44話 聖女とトーさんの出会い 2
南の辺境の地は大陸内部のため海に面している場所はほとんどないが一部だけ、ほんの一部、魔物の闊歩するジャルの森から海の見える岬がある。その岬の先端に、墓が一つ。
海が大好きだった師範の憩いの場所。足がなくなってからもあいつらに捕まるまでは頻繁に来れていたんだ。でもスキルを封印されて連れてきてあげる事もできなかった………
墓の前に立つ、静かに打ち寄せる波は、太陽の光を反射して煌めき、まるで生命が息づいているかのような輝きを放つ。俺は膝を付き静かに目を閉じた。太陽の光が優しく俺を包み込み、波の音が静かに響き渡る中、故人の魂が安らかであることを心から祈った。
師範、今まで本当にお世話になりました
ジャルの森を通り帰ろうとすると、オークに出会った。オークはそのまま俺に棍棒を振り上げ突進してきた。それを闇で巻き付け動きを止めた後、そのまま買い取り価格が下がらない様首を切り落とし、闇に収納した。あぁスキルが使えるのは本当にありがたい。あの赤毛の彼女にはお礼をしなくては。
冒険者ギルドでは大声で口論が響いている。どこにでもトラブルを起こす人間は居るが大声で怒鳴っているのは、辺境で活動しているB級冒険者 ゾイ。Aランク間近とも言われている男だが欠点がある。女の子に惚れっぽい。無頼者ではないのだが、女の子への距離の詰め方が尋常ではなく、女性冒険者からは敬遠されている存在である。そんな彼が距離を詰め腕をつかんでいるのは赤髪のあの彼女である………
赤髪の彼女はあの時とは違う、黒いヒラヒラがいっぱいついた膝上ワンピースに黒いマント。手に持っているのは彼女の背丈の半分くらいありそうな赤い魔石のついた杖。まるで貴族の子女がコッソリ冒険者ごっこしている様ないでたちだ。顔にはきっちり化粧がしてあり赤い髪に似合う赤い唇からは、見た目に反して言葉が飛んで出てきた
「マジありえないんだけど!アタシ、アンタみたいなの全然タイプじゃないし!マジで勘弁してよ、キモいんだけどー!離してって言ってんじゃん!」
「キモいってなんだよ!!俺はあんたに惚れたって言ってんじゃん!!飯ぐらい付き合えよ」
「アタシ、アンタみたいな自分の意見しか通さない奴、マジで無理!人の話聞けし!マジで勘弁してほしいんだけどー!」
「………!!」
赤髪の彼女は独特な言い回しで、正直一部しか意味は解らないが、ゾイを嫌悪しているのだけは伝わってきた。つかまれている腕を振り払おうとするが離れない。彼女はそれにかなりいらだっている。彼女はゾイに頭ごなしに大声で言われても、即座に言い返しゾイの方が口では勝てないとわかったら手が出そうで、周りの冒険者もどうしていいか戸惑っている。
冒険者ギルドは基本冒険者同士のトラブルは自己解決が決まりだが、流石にどうみても駆け出しと解る少女に対してBランクの冒険者がとって良い態度ではない。これは誰かが止めないといけないだろ。俺はキョロキョロとあたりを見回すと、いつも受付に居る軽薄で強そうな男が居たが、男は事の成り行きを面白そうに眺めて居る様だった、動く気は無いっと…俺は大きなため息をついた。
「その手、何?マジありえないんだけど!惚れたとか言っといて、結局オンナは力ずくでどうにかできるとか思ってるんでしょ?そういうとこ、マジで引くわー。キモいんだけど!」
彼女の言葉を聞いてゾイはつかんでる手を振り上げた。
「きゃっ!!」
捕まれてる彼女はそのまま降り飛ばされ空中で俺の闇が彼女をキャッチした。そのままゆっくり闇を下ろし彼女をそっと床に置いた。俺はそのままゾイと彼女の間に入った。彼女は知らなかったんだろうけど、ゾイはカッとなりやすくて有名なんだ。
「周りみれば?もうやめときなよ」
