53話 悪徳伯爵を懲らしめよう! 完結編
お兄ちゃんは本来王立学園に通わないといけない年齢になっている。10歳から6年間。どうやら病気の為通えないと勝手に申請が出されていたそうだ。
今遅れた分の勉強を家庭教師に付いてもらい頑張って勉強している。
勉強の合間にターちゃんのお世話をするのがお兄ちゃんの今の楽しみになっている。
あと数週間で王都の学園に入学。寮住まいとなりしばらくはあえなくなるが、ターちゃんはそっとお兄ちゃんを見守ると鼻息荒く気合いを入れていた。頼もしい。
ストーティオン伯爵家の領地には敷地内に馬の運動になる程度の広さのグラウンドがあり、近くに森もあるし、草原もある。休みには寮から戻って早掛けしようと、お兄ちゃんがターちゃんにブラッシングをしながら語っているのを聞いて、嬉しくもあり、寂しくもある。
私たちはそろそろここを出る。
トーさんはギルランドが収容されている牢に日参しては悪夢を見せているそうで、そのおかげで、3日目にはびっくりするくらいすらすら供述をはじめたらしい。ギルランドが眠れなくなって今晩で1週間。今夜が最後らしい。
当主死亡の為前伯爵様が、爵位を戻す事で収まった。もちろん表向きはだ。
ギルランドは死罪は決定してる。奴がやった領地への介入で、悪政を敷い負担をかけていたので領地の運営に力を入れなくてはいけない。伯爵様ご夫婦がお兄ちゃんが成人して嫁をもらうまで頑張ってくれるそうだ。
騒動の原因のギルランドの供述は、あまりにも自分勝手で、身勝手な意味が解らないものだった。
ギルランドは、学園卒業後、資産家の未亡人の子爵家に婿に入って子爵家を牛耳ったそうだ。数年で奥様は病死。
今思えば本当に病死だったのかと考えてしまう。
子供のいなかった子爵家はギルランドが相続することになった。ただ、奥様がなくなったことで事業はすべてうまくいかず、なおかつ領民は高額な税の徴収に暴動を起こし、ギルランドは、すべてを捨て手持ちのお金だけ持って逃げ出したそうだ。
すべてを放棄し平民になったギルランドは実家にも戻れず、婿に入っている双子の弟に金の無心をはじめた。弟は何度かお金を渡し、仕事を斡旋していたそうだ。
弟は、学生時代は荒れてはいたが、妻の事を愛していた。
いつも寄り添っていた。ただ、子供にはあまり関心のない夫の事を夫人はずっと気にかけていたんだとか。
ギルランドは幸せそうな弟を殺して入れ替わったら弟のすべてが、伯爵家が手に入ると思い、家督を早く引き継げるように勝手に動き。奥さんが引き継いだとたんすぐに行動を起こし、弟を殺した。
そして家に入り込んだが奥さんにすぐに気づかれ、奥さんを監禁した。
お兄ちゃんはもともとの接点が無かったから、正体には気づかず、放置された。
奥さんの部屋に頻繁に来る馬も自分の正体に気づいていると気づき、捕まえて珍しい動物として王家に売った。
思ったようにうまくいかず、妻が死んだから今度は自分の子供を産む女を娶り、子供が生まれたら、ミハイルを殺して、義両親を始末すればまたこの伯爵家は自分のものだと疑ってなかったらしい。
幸い今の奥さんは出産で男爵家の実家に戻っていたのと、本当に何も知らずにいたことで罪は免れたが、子供は貴族としては育てることは許されず孤児院に行くことになった。もちろん即離婚した。
聖女様とも異世界人仲間として友人になり、王都に来た際は「麻生」でコンタクトが取れるように通称を登録してくれた。嬉しいwスパイ活動みたいだ♡
私たち家族は、今王都が一望できる崖の上に居る。お兄ちゃんを中心に両サイドに私とトーさんでサンドイッチしている。膝の上にはウハハがお兄ちゃんのお顔を覗いている。
「明日、俺たちはここを出る。」
父さんはお兄ちゃんの肩を抱き頭を寄せて優しく言う
「はい」
お兄ちゃんは肩が少し震えている………私はたまらずお兄ちゃんに横から抱き着くと、お兄ちゃんは震える声で
「僕の為にいっぱいお力を貸していただきありがとうございました。」
私は抱き着く腕に力を籠めフルフル首を振る。トーさんはよせていた頭をお兄ちゃんの頭にコツンとぶつけてぐりぐり頭突き攻撃しながら
「家族のために力を使う事は当たり前の事だろ。お前はカナメの兄だ」
笑いながら言う。私も負けじとお兄ちゃんに気持ちを伝える
「そうだよ!カナの初めてのお兄ちゃんだよ」
「そして俺の息子で弟子だ」
お兄ちゃんは目に溜めていた雫が決壊してぽろぽろと落ちて落ちて
コクコク首を縦に振りながら
「はい。嬉しい。」
お兄ちゃんは声にならなくなりズッズっとしばらく泣き続けていた。その間お兄ちゃんのお膝でみょんみょんかわいい動きでお兄ちゃんを癒し続けるウハハ。かわいいなぁw
少し涼しい空気が凛とした夜、満月は銀色の光を辺りに降り注ぎ、静寂に包まれた夜空には、無数の星が煌めいていた。みんなで星を見上げ鼻を赤くした。
「イルにプレゼントがあるんだ。」
トーさんはそう言ってお兄ちゃんの耳に黒いイヤーカフを付けた。イヤーカフには水色の魔石がセットされている。
トーさんと私も同じものをセットしているのを、お兄ちゃんに見せる。
「俺と、カナメで聖女様が使ってた通信機を作ったんだ。デザインが俺で作成のほとんどはカナメだ」
「イヤーカフを触って魔力を流して話して、私やトーさんの魔力だったらかなり広範囲つながるからね。寂しくなったらいつでもこれ使って♡愚痴でもコイバナでも何でも聞くよ♡」
「ウハハ♡」
「嬉しい、僕の家族になってくれてありがとう皆」
お兄ちゃんは涙をぬぐい、ウハハを抱きしめ赤くはれた目を細め嬉しそうに笑ってくれた。




