66話 オレンジ色の気持ちと宰相の心の日記
オレンジ色の塊は庭でぽかぽかと日向ぼっこをしていた
甘いにおいを漂わせるオレンジ色は先ほどから数匹の妖精に囲まれている
『甘い』『花の蜜の様な匂い』『かぐわしぃ』
オレンジ色はそんな声を聴きながら陽の光に身体が解ける気持ちでいた。そこに「ガサ」っと音がしたかと思ったら、空に広がる青い色のぽよーんっとした球が現れてオレンジ色はハッとした。この青は自分を救ってくれる存在だと。
オレンジ色は青いたまに向かって正座して自分を指さし青い球を指した
青い球はぽよーんっと揺れて横に一回転がった。オレンジ色はもう一度自分を指して青い球を指した。青い球はじっとしてそして縦に数回頷いたかと思うとオレンジ色を取り込んだ。オレンジ色は取り込まれた瞬間あぁこれで救われるのだと思い意識を奥に奥に沈み込ませた。
心地良い水が降る。ありもしない葉の感触がするオレンジ色は意識が浮上するのを感じて不思議に思った。「ガサ」音がした。浮上した意識でようやく視認できた目の前には、あの青い球と、黒髪の小さな人間
「うはは~~♪うは~♫」
「良かったね。あの状態から戻せるとは思わなかったけど、良かった。トーさんの肥料とポーションと癒泉の水で何とかなった」
青い球は小さい人間の横をポンポン飛んでは「うは~」っと言っている。言葉は理解できない。でも水も心地いいし、太陽の光も気持ちいい。人間の声も気持ちいい。葉っぱがより一層広がる心地。気持ちいい。
風が吹く。葉が揺れる音…揺れた、音が鳴った。嬉しい嬉しい
『”人間お食べ。きっと自分は甘いはず。栄養満点だ。さあ収穫して食べて!”
あのオレンジ色そう言ってるよ』
『『『言ってる~』』』
「へぇ……食べられたいんだ…野菜だから?不思議な子だな~」
私が感心していると、妖精さんが
『食べる?伝えようか?』
「もう少し大きくなったらって伝えて」
私は立ち上がって伸びをした。あのクリーチャーをウハハが捕まえてきた時はびっくりしたけど、再生して良かった。グラッセに一度した子だから、甘いニンジンさんになってくれたら、良いなぁ~。
温かいこの空間はとっても居心地がいい。外は雪が降っているみたいだけど。このスノードームみたいな空間の外側は雪がびっしり積もっては落ちてを繰り返している。
雪が止むと狼さんとトーさんが雪の片付けもしてる。師弟関係仲良いなぁ~。
◆◇◆
オーラシアン王国 王都王城にて
「なぜあの馬がまだ見つからないんだ!当初の数倍の人数は出しているはずだ!この国の騎士は馬一頭も見つけ出せない無能ばかりか!」
男は大声を上げ肩で息を切らせて椅子に座り込んだ。座り込んだのちも、報告に来た者を睨んでいる
「隣国のあのバカ王に見せつけてやろうと準備していたのに、逃げ出すなど許さん!!許さんぞ!!」
玉座でふんぞり返り怒鳴り散らすこの男こそがこのオーラシアン国の王。
ロナウジール・ド・オーラシアン
もう皆お気づきであろう、愚王なのだ。そして、今王家で唯一常識があり優秀なのは、第三王子だけだが、彼は側妃の子。しかも側妃は辺境伯の出。後ろ盾が弱い上、優秀さを疎んじられ、常に兄王子から刺客を放たれている状態だ。まだ第一王子が立太子していないだけマシである。問題だらけのこの国を必死に動かしているのは宰相の私。いつも胃痛と、頭痛に悩まされながら居る。
「一度目撃情報は出たのです。ですがその後ぱたりと情報が途切れてしまい、捜索の者には今一度範囲を広げ至急探すように伝えます」
「それと、教会と孤児院に関わったとされる少女の行方はどうなった?」
「冒険者の養父と共に旅に出て、まだ辺境には帰ってきては居りませんが、その家と土地は養父名義の物ですし、ギルドにも帰ってくる旨伝えて出かけておりますのでお待ちいただければ」
「また時間をかけるのか、どいつもこいつも無能めが」
王は
「さっさとどちらも対処せよ」
そういって大きな足音をならしながらその場を去っていく王。威厳の欠片もない...姿が見えなくなってようやく息を吐いた。
宰相は頭がいたい。
もうあの王の尻拭いをして来て何年になる。聖女さまの時も無理なことばかり言うので王都の結界が消えたことがある。あの王にしては対処の早いことですぐに対応したが、いつもトラブルばかりだ。
聖女様に対して王家からの申し込みは一切禁止と聖国から通達が出るほどだ。
王家と違い聖女は人気者だ。召喚されすぐに王城から逃げ出し、各地を転々としながら浄化と結界で町や村を救い、聖国で力を学び結界を強固に張り、人々を守っている。なんとも献身的で慈悲深い人だ。
しかも、秘密裏に人を癒しているという。それは貧民街の孤児から公爵家の子息まで、幅広い。私も数年前に胃に穴が開き血を吐いた後に助けられたのだ。
最近も聖女が貴族の不正を暴き、さらに国民からの支持を得ている
聖女様もういっそこの国の王様になって欲しいって切実に思う。
宰相アルドール・ケリィーズィット 心の日記である




