308話 閑話 ブラスいつの間にか転職してた。
はぁ…
またため息。
窓の外を眺めながら物思いにふける公子。
今後セリーヌ公国を背負っていくお立場ですが…最近かなり物思いにふけっている。
どこかアンニュイな空気をまとった公子
仕事しましょうよ。
あぁ…すみません。お前誰だよって思いますよね。
私はクズハレス男爵家で護衛騎士をしていたブラスと申します。
あの事件でディディー様と言い合いする姿とか見られてしまい――
大公閣下に気に入られまして…あれよあれよと気が付けば、
大公家の大公御子息ディディエ・ド・セリーヌ様の側近兼騎士をしています。
人生分からないものですね―――。
ホワイトな職場万歳!
さて、護衛対象のディディー様は大変に分かりやすい人でして―――
ミハイル様方が帰国されてからずっとこの様なのですよ。
ええ。
本当に分かりやすい。
婚約者であったクレイ嬢にはあまりご興味が無かったのかどうなのか…
まぁ妹君にそそのかされて浮気して婚約破棄をしたら
その妹君は公子の側近たち全員と関係を持っていたとか。最悪ですね――
そして自分が婚約破棄を突き付けたクレイ嬢が消えた事で
責任と、後悔を抱えている時に
ご自分と同じような綺麗な赤髪の少女イル嬢と出会って―――
ときめいちゃったんですよね―――
コロっといっちゃったんですよね
でもイル嬢10歳…だったんですよ。
しかも貴族子息。
そう男の子だったんですよ。あの可憐さで、男の子!
世の中って不思議で溢れていますよね――――
さすがに無理がありすぎますよディディー様あきらめましょう。
「公子、手が止まっております」
10分、動きが無いので一言声掛けをしておきます。
ボーっとしていたディディー様は困った顔をして、
「あぁ…すまない。少し休憩するよ」
席を立ち少し体を解す仕草をして窓の外を見て、またため息を漏らす。
私はお茶をメイドにお願いしてから追加で届いた仕事を振り分けながら、ディディー様に言葉をかけた。
「イル嬢が男の子だったのそんなにショックだったんですか?」
「……」
何も言わずに固まるディディー様。うん。図星だったようだ。
もう会う事はほぼないと思うのですが…
「しかもあの馬の神獣様の愛し子だったんですよねミハイル様」
無言のまま肩を跳ね…あからさまに落ち込む背中に、私は笑いが出てしまいます。
「帰っちゃいましたね―――」
「おまえマジ鬼―――」
「ディディー様、女性運無いんでしょうね~」
目の前のテーブルに茶器が置かれ、メイドにお礼を言って下がってもらう。
「私の雑談ですがね―
ピンク色って実は色自体に魅了の能力があるって知ってましたか?」
「は?なんだそれ?」
「優しく包み込むように侵食する庇護欲。それがピンク色―――
ピンク色のドレスと黒いドレス着ている令嬢どちらを守ってあげたい?」
「……」
「彼女は策士でしたよね。
自分の使い方をよくご存じだった」
「フェリシア…」
「凄く強烈な最後でしたから。仕方ありません」
「そして赤は情熱・苛烈、燃えるようなひきつけられる色。
そう言う意味ではディディー様も、婚約破棄事件前までは、ご令嬢方に大変おモテになったでしょう?」
「嫌味かお前は…」
「嫌味です」
「イル嬢はそういう意味で惹きつけられたんでしょうね。
一生懸命に全力だった方ですから」
「そうだな…」
「諦めてください」
「お前…ホント鬼だよな」
「お目付け役として、おりますので」
「はいはい」
「お仕事しましょうね」
「あと5分休ませて」
「しょうがありませんね―――
次は誰かに惚れた、ときめいたなど、きゅんとしたら教えてください。」
「……」
「全力でからかいますから」
「俺の側近が鬼すぎる」
ディディー様を見ていてホッとします。
この方周りに流されますが、元は悪くないんですよ。
あの湖の事件で仕えていた、クズハレス男爵家が潰れてくれて実はホッとしています。
あの家はおかしかった。
旦那様も
ご子息も
見た目は立派でも、中身はどうしようもなかった。
心根が腐っていた。
そのクズハレス家で一番異質だったあの執事。
今思えば…あの執事は魔族だったのでは。
――――なんて思うんですよ
あの男の声なのか視線なのか…逆らえない何かがあった
目が合うと、思考が止まるような感覚があった
それが何なのか、今も分からないけれど
いつも首筋にあった突き付けられている刃物が消えた、息がしやすくなった
正直男爵家が潰れてホッとしている自分がいる。
「ブラス仕事したくない――」
「子供ですか。そうですか。
ディディー様大人の階段上った時点で大人です。階段上っちゃったご自身を恨んでください」
「お前!マジ最悪――」
「おほめ頂き光栄です」
「褒めてないわ!」
今日もディディー様の怒鳴り声が執務室に響く。
我が職場今日も平和である。
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