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安全第一異世界生活  作者: 笑田
番外編・それぞれの日々2

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310話 閑話 黒いモジャモジャとハワワワ

ネズミは言った。


『もっとひっそりとした人の居ないところに行くわ』と


蝙蝠は言った。


『明るい所はムリムリ』


そうして、みんなとは離れ離れになったでやんす。


ちょっと寂しい。


いや…結構寂しい―――でやんす。


だって…住処がなくなったあっしは、行く宛てもなく、いまだ黒いモジャモジャの頭の上に居る。


たまにそこに白い綿毛の様な奴が来る。

たんぽぽの綿毛のようで、ふわふわで触りたくなる。


『ハワワ…ハワ!!……ハワァ…』


っと、あっしに分からない言葉で話し、直ぐにプルプル震える。


その不思議な生き物があまりに震えるものだから、綿毛が来るときは、あっしの羽で包み込んでやる。


そうすると綿毛はスリっとそのふわふわな毛をあっしの羽に預けスースーと寝てしまう。

なんか兄貴にでもなった気分でやんす。


あっしがたまに、モジャモジャから飛び降りてトカゲを取ったりして食べていると、綿毛が近寄ってくるから、欲しいのかと思い、分けてやろうとするんでやんすが、

喰いかけのトカゲを見て一目散におびえたようにモジャモジャに戻っていくんでやんす。


食事を終えて毛づくろいをしていると、恐る恐る近くにやってくる綿毛。


こういう時は羽で包んで欲しいのだと分かった。

両翼を広げると、嬉しそうに飛び込んでくる。


甘えん坊な、弟分でやんす。


その姿を見るたびに胸がホカホカと温かくなる。

これがあっしの最近の日常。


―――――


モジャモジャの頭の上から声がする。

今日も今日とて、綿毛を抱えそのまま寝ているあっしでやんす。


「コー。お前、頭で何飼ってんだ?」


眠いので目は閉じたまま綿毛のぬくもりを享受していると


「あぁ、砦で拾った”宿なし”だ」


その言葉であっしの事を話しているのだと分かった。

”宿なし”そう呼ばれていることを初めて知った。

”宿なし”とはその通りだが何か寂しい…

それでも、まぁ――いいかとそのまま目を閉じて声に耳を傾けていると、


「最近ハワワがこっち来ないと思ったら」


「どうした?」


「宿なしがハワワの宿になってるな。羽で囲っている」


その声に、その意味にあっしは驚愕した。

綿毛はモジャモジャの仲間たちに”ハワワ”と呼ばれていたことに。

ハワワは先住民であったでやんすか…あっしが実は弟分だったとは…


軽く落ち込んでいると、上から優しい声が続く。


「ははは、可愛いなこいつら」


「見えない…」


「頭の上だしな―――そうだそうだ」


モジャモジャの頭の上から話していた気配が少し遠ざかり、また戻って来た。

少しして”パシャリ”と、何かの音がした。


「ちょっと待ってろよ」


楽しそうな声。


「ほら。見てみろ可愛く撮れてる」


「おぉ…なんとかわいい」


「―――だろ」


聞こえてくる声はとても楽しそうで―――居心地は悪くないでやんす。

心地よい声に耳を傾けながらまどろむさなか


「ただ”宿なし”なんてのは名前じゃねーだろ」


その声にピクリと身体が揺れる。


「…そうか。じゃあ何がいいだろ?」


声の人物たちはうーん、うーんと、うなりながらようやく出てきた名前の候補を挙げる。


「縁…なんてのはどうだ?」


「縁?誰かと誰かを繋ぐには縁があればだろ。

”宿なし”も縁があってコーの頭の上に居る」


「縁か―――」


「何の話をしているの?」


二つの声に、最近よく聞く、少し高い子供の声が入って来た。

高い声のわりに、落ち着いたしゃべり方をする子供だと感じた事があった。

その子供に、一人が説明を始めた。


「あぁ…このフクロウに名前つけるなら何が良いかなって話していたんだ。」


「それで縁か…かわいいね~」


子供の視線を感じつつ、自分の名前が何になるのかそわそわしていると、高い声が何か考えながらゆっくり不思議な言葉を言った。


「私が居た世界だと”縁”と書いてヨスガって呼ぶよ。どう?」


『私が居た世界』とよくわからない事を言いながら出してくれた名前の候補。


”ヨスガ”


