315話 プロローグ~新たな国を厭う者達の暗躍~
新章「王都戴冠式編」スタートです✿よろしくお願いします。
オーラシアン王国北部。
“大雪山”と呼ばれる山脈の吹雪も収まり、雪の下から新たな命が芽吹き始める季節―――
南部、魔物が活発化し、魔獣狩りの依頼が冒険者ギルドの掲示板に増え始めた今日、そのちょうど中間地点にある王都はまた違った雰囲気が街の中に在った。
もうすぐ行われる式典を前に、王都はどこか浮き足立った空気に包まれていた。
王都のいたる所で花が飾られ、窓辺に置かれる国旗。
店頭では新王戴冠セールなるものが始まり、新王の姿絵が戴冠式前に売られている。
王都は完全なるお祭りの前の少し浮かれた空気を纏っていた。
そんな浮かれた城下を見下ろすのは白亜の城。
城の中も戴冠式を前に浮かれた空気が漂うかと思われたが……
城の中はバタバタとあわただしい足音や怒号が飛び交っていた。
「食材が届かない?それはどういう事だ?」
宰相室で眉間に皺をよせ頭を抱えている男と、申し訳なさそうに頭を下げる男達…
戴冠式の祝い料理には欠かせない、“祝福の鳥”金冠鳥。
その捕縛を戴冠式に向けて昨年の暮れから、A級冒険者に依頼してあった。
依頼達成の報告はすでに届いていた。
だが、ギルド職員が王城へ納品する直前、金冠鳥は何者かに奪われた。
城に納品に出ていたギルド職員と護衛は路地裏で倒れていたそうだ…
頭が痛い…
それとは別に違う問題も起こっている。
今度は盗難だ。
王城の宝物庫から戴冠式に必要な王冠に付いているはずの祝福の宝玉が消えた―――
宝物庫に入れる人間が限られている状態で起こった盗難。
本当に頭の痛い事だ。
そして極めつけが―――
新王に加護を授ける神獣様への、暗殺予告状。
誰だ神獣様に危害を加えようとする奴は…罰当たりな!
ただここ最近神獣様がこちらに来られていない事が運が良いのか悪いのか……
王妃を極刑にし
第一王子を遠ざけ
第二王子を廃嫡し罰した
反発はあると思っていた。それでもだ―――
こうも立て続けにトラブルが続くと作為的な悪意を感じる。
第一王子一派だった者達か…
第二王子一派だった者達か―――
もしくは王妃と繋がっていた魔族か…
悪魔は本当にご遠慮願いたい
まだ何もわからない段階だが要らぬ思いを抱える者達が要らぬことをしようとしているのだけは確かなのだろう。
新しい時代を厭うのか、
自分が排除されるのではないかと思う恐れか、
それとも全く違う思いか――――
そう簡単に、”新しい時代”を迎えることが出来ないように動いて居る者達
まったく頭が痛くて、胃が痛い。
「通信の魔道具を返却したのが痛い所だ…」
私は席を立ち、補佐官に伝える。
「少し席を外す」
「どちらに?」
補佐官はすかさず返してきた。私は大きなため息を吐き、扉の方に歩きながら言った。
「事態を収拾してくれそうな者に連絡を取る」
「え…この事態をどうにか出来る人が居るんですか?」
私は振り返って口角を上げ、
「居るんだよ。世の中には考え付かないような難題を簡単に解決してしまうやつらがね」
そう言い残し、息苦しい宰相室から廊下に出た。
それだけで重苦しい空気が少し軽くなった。
何も解決していない。
それでも第三王子を推したあの人物なら協力をしてくれる確信があった。
私はその確信を胸に、赤い絨毯の敷かれた廊下を教会へ向けて歩き出した。
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