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安全第一異世界生活  作者: 笑田
番外編・それぞれの日々2

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321/325

320話 コーくんとお兄ちゃんとターちゃんの失せもの探しトリオ結成。

「失せ物とは、なんですか?」


この場でカレーという言葉に汚染されていないクレイ嬢が静かに問う。

皆もカレー熱から復帰してアリーシャ嬢を見つめ始めた。

アリーシャ嬢は凄く真剣な顔で、クレイ嬢に言った。


「戴冠式で使う王冠についた宝珠です」


ガゼボの空気が止まった。

宝珠?

えーと……それを、妖精とか聖獣とかドラゴンとか、ごちゃ混ぜな面々に頼みに来たの?

私が内心困惑していると、横からお兄ちゃんが、


「それは……ルクレチア殿下……大変なのではないのですか?」


「えぇ。殿下の戴冠式を邪魔したい何者かの策略によるものだと思います」


目を伏せて膝上の拳を握りアリーシャ嬢はそう吐露した。

その言葉に一番に反応したのは猫くんである。


『うへぇー、こっちでもそういうドロドロあるんだな。吾輩もリーマン時代いろいろな奴に足を引っ張られた―――』


何かを思い出しながらうんうんとうなる猫くんに、彩音ちゃんが聞いた。


「あら、猫田氏はサラリーマンだったのね。どういう商品を扱っておられたの?」


彩音ちゃんの言葉に、一口に切られた羊羹を頬張ってもぐもぐしながら、


『……ゲーム会社。

死ぬ少し前までは乙女ゲームの販売促進に携わっていた』


「乙女ゲーム……?」


彩音ちゃんがその言葉を反芻する。

対する猫くんは、何か嫌な事を思い出すように表情を強張らせていた。


「もしかして、その乙女ゲームの世界がこの世界に現れた?」


それは核心を突いた言葉だった。

彩音ちゃんの、その言葉に驚きの表情で固まった猫くん。そして私もびっくり。


あれ?この世界ってあの小説の世界じゃ、無いのかな?


「私は好きで読んでいたファンタジー小説の主人公になったわ。

それがこの世界の私の位置」


二人の会話を聞きながら、私は息が詰まりそうになった。

もしかしてこの世界……

いろんな“物語”が混在している世界……とか?


「もしかして……私にも、何か役割があるの?

この世界で生きる意味みたいなものが……」


私の独り言のように零した言葉を猫くんは拾って、思考に沈んだ。


『それはわからないけれど……この世界は一体何なんだろうな』


日本の記憶を持つ三人は沈黙した。

ガゼボはしんと静まり返った。


その空気を壊すように、アリーシャが焦った声を上げる。


「全然意味わからないんだけど、お話し中ごめんねー!

とりあえず時間が無いので!失せもの探しお願いします!!」


その言葉に私たちはそろって顔を上げる。


「あ―――そうね。話が逸れていたわね。ごめんなさい」


彩音ちゃんが声を掛けると、横から楽しそうな声が入って来た。ターちゃんだ。


『アリーシャ、必死じゃんwwヒッヒン』


アリーシャ嬢はターちゃんを見て不思議そうに首を傾げた。


「あれ?馬さん…神獣そっくり…足も多いし…」


その言葉に、私はターちゃんを見る。

そして次にアリーシャ嬢へ視線を向けた。

その瞬間、ふとルクレチア殿下のあの時の事件が頭をよぎる。

そこから連想するように、私はようやく気づいた。


アリーシャ嬢を指さしながら私は叫んでしまった。


「あぁーーー!アリーシャ嬢って、アーチェ兄の婚約者さん!!」


私の言葉に、ショックを受けた顔をするアリーシャ嬢。


「今ですか!? 今気づいたみたいな反応やめてください! 」


私、アリーシャ嬢の事ピンク髪のお嬢さんとしか認識してなかったしな――――


「私自身は初めてお話しします。奇跡の少女カナメさん」


「何その呼び名……、やめて、やめて、普通に呼んで。カナでいいから」


アリーシャ嬢からなんか変な名前で呼ばれ、戸惑いつつ両手を振って拒否を示すと、あっさり言い換えてくれた。


「じゃあカナちゃんでいい?」


ニッコリ年上のお姉さんらしい笑顔にホッとしつつ、


「それでお願いします」


「私の事はリーシャって呼んでほしいな~。

これでもB級冒険者なの。カナメちゃんもミハイル君も冒険者でしょ?」


リーシャが自然にお兄ちゃんに話を振る。あれ?二人は知り合いだったのかな?


「コルドナ先輩、僕少し前に相方とD級に上がりました」


「あら将来有望な後輩君ね。ふふふ今後が楽しみね~」


そんな和やかな会話にハッとしたようにまたもリーシャがストップをかけた。


「って違う!宝珠です。宝珠!!」


何だろう…リーシャが一人突っ込みしてるようにしか見えない。

ところで、たぶん皆、宝珠と聞いてもピンと来てないと思う。見回すと皆で首をかしげていた。


「宝珠って何で出来ているんですか?宝石?」


「いいえ、貴重な白竜様の鱗で作られたものなんですよ」


その言葉にコーくんが興味を持った様でリーシャに視線を向ける。


「ほー…白竜の…」


「金の王冠に白く輝く宝珠がはめ込まれていたのだけれど…突如王冠から消えてしまったんです」


リーシャの言葉を聞きながらコーくんはある方向を向いた。

全く動かずそちらの方向を凝視するコーくんを不安に思い名前を呼ぶ。


「コーくん?」


「うむ」


コーくんが手を出して、私の言葉を止めた。そして皆がコーくんを見る。

リーシャは困惑して、彩音ちゃんや私へ視線を泳がせている。


「え?……この小さい子、何してるの?」


そのリーシャの困惑具合を気にせずに、コーくんはターちゃんに声を掛け立ち上がった。


「ターよ。我をちょいとばかり運んでくれぬか?」


その言葉に、ターちゃんは察したようにコーくんの傍に身を寄せる。


『あらもう見つかったの?』


「白竜の気配があっちの方からする。連れて行ってくれ」


『モチのロンよ~!乗って、乗って~』


そう言って、ヨイショっとターちゃんに飛び乗ると、私に声を掛ける。


「カナメ、我少し行ってくる。

カレーなる旨なるものを用意して待っていてくれ」


「晩御飯には間に合う?」


その言葉に、少し考えてからコーくんは笑顔を作り

可愛らしい顔でリクエストをしてくる。可愛い。


「おやつには帰って来れる。おやつはプリンが食べたいぞ。ではい――」


「まっ、待って。コーくん!」


コーくんのリクエストに言葉をかぶせて立ち上がったお兄ちゃん。

ターちゃんの上からお兄ちゃんを見下ろすコーくんは不思議そうな顔をしていた。


『どうしたのイルイル?』


「お兄ちゃん?」


「それ僕も一緒に行ってもいい?」


お兄ちゃんのその言葉に皆の動きが止まった。

読んで頂きありがとうございます(❁´ω`❁)

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