83話 暗躍する者 お爺ちゃんと聖女様編
執事に渡された封筒にはストーティオン伯爵家の紋章が押されている
一度お会いして相談したい……とはなんだ?
直接的に伯爵家と交流等無いが、相談時の同席者の中に気になる名前がある。
「カナメ」この名は確か王が小癪な手段で功績を分取ろうとしている少女じゃないか?
彼女の名が王に伝わったのはこちらの落ち度だったな…しかしこの少女と伯爵の関係が不明瞭、いや、たしかこの伯爵家はお家騒動が最近あったはずだ…まさかそれにもこの少女が関わっているとか…
考えてもしょうがないな。一度会ってみるか、いまは仕事が忙しいな…
だが早い方がいい気がする。
「すぐに返事を出す。使者の方には待って貰ってくれ」
執事に伝え、すぐに返事をしたためる。
明日午後からお会いいたしましょうと。
***
翌日王城に出勤してすぐに宮殿のメイドに呼び止められた。
「ニコライ様お助けください、お願いします!!第三王子殿下が殿下が!」
メイドの必死さに足を止め話を聞いて血の気が引いた。どういう事だ!
宮殿の方で食堂に来ず、ようやくお部屋を訪ねメイドの聞き込みでお見掛けしなくなって2日もかかってからの報告などおかしい!大体なぜ誰も王子の護衛に付いてないんだ!くそぉ!
扉をたたく力が強くなってゴンゴンっと廊下に響く中すぐに扉に声掛けをする
「ニコライです。至急お耳に入れたいことが」
「入れ」
「宰相閣下大変です!」バン!と言わんばかりに扉を開け入った俺に宰相は堅眉を上げた。
「ニコライもう少し静かにしなさい。お客様だ」
そこには応接室にゆったり腰掛け、ゆったりお茶を飲んでいる聖女様。
カップを置き、入ってきた俺を見て聖女様はニッコリ笑う。
「元気な方ね。フフ」
「失礼しました。宰相閣下の部下 ニコライ・ミヤノマエでございます。以後お見知りおきを」
俺が礼をすると「あなたがニコライ様ね」その言葉に俺は顔を上げた。
「宰相閣下、先ほど申し上げた通り、少々この者をお借りいたします。」
「構いませんが、宰相室の大事な部下「宰相?エドモンドとお約束したでしょう?素直にね?」」
宰相が話してる最中に聖女様が言葉をかぶせて言ってきた。ご子息がどうした?俺は困惑気に二人を見ていると宰相がこちらを向き直り少し照れたように
「私の大事な部下だ。無事返してくださいよ」
え!宰相がデレタ!何事?
「フフフあらいやだ、私そんなに暴力的な性格じゃないと思うのだけれど?」
聖女様はニッコリ笑い俺に向きあい
「あなたに紹介したい人がおります。お時間下さいな」
紹介?俺に?聖女様が紹介?誰を????俺の頭の上にははてなが飛ぶ飛びまくるが、午後からは伯爵との…予定が……
「聖女様からこのような申し出ありがたいことですが、申し訳ありません、この後約束がありましてそれが終わった後ではいきませんでしょうか?」
「それは私の誘いよりも優先する事ですか?」
「申し訳ございません、男が一度した約束。何も言わず違えることは相手にも自分にも裏切りになるかと、一言相手に誠意の言葉を伝えたく」
「フフ、まっすぐな方ね。気に入ったわ。ではお約束の方ともども来てください。」
「え?あの……」
「お相手ストーティオン伯爵様でしょう?」
聖女様は悪戯が成功したように嬉しそうに笑う。聖女様の笑顔に見惚れていたら閣下が咳払いで空気を変えてくれたが、その拍子に忘れていたことを思い出す。おれはカッと目を見開いて、閣下に振り向き
「第三王子が行方不明です!」
閣下は目をすがめ……「今ごろ報告が来たのか」とみけんに手を当て大きなため息を吐いた。
「王には私から報告を入れる。こちらは気にせず聖女様と話しておいで」
俺は聖女様が居るにもかかわらず、なんてことを発してしまったんだ、血の気が引いた。聖女様に視線を戻すと先ほどと変わらぬ笑顔で
「さぁ一緒に行きましょう」
***
貴族が政務についての話し合いなどをする部屋が王城にはいくつかある。その一室の扉をメイドが叩く
コンコンコン
「ストーティオン伯爵様が来られました。」
「入ってもらって」
そう聞き覚えのある女性の声で返事をもらい室内に入るとそこにはお約束をしたニコライ殿と聖女様が居た。
私は入口から数歩入りお二人に頭を下げた
「ミヤノマエ様この度は急なお話し合いに応じてくださりありがとうございます。お話しするのは初めてになります、この歳で再度伯爵に戻りましたサリウス・ストーティオンと申します。良しなにお願いします。
聖女様先日は我が家の問題に巻き込み申し訳ありませんでした。此度はご同席でよろしいでしょうか?」
「あら、私の友達の事だもの、もちろん同席させていただくわ。ニコライ様の説得も任せて」
聖女様は楽しそうに笑いながらウィンクをする。聖女様貴族っぽいって思っていたが結構印象違う可愛い方だな…。私は、少し力の入っていた肩を緩める様に息を吐きニコライ殿に向き直った。
「貴殿に支えていただきたいお方がおります。一度お話をしていただけませんでしょうか、この国の為に」
「国の為?支えるですか?………」ニコライ殿は私と聖女様を見て、そして目を閉じて、思案し始めて少ししてバッと顔を上げたかと思うと、冷や汗を流し始めた
「まって、いやでも…もしかして奇跡の少女カナメから話が来てるとか言いませんよね……」
上目遣いに私たちを見てくるニコライ殿。流石今の情勢や王城での出来事をよく知っている人だ。私と聖女様はニコライ殿に向かってコクリと頷いた。




