43話 過去編:黒烏の暗殺者の異名を持つ少年
20年前のコルドナ街の冒険者ギルド 【副ギルドマスター スパイク視点】
早朝賑わう冒険者ギルドに一人の黒づくめの少年が入ってきた。いつも黒い恰好をして、黒い長い髪をひとまとめにし、目の下には黒い隈を常に作っている。一人でクエストをこなし、失敗は今のところない少年だ。
少年は依頼掲示板ではなく、賞金首のリストが貼ってある掲示板に行き、そこから8人の男の紙をはがし、受付に手渡した。カウンター受付に座っていたのはわしだ。わしは賞金首のリストを確認すると少年に言った
「討伐証拠は?」
っと尋ねたわしに、少年は掌に闇を発生させて、闇の中からカウンターの上に乗りきらない生首を出した。闇魔法使いとは珍しいな。周りから悲鳴やどよめきが起きた。少年は周りの声には見向きもせず
「生きてる奴は大きい、此処じゃ無理だ」
「そうか、ちょっと待てよ。おーーーいお前らちょっと真ん中開けろ」
冒険者たちは恐怖のせいか、いっせいに中央から離れ、中央にはぽっかり空間が空いた。
「これで出せるか?」
俺はにかっと笑って少年に言うと、少年はその場所に手をかざし、その場に大きな闇が広がったかと思うと、黒い何かに縛られた男が出てきた。
周りはざわめき…恐怖した。だってそうだろう、殺人・恐喝・強盗・強姦・人身売買っとほんとになんでもござれの紅蓮のイヅチ…だぞ。
「おーおーかろうじて生きてはいるな。その頬の傷跡、目元の黒子も一致する紅蓮のイヅチで間違いないな。おーい誰か救護員呼んで、こいつもう少し回復してくれ。このままじゃくたばっちまう」
わしは救護員の要請と、他のスタッフに騎士団へ走ってもらい来てくれるように頼んだ。そして少年に向き合う。少年と俺の間には瀕死の凶悪犯。近くには生首が7個…面白いなんだこいつ こんな奴居たんだな。
「確か、クロトだったか?Dランクだったよな。」
「あぁ」
「こいつら一人でやったのか?」
「あぁ」
「騎士団の確認が済んだら報酬渡せるが、ここで待つか?」
クロトは壁にある業務報告や騎士団からの報告などが載った伝言板を指差して言った
「師範が死んだ。他の弟子達に伝えたい。各ギルドに張り出してもらうことは可能か?」
「可能だが、もしかしてコイツらか...」
わしは眉を顰め指で生首の置いてあるカウンターを指さして聞いたが、クロトは無表情に再度聞いてきた。
「可能か?」
「あぁ可能だが、金はかかるぞ」
「褒賞金で払える」
ワシは大きなため息をつくと、伝言板用の用紙を渡し伝言を書くように言うと、クロトは迷い無くペンを滑らせた。
『梅花の会 元師範 サオトメ死去 岬の先端に埋葬 』
紙を返され、全ギルドに張り出して欲しいと伝えられた。梅花の会って確か数年前に解散したアサシンの養成所か…なるほど。これは城にも報告した方が良い案件だな。
「クロト、まだ騎士団も来ないしおまえ飯も食ってないだろ、害獣駆除してくれたからおごってやる。食ってけ」
クロトは奥の食堂を観てワシをもう一度観てから
「ありがとう」
そう言って食堂に歩いていった。面白い奴が居たなぁ
俺は細身の小さい少年が食堂に入って見えなくなるまで観ていた。
その後、すぐに辺境騎士団の騎士隊長と副騎士団長他数名が檻馬車持参でやってきた。ただ、騎士団の方で生きているのが紅蓮のイヅチだけと言うのにびっくりしていた。
「は~凄いね君。と言うか死んでる人間ならアイテムBOXスキルに入るけど、こんな大きな人間どうやって運んだの」
騎士副団長はニコニコと人のスキルを聞いてくる。それは冒険者の間では手の内を明かす命に関わる事で、タブーとされる質問だが、騎士団から聞かれると答えないといけない。まあ、疑問に思うところだろう
「知りたいなら試しますか?」
クロトは、副騎士団長に手をかざす、副騎士団長の足元から闇が広がって
「え?いや…ごめん!!教えてくれるだけで!わわわわ!!」
そう言い残し副騎士団長を飲み込んだ闇は掻き消えた。驚いた騎士たちはすぐにクロトを取り囲んだが、騎士団長が騎士たちに待ったをかけて
クロトの前に出た、
「気分を害する質問だったのは悪かった。冒険者はスキルの話はタブーとされているよな、すまない。あとで叱っておくから返してくれるか?」
クロトは団長と目を合わせるとコクッと頷いて、元居た場所に闇を広げその場所に副騎士団長を出した。副騎士団長は唖然としていたが、飛び起きて
「君騎士団に入団しないか!!即採用だよ!!」
っと言いながらクロトにつかみかかって行こうとして、騎士団長にぶん殴られた。「ヒュー!!」わしが口笛を鳴らすと騎士団長に睨みつけられた。怒りっぽい男は女にモテんぞ、ハハハ
「俺の上官は師範だけだ。騎士団には入らない。あんたが知りたがってるのは、「闇沼」俺の固有スキル。生き物も入る。ただし、入ったらすべてが闇に染まる。数日で常人は狂う。これで良いか?」
「あぁ…本当に部下が失礼をした。この度は紅蓮のイヅチの捕縛と賞金首の討伐感謝する。また機会があれば賞金首の討伐等お願いしたい。私たちだけでは困ってる民のすべてにこたえてやれないのでな。」
団長の言葉を聞いたクロトは団長の目をじっと見て
「気が向けば」
それだけ言うと踵を返してギルドから出ていった。その後ろ姿を見送ると、団長が大きく息を付き一言………
「久々に背筋が凍った。お前はよくへらへら出来るな、まるで暗殺者と敵対しているようだった。」
「お!!団長の背筋を凍らすとは、やるな~あれだ見た目も真っ黒だから
『黒烏の暗殺者』って所かハハハハハ」
わしは団長と笑いながら話していたが、それを聞いていた周りの冒険者達はこそこそ噂を始めた。
その後辺境付近に居る懸賞金付きの凶悪犯達はクロトによって片付けられ、その度に冒険者ギルドには生首が転がった。そんな事が幾度かあったのち、「黒烏の暗殺者」と言う二つ名持ちの冒険者が辺境に居ると有名になった。
当人の知らぬところでだがな。




