50話 悪徳伯爵を懲らしめよう! 迎撃編
※軽く戦闘?があります。ご注意ください。
此処は王都で再開発地区に指定され今はほとんど人が居ない区域。そこに1件だけ明かりの灯った建物がある。大きくない屋敷に2名の護衛付きで子供2人と前ストーティオン伯爵夫妻が居る。あとは立派な黒馬が1頭。
闇夜に紛れるのが仕事の我々なら簡単な仕事だ。護衛も一人は宰相の息子だが、剣の腕はたかが知れている。もう一人は見たことのない騎士だが、5対1ならばまず問題ないだろう。
家の中から明かりが消えた。
さあ、我々の狩りの時間だ!まず斥候が家の敷地に入って我らを呼ぶ。
さっと我らも後に続こうとして、柔らかい何かに阻まれた。罠だ!そう感じたときには遅かった。中にいる斥候も全く動けず、その場で気絶している。われらは結界であろう柔らかい膜と後ろから押されるように巻き付いてきた闇にとらわれ、口の中にまで闇が入り込み口内に仕込んだ自害用の仕込み毒も無力化された。息をするのに必死な状態で、我々は次々と捕縛されていった。その間、我々は誰一人として姿を見ることができなかった。その事実に恐怖を感じながら。我々は成すすべもなく闇に飲み込まれていくのだった。
「闇夜に紛れるのはお前たちだけの特権ではないんだよ」
『暗転の厄災』この最近暗殺を生業としている暗殺者集団
仕事としてきれいに殺す。殺しに遊びは一切ない。そういう所を奴らを重宝している連中の気に入る所だ。遊んでの仕留め損ないが無いのだ。どのくらい規模の集団化知らないが、俺の家族を狙ったんだ覚悟しておくことだ。
敷地内に放している黄昏がヒヒンっと近くまでやってきて文句を言う
『もう!アタシの出番、全然なかったじゃないのよ!烏、少しは気を利かせて敵を残しておきなさいよ!イルイルに褒めてもらえないじゃない!マジで空気読めっての!アンタのせいでアタシの評価が下がるじゃない!まったく、使えないんだから!』
「うるさいぞ!今何時だと思っているんだ、子供たちが起きちまう黙ってろ!!」
俺が小声で怒ると、黄昏が歯ぎしりしながら足でカッツカと土を飛ばす。止めろ、借り物の庭を壊すな
俺は黄昏と共に表に周り、エドモンドとヤマトに捕縛の完了を伝えに言った。
ヤマトは俺の話を聞きながら後ろの黄昏を気にしている、エドモンドは小さなコンパクトを取り出し耳にイヤーカフを付ける。それってダンジョンからしか出ない魔道具の通信機。
「アヤ起きているかい?夜分遅くなり申し訳ないが襲撃者捕縛した。教会の尋問室は空いてるかい?」
『こんばんは、エド。大丈夫よ。尋問室の準備は万端。尋問官は凄腕を待機させているわ、こちらはいつでも良いわよ。』
「俺がこれからそっちに運ぶ、こっちはウハハの結界と、黄昏が居るから問題ない」
『黄昏さん?初めて聞くお名前ね』
『あら~聖女様じゃない、お久しぶりね~。今、アタシ、イルイルの守護獣やってるのよ~。』
『あらまぁクスクス、頼もしいわ、エド、ヤマトそちらは黄昏さんと一緒にお願いね。クロトこちら迄の護送お願いするわ。直接地下牢の方に入ってきてくれて問題ないわ』
「りょーかい」
通信はすぐに切れた。エドモンドは首を傾げながら、黄昏に目を向けて優しくなでる
「きみアヤの知り合いなのかい?」
黄昏の言葉のわからないエドモンドは首をかしげる鼻息の荒い馬をよしよしとなでている
『きゃあ~ん♡イケメーン!ちょっと、その撫で方マジ最高なんですけどー!!アタシ、マジ惚れちゃうじゃないのー!もしかして、天国ってココにあったの!?』
俺はひいた。このくそ駄馬!!と思っていると、横に居たヤマトが青い顔をしている…あれ?もしかして
「ヤマトって黄昏の言葉判るのか?」
俺の言葉にエドモンドは「言葉?」っと首をかしげたが、ヤマトはぎくりとした表情で固まった。目だけが泳いでいる……もともと口数が少ない奴だが、まあ今は良いか。
「じゃあ俺は行ってくる。俺の家族をくれぐれも頼む」
そう黄昏たちに言うと俺は闇に紛れるように消えた。早々に引き渡して、『暗転の厄災』の本拠地を叩きたい。次が送られてこないように。俺は口角を上げながら今後の算段をする。教会に入り地下の牢屋に足を踏み入れると
「お待ちしておりました」
と白いローブを纏った女が言った。目の前に開いている壁から床から鉄格子から真っ白な牢を指さして言う
「ここに5人とも突っ込んだんでいいか?」
「はい。よろしくお願いします」
俺は闇を牢に向け広げスキルから先ほどとらえた男たちを出す。
「では証言の確保お願いす…あ、ちょっと待ってくれ。一番下っ端っぽいのはどいつだろう?」
「そうですね…鑑定ではその青髪の彼が一番下だと思います」
「お!!サンキュ。」
俺は青髪の男を持ち上げると額を合わせ闇で合わせてまとめ上げる。そうすると相手の記憶に軽く連動出来る。気持ち悪い思考や記憶が多くてめったにやらないけどな。お!!アジトの場所解った!!良し。
俺は男を牢に投げると、女に向き直って伝えておく。
「『暗転の厄災』は無くなっても問題ないか?」
「問題ありません」
「OK。聖女様にそれも伝えておいてくれ」
「かしこまりました。クロト様」
俺は「ん?」っと名を呼ばれた事に引っかかり、初めてまともに女を繁々とみる…あのころと変わらず釣り目に紺色の髪のアリス。今はローブでメイド服じゃないけど、俺は目を大きく見開いて、そして嬉しくなって笑った。
「久しぶり。アリスさん」
「立派になられましたね。今はAランク冒険者ですね。」
「まあね。アリスさんが居るってことはジャックさんも聖女様の近くに居るのか?」
「ジャックは、此処には居りません。」
「そっか……騎士って危ない仕事だしな…」
「いえ、私達結婚いたしまして、子供が3人居りまして、まだ小さいのでジャックが専業主夫しております」
ニッコリと笑ったアリスの左手の薬指には指輪が光っている
ブフョワッ!!!!!俺は盛大に吹いてしまった。
え?ジャックとアリス結婚したの?しかもあのジャックが専業主夫!!
「おっおめでとう!!いろいろ片付いたら今度子供たちに合わせてよ。俺も家族紹介するよ」
「楽しみにしております」
俺は手を振ってその場を後にした。そっか二人が結婚か…
ジャックさん絶対尻に敷かれているだろうな。そう思いながら教会に来る前とは違う意味で俺は口角を上げた。