「あぁ。いいな”ヨスガ”良い名だな」


そうしてあっしの名前が決まった。

ただの名無しだったあっしが、”宿なし”になって”ヨスガ”になった。


胸が温かくなった。


胸元に抱えているハワワにスリスリ頬擦りをして、温かな気持ちのままもう一度眠りに落ちた。


――――


「ヨスガご飯のネズミ捕まえて来たぞ」


「ハワワがすっかりヨスガに懐いているね――」


「ヨスガ夜の散歩に行くか?」


いつの間にかあっしは”ヨスガ”と普通にモジャモジャの仲間たちに呼ばれるようになったでやんす。


そして相変わらずあっしの後を追いかけてすり寄るハワワ。


「あっしが兄貴分で良いんでやんすか?」


「ハワワ~」


「そっすか…あっしそろそろ飯を取りに行ってくるでやんす。」


「ハワ~」


見送るように返事をするハワワを横目に、あっしは飯の為に獲物を狩りに行くでやんす。


モジャモジャから飛び立ち近くの木に留まり獲物を探す。

さわさわと枯葉が舞う。もうそろそろ冬が来るのか…

今年は寒くて凍えることは無い気がした。


そんな事を考えているとガサリといつもは慎重なネズミが大きな音を立てて草むらから出てきている。


きらん!ターゲットをロックオンしたあっしは、ネズミに向かって一気に方を付けようと飛び出し!!角度が変わって初めて気づいた。


それはネズミじゃなくて、死んだネズミを食っている狐だと気づいた!


アワワワワワワワァァァァーー!!!!


急には止まれないでやーんーすーー!


あっしは、そのまま狐にぶつかり、身体に当たってきたあっしの事を狐は前足で押さえつけ、クンクンと嗅がれてしまった―――


あわわわわ!!絶体絶命でやんす!


もう喰われると思った瞬間、


はわわ~

はわ~


空に響いたのは聞きなれた頼りなく、場にそぐわない声


来たらダメでやんす!

喰いかけのトカゲも見れない弟分じゃ何もできない!逃げるでやんす!!


あっしは顔を上げたそこにはフヨン、フヨンと転がってくるハワワがいた。

ころりんと転がるといつもの大きさから一回り大きくなった。

ころりん、ころりん、ころころりん!


転がるたびにハワワがドンと大きくなる。


リンゴサイズくらいになったかと思うとさらに一回り。


さらにさらにと大きくなり、あっしを押さえつけていた狐へと、そのまま転がり込んできた。


狐はよくわからない生き物に狼狽して、あっしを放置して逃げて行った……


助かった……。

 ほんとに、助かったでやんす……。


あっしのほうに転がって来たハワワは体格のわりにとても軽く

あぁ大きさだけが大きくなったと感じた。


何となく怒っていると感じる顔つきのハワワは、

狐が逃げたのを確認してから、身体の空気を抜くように大声で


「ハワアワワワワーーーーー!!!」と叫びみるみる小さくなった…


いつもの半分ほどの大きさになってしまったハワワはそのままフウシュ―っと空気が抜けたボールみたいにしぼんでしまった


「ハワ~」


あっしは急いで羽でハワワを包み込んだ。

ハワワはすりすりとあっしの羽にふわふわな毛を擦りつけて安心したように眠ってしまった。


助けてくれて安堵したが…草原でハワワを抱えて飛ぶことも出来ず、この状態でどうしようと困惑していると、


たたた、誰かの足音が聞こえてくる

この足音は、モジャモジャだ!


ガサリと目の前の草が揺れてモジャモジャの顔が現れた。

やはりモジャモジャであった。


「ハハハ森でそんな警戒心なく転がってると、喰われてしまうぞ?」


そういってモジャモジャはいつものようにあっしたちを頭の上にのせてそのまま帰路へと脚を進めた。


モジャモジャの頭の上で揺られながら、

ネズミと、蝙蝠と別れた時の寂しさを思い出す。


今はもう寂しくない―――


あっしの羽の中で安心したように眠る、ふわふわな綿毛のような不思議な生物ハワワ――


その柔らかさと体温を感じ

この時間がとても、とても温かく大切なものに感じられた。


あっしの今の住処はモジャモジャの頭の上

存外それがとても幸せだと、ハワワを抱きしめて感じるでやんす。


読んで頂きありがとうございます(❁´ω`❁)

イイネ♥をぽちっとしていただくと私のモチベが上がるのでよかったらお願いします✿

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