42 聖女とトーさんの出会い 1
※ご注意ください『***』以降残酷な表現が多くあります。『*』以降は苦手な方は読まなくても話はつながります。
夕闇が忍び寄り、街灯がぽつり、ぽつりと灯り始める。空には一番星が輝き始め、夜の帳がゆっくりと下りてくる。
コルドナ街の冒険者ギルド近くを12歳の俺はクエストを終え帰路に着こうとしていた。その頃の俺は、今のイルより少し背の低く、顔には隈がくっきりとわかる顔色の悪いガキだった。
手に握られた今日の報酬額を確認する。銀貨が7枚。12歳の子供にしてはかなりの額を稼いでいるが、それでは足りない…爺の薬の代金には程遠い。また、糞共の仕事を引き受けなくてはいけないのかと思うと反吐が出そうだ。俺は銀貨を懐に仕舞、ガンガンする頭を振った。最近は頻繁に夢に呪詛を吐く女が出てくる。眠れない…………もう何日眠ってないんだ……その時俺はクラット倒れそうになって誰かにぶつかった。
「わっ」
驚いた声を上げた赤髪の珍しい服装の女の子は俺を見てびっくりしてた
「わりー」
俺は足に力を入れ自分の体を支えた
「え、ちょ、マジで!?アンタ大丈夫?めっちゃ顔色悪くない?」
彼女はいきなり俺の額に手を当て
「……………あ~なんだっけ!なおすイメージだっけ?・・違うな、正常な状態に戻すのか!!は~いヒール!」
そう言ったとたん女の子の触れている額から暖かい魔力が広がっていった。そのとたん先ほどまで体に感じていた怠さや、頭痛に吐き気、昨日あいつらに蹴られて出来た怪我さえも全部消えた。俺は彼女の顔を凝視してしまった。
「はいはい、おっけーおっけー!顔色良くなったんじゃない?アタシね、実は回復魔法も使えるんだよねー。少年!!次からは体調悪くなったらちゃんと家で寝ててね!おねーさんとのお約束だよ♡」
そう言って彼女は俺に手を振って歩いて行った。回復魔法?あれが?回復魔法…俺はここ暫く使えなかったスキルが復活している事に茫然と立ち尽くした。
薄闇の広がる廃墟のような街並み、その一軒の家には男たちの笑い声が響いていた。
いくつもの部屋があるが、ある一室。
明かりは無く、唯一の明かりは窓から差し込む月の明かり…部屋には、地べたに薄い布団が敷かれ、その上には黒い服を着た右足が無い年老いた男の骸があった。その骸の横には黒い装束の少年が苦しげに頭を垂れていた。
なージジイよぉこんな最期あんたは送ると思ってもいなかっただろ
なぁ、想像もしなかっただろ
アサシンの仕事を取りまとめていた頭領だったあんたが…
皆から羨望の眼差しで観られていたアンタが
俺みたいな孤児1人に見送られるだけで旅立つとか悔しかったろうな
アンタの足と引き換えに助かった命だったのに、役立たずでごめん
アンタの最期がこんなに虚しく残酷な場所でごめん
アンタの悔しさ・虚しさ・全部ひっくるめて奴らに贖わせてやる
*******
比較的綺麗な部屋、その一室は魔法ランタンを使い、煌々と明るく照らされている。その室内には何人ものガラの悪い連中が集まっている。その男たちの手元には酒と食事・そしてナイフや剣などがあり、中央のテーブルにはいくつもの食材もおいている。食材の中の肉にナイフを突き立て口元に運び、肉をかじりながら小柄な男は言い出した。
「なぁ、あのガキ帰ってこねーな、くたばっちまったか?」
「兄貴が昨日あいつ蹴ったりするから仕事できなかったんじゃねーだろーな」
笑いながら大柄な男が頬に傷のある男を兄貴と呼び語り掛ける。すると窓際の空気が通る場所に座っていた男が畔けるように言い張る
「ふん!!そろそろあの死にぞこないも終わりだろう、縛るもんのなくなったガキなんぞ要らぬだろう」
「イヤイヤ!!あいつのスキルさえ兄貴が封印しなかったらもっと荒稼ぎ出来たんだよ!!」
兄貴と呼ばれていた男は酒を飲みながらにやりと笑い
「あいつのスキルの封印ができなければ即座に俺たちは殺されていたぞ。」
「あーーーそんなやばい奴には…見えるか。」
「まぁ、次に姿見せたときは命が消えるときだな」
男は酒を煽って人相の悪い笑みを見せた。次の瞬間男たちは黒い何かにとらわれて、声も出せず、身動きもできず、何が起きたかと、冷や汗をかきながら唯一動く眼球だけを動かし現状を確認していた。
ジャリ。
何かが砂を踏んだ音がする。
「賞金首 金貨15枚 生死問わず ダグマ」
そう声が聞こえた途端、音もなくあたりに血の雨が降った。血が噴き出し、床に打ち付ける音だけが響く。男たちは何が起きたかわからず、声も出せない。ただ仲間が死んだことだけが理解できただけだった。
「賞金首 金貨30枚 イリキノサーガ」
「賞金首‥‥‥‥‥」
生ぬるい血の雨が降り続く。その場にいる男たちが次々と倒れこむ。最後の一人となった時
「賞金首 金貨100枚 紅蓮のイズチ 生きたままの捕縛の場合、追加金貨100枚………殺さない方が良いってことか……」
そう言って、兄貴と呼ばれていた男の前に立つ。少年は全身血まみれで、相手の目からは身動きが出来ないくせに反抗心が感じ取れた。次の瞬間男の足首から下が消えた。切られた足からは大量の血が出ている。
「大丈夫。大丈夫。死んだら値が下がるからね。ポーション」
そう言った血みどろの少年は男の傷口にポーションをかけ治療した。もちろん亡くなった足は無い。少年は口角を上げた。
「あんたの利き手は右手だったね」
そう言った瞬間、男の右手が手首から消えた。男は痛みで絶叫したいのに声も出ず、ただ吹き出す血しぶきを見ている、すると血を被りながら少年は男にポーションをかける。少年は笑っている。口は笑っている。目は………
男の顔から恐怖の色が濃く出てきた。
「次に俺の姿見たときはお前たちの命が消えるときだったよな?」
血みどろの少年は無慈悲に笑う。




