡も残さず治してくれるから。もう行っていいよ。報告は僕がしておくから』


そうサウストに言われた文官は、サウストの顔を見ると泣きそうな顔をしながら唇をかみしめ一礼をして部屋を出て言った。私は文官があのような顔をしていたのかを初めて知った…で?あんな顔をしている意味が解らないのだが?サウストは拾った書類にサッサっと凄いスピードで目を通して、一言


『ありません。』


『そうか』


短い会話で先ほどの騒動が片付いた事に会場がざわついた。なぜだ?

そこにメイドが入ってきて、私の前に新しいお茶の支度をして後ろに控えようとしたのをサウストが断り退出させた。サウストはこちらを振り返り


『またなぜアルカイナの事を調べろなどと言ったのです?何か不穏な情報でも?』


『いや、定期的に各街や、領地を調べ、不正が無いよう管理をしているだけだが?』


サウストは眉間に皺をよせ、大きくため息を吐く。映像を見ながら、サウストがいつも私に対する態度を客観的に見るとずいぶん不敬であるな。侯爵家令息と目をつぶり過ぎたか?少し態度を改めるよう叱責するべきか…


『殿下そういう事は、文官複数人がチームを組み調べるのです。決して1人の文官に対して課して良い仕事ではございません。あと人にお茶をかけるのもいい加減おやめください!臣下の忠誠の揺らぎに関わると何度も申し上げているでしょう!』


『サウスト煩いぞ。結果は聞けた。お前ももう下がれ』


またも大きなため息を漏らしたサウストは『失礼します』と部屋を後にした。

映像はサウストと同時に部屋の外に変わり、最初は歩いていたのだが、その歩調は速く、最後走りどこかに向かっている。ハァハァと息を切らせたサウストは扉の前にたどり着くと、ノックをしながら扉を開けた。ノックの意味はないだろう?礼儀がないな、こいつは……


『シラスさん!女性の文官の方が来ませんでしたか!』


『静かにしなさいブルーノ。今手当てが終わったところだ。まったく殿下にも困ったものだ。男女関係なく熱いお茶をかけるなど、常識のかけらもない』


な…なんだと。こいつ今私を馬鹿にした?


『シラスさん、殿下の常識の無さは幼少期からですよ。ホントあの方が、次の王に一番近いなど、この国はもう終わりでしょうね。』


!私は側近の言葉に絶句した。


『ブルーノ、君にまで見限られたら彼には誰も居なくなるぞ。』


『もうとっくに見限ってます。兄が殿下のせいでノイローゼになった時点で、あの人に敬意なんて欠片もない。今は女性に傷つける事さえなければさっさとこの城出てますよ。アリセ文官、殿下が本当に申し訳なかった。』


アリセ文官と呼ばれた、先ほどの文官は首を横に振りながら


『サウスト様が悪いわけではありません。先ほどは助けていただきありがとうございました。

でも……殿下は10年分の商業都市の収支を、遅いと言われましたが何時間で確認できるのでしょうか。私たち先輩含めて10人で一晩かかった作業です。しかも年間のまとめ資料があったからこそ出来たのですが…』


『1ヵ月かかっても出来やしないよ。だって殿下、自分では何もしてないもの。ハハハハ』


私は唯一の側近の本音に唖然とした。そして、周りに視線を巡らすと私への冷ややかな視線が突き刺さる。

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