俺の言葉に、ゾイが周りを取り囲む冒険者たちを見てさっと顔を青ざめ、悔しそうに唇をかみ冒険者ギルドを出ていった。俺は大ごとにならずホッとし彼女に振り返る。彼女は俺の顔を見ると
「あ!あん時の顔色悪かったコじゃん!あれから顔色良くなったねー!マジ助かったよ、ありがとね!」
「この間は助かりました」
「ま、おあいこってことで~!」
俺と彼女は笑い合った。冒険者ギルドの中も緊張が取れて皆ホッとした空気になった。
「ここに居るって事は冒険者なんですよね?」
僕が尋ねると、彼女は
「まー、とりあえずアタシ、魔法使い始めたのって1週間前くらいなんだよねー。マジで初心者ってやつ!」
また冒険者ギルド内がざわめいた。それはそうだろう、冒険者初心者も初心者が、Aランク間近の男の恫喝にケロッとして言い返していたんだから。俺も感心して言葉を漏らしてしまった
「あんた根性あるんだね」
彼女は屈託なく笑った。その顔になぜか懐かしさを覚えたのはなぜなのだろうか…彼女はクエストのためパーティーを組みたくてここに居たという。
「どこ行くの?」
「ジャルの森だけど、浅いところね!マジで奥に行ったらヤバいから、手前の方だけだけど!」
「君以外のメンバーは?」
「剣士が1人と、メイ…あー、えっと、ヒーラーね、ヒーラーが1人、って感じ!」
「ふーん。君戦えるの?」
「攻撃魔法ならイケるんだよねー!ちょっと規格外でアレだけど、マジで使えるから!」
「でもそれじゃ…全体的なバランス悪いよね。今回だけ手伝ってあげようか?この前のお礼に?」
「え、ちょ、マジで!?アタシらは助かるけど、アンタは良いの?マジで心配なんだけどー!」
「じゃあ、ちょっとついてきて」
俺は買い取りカウンターに買い取りをお願いして、
「オーク一体ここに出して良い?」
「良くないわ!!アホガキ!!解体所に回れ」
解体受付の親父に叱られ解体所の台にオークを出した。
「また、お前きれいな殺し方して。良い状態だ、素材もきれいに取れる」
解体所の親父はさらさらと紙に金額を掻いてカウンターに出すよう渡される。俺はその紙をもってカウンターに金額を頂く
オーク一体 良品 金貨2枚
俺は彼女に向き合って
「どうする?組む?」
彼女はよろしくお願いしますと腰を90度に折る珍しい礼をした。
【?????視点】
人の心の弱い部分を刺激する悪魔はどこにでもいるものよ。忍び寄る影。闇の申し子。彼らはまごう事無き悪魔
魔王と呼ばれていた者が消えてここ数百年、魔王の復活を望み粛々と準備にいそしむ悪魔たち
人間の中に産まれ落ちる魔王になりえる存在を探し出し、魔王に進化させるのが彼らの宿命。悪魔の産まれ落ちる理由。その魔王になりえる存在を探し出そうと人間の国には人間に化けた悪魔がいっぱい潜んでいる。
そして弱った人間の心の隙間に闇の目を植え込むのです。
あぁ此処にも弱った心がおりますよ‥‥‥‥フフフ
通りの奥まった瓦礫を蹴り上げる男が一人
「くそっ、あの女俺に恥をかかせてくれたな!!勿体ぶりやがって!!」
大声を上げ瓦礫を破壊する男、これはこれはさぞ心に良い隙間が出来ているでしょうフフ
「あら~良い男。お兄さん荒れちゃって」
独りよがりのその想い、あぁ心地よい
そんな隙間だらけの心で睨んだって可愛らしいしかないのだけれど
「なんだお前」
「あら、そんな瓦礫なんか相手にしてないで、アタシと遊びましょうよ。ね?夜はこれからが本番よ。」
「‥‥‥‥」
何も言わない男の手を取り近くの宿に誘う。彼の方に顔を寄せひっそりと甘さを含めて蜜のように誘う
「お兄さんのような逞しい男の人って大好きなの」
隙間が出来た男の心は甘い言葉が大好きなの。瞳の奥にゆらゆらと灯る欲望の揺らぎがあぁ心地よい~
フフ今夜はアタシの糧になってくださいな。




