300話 解決への構成(前半:クロト・後半:大公視点)
俺は頭の中で戦力を並べ替えながら、
「湖の淀みは思ったより蓄積されているから、湖の浄化はミホ頼むな」
「アタシ一人だと時間かかるよ?」
俺の言葉にこちらを意味深な笑みで見てくるミホに苦笑して、
「助手を”あの子”に頼むから大丈夫だ。」
”あの子”が誰の事か分かったミホは、胸を張って
「それなら大丈夫。任せて!」
と断言してくる。頼もしい。
「護衛に、旦那の山田は必須――となると、
あと子供達もカイナールと一緒に居た方が良いな。
イルとグレードにカナメとイリーナは湖担当だな」
「はい」
「分かった」
次々に返事が返ってくる。旦那と一緒が嬉しいのかミホは俺に親指を立てて、にこやかに笑う。俺は苦笑しながら肩をすくめた。
次はササに視線を向け問いかける。
「国に設置された魔族のアジトはすでに分かってんだろ、ササ」
「ご明察!ヴィーチェがしっかり調べてくれたよ」
そう返事をして、ウィンクするササ。周りはその姿を見て顔を赤らめる。
―――ガルーダがやきもち焼くからそういうのやめろ。マジやめろ。
「まず公国を囲むグレンファルト山とセレノア山はワイバーンの生息に適さないので却下。そうなると砦は魔の森の中となる。
当たりをつけて、私の契約精霊のヴィーチェに探してもらったら見つかったよ」
上空から写した映像石の映像を壁に映していく。
映し出されたのは崖。そこにいくつかの光が揺らめいている
「魔の森の奥の崖に大掛かりな砦が作られていて、
流石に中は詳しくは見えなかったけど、魔獣や魔族、魔人が結構な人数いるみたい」
「砦の奥に妖精が結構捕まっているって情報をもらったから。襲撃の際には解放をお願い。」
俺は大きく頷いて了承した。そうして拠点崩しのメンバーの名前を上げていく。
「了解だ。拠点崩し、俺とササとガルーダで良いか?」
俺の言葉に、ビックリしたのか、大公が立ち上がって反論してきた。
「待ってくれ!魔族との対峙にそんな人数でどうするのだ!」
その声に続くようにササが注意をしてきた。
「もー、クロちゃん、黄昏様の事忘れたら頭齧られるよ?」
「あ――、そういえば…コーも連れて行かないと怒られるな…」
じゃあもう2体増える感じか。十分な戦力だと、納得しながら頷いていると、
大公は困惑しながら、「黄昏様?コー?誰だいそれは?」小さくつぶやいて、
再度こちらに人員不足を指摘してくる。
「いや二人増えたとて、戦力補給には足りないだろう?」
その言葉にササがさらっと事実を伝える。
「神獣様と5大龍の一角だから十分じゃないかな?」
「は?」「!?」
室内のセリーヌ公国の人間は、変な声を出したあと沈黙してこちらを凝視してくる。
「あと火口に行ったって事は火龍とも合流したんじゃないの?」
「「「!!!」」」
その言葉に完全にセリーヌ公国のメンバーは驚愕に目を見張った。
俺もその言葉に慌てた。
「あ―――――忘れてた。
コーが火龍と喧嘩始めたからあっちに入れっぱなしだったんだ。
ごめんちょっと迎えに行ってくるわ」
俺は目の前に黒い霧を扉の様に出現させそう伝える。
室内から音が消えたのを不思議に思いながら、
「はーい」
ササの返事を聞きながらそのままそこに入って行った。
いつもの事なので気にも留めていなかったが、
室内に居る俺のスキルを知らない人間は皆絶句していたと後からササに聞いて笑ってしまった。
―――――
◆(大公視点)
「ササ殿…彼はいったいどこに…」
目の前で消えた彼について、ササ殿に聞いてみると、彼はにこやかに、
「すぐ戻ってきます」
その顔にはこれ以上聞くなら本人に聞けと言わんばかりの圧のこもった笑顔だった。だから…話題を別の視点に変えて質問しなおした。
「――そうか…あとその神獣と5大龍とは?」
この質問は大丈夫だったようで、少し考えてから右手の人差し指を一本立てて、首をコテンと倒して逆に質問してきた。
「神獣様は最近噂に聞きませんか?
オーラシアン王国の次代の王が神獣スレイプニルの庇護を受けているって?」
それを聞き、確か昨年の春のオーラシアン王国のパーティーでの噂を思い出し答えると、
「あぁ…そういえば立太子の時に現れたそうだね」
私の返事に頷くと、
「実はストーティオン子息。」
「?」
一拍置いて立てていた人差し指を左右に振りながら彼は、またもや爆弾を落とした。
「その神獣の愛し子なんですよ」
「!?」
なっ…なんだって!
あの可憐なあの彼が…”神獣の愛し子”
我が国の国民のせいで愛し子が害されていたら
そう考えただけでぞわぞわと悪寒が這い上がってきた。
我が国あと一歩で滅んでいたのではないか…
ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ……
「今回はるばる彼を迎えに来て、魔族を見つけたので、今は偵察してくれてます」
偵察?神獣が?
こちらの言葉を理解しているような言い方…
「そんな、もしかして……意思の疎通ができるのか…?」
私の言葉に「え?」と不思議そうな顔をしたササ殿は、自分の真上に何やら話しかけたと思ったら、室内を見回して、一人の鎧の違う騎士に話しかけた。
「あなたは大丈夫なようだ。じゃあ任せます」
意味が分からず困惑していると、
「神獣様との意思疎通は、ストーティオン子息も出来ますが、そちらにいる、ミホさんと山田さんも話せますよ。もちろん私とガルーダも」
「そ…れは…」
それはそんな簡単な言葉じゃ言い表せない凄い事ではないのか?
そう困惑しているうちに、先ほどの騎士が私の前に連れられてきていた。
「猫くん、少しだけ姿を皆に見える様にしてください」
その言葉の後、目の前に来た騎士の肩に青海色の髪を持つ、騎士の腕くらいの大きさの少年が座っていた。
少年の目はこちらを憎しみがこもった目で睨みつけていていたたまれない。
「魔の森は普通の騎士では対応が後手に回ります。
大公様方には別の事をお願いします」
別の事?とはなんだ?
「この国に詳しいこの子、上級妖精の猫田君です。
彼に調べてもらい、誘拐された子が集められている場所が分かりました。
城下町の方にあるさびれた酒場の地下に魔力の高い子供たちがいます。
その子達の保護と安全確保。それと関与した貴族たち人間の対処をお願いします」
そう言って彼は私にマジックバックを渡してきた。
「この中は?」
「隠れ家にあった書類や記録媒体、契約書の類です。
ある程度の証拠物は確保してこの中にありますので、有効にご活用ください」
「…ああ…助かる」
「猫くんは基本人間に姿を見せません。なので彼の言葉はこの騎士さんが聞いて伝えますのでお願いします」
「猫くんも事件解決までお願いね」
妖精に語り掛けると、妖精はコクリと頷き視界から消えた。
「まだお主の肩に居るのか?」
騎士に尋ねると「はい」と返事が返ってきた。
そんなやり取りを見ていたガルーダ氏がササ殿の肩をグイっと抱き寄せ自分に寄せて、
「俺たちが、魔族や魔物は対応するさ」
頼もしいセリフを言ってくる。
「駄狼は暴れたいだけでしょ?」
それに呆れた様子でササ殿が返していると、ふいに室内にクロトの声が戻ってきた。
「待たせた」
そう言って黒い壁の前に戻って来た彼は片手に首根っこを掴まれてジタバタ動く黒髪の幼児を捕まえ、反対の手には首にぐるりと腕を回し締め付けて捕まえている、赤髪の青年が暴れていた。
「ずっと喧嘩してたんだぞこいつら」
そう言いながらクロトの顔は少しげっそりとしている。そして腕からは、
「クロト――!離せまだ殴りたらん!」
「黒いの、お前マジ何なんだよ!!」
「喧嘩はいったん中止だ!イルを攫った奴らのアジトが割れたが一緒に行くか?」
その声を聞いた途端、黒い幼児の動きがピタリと止まる。
そして目をギラリと光らせて「イル…イル…カナメの兄ちゃん…そうか」ちいさな声で呟くと、
「行く!」
そう言ったと思うと、全身から黒い魔力が視覚出来るくらい溢れてきた。
「カナメを不安にさせた奴らだろ。ぶちのめしてやる!」
そう言いながらぞっとするような、不敵な笑いを浮かべる幼児に部屋にいる公国の人間は冷や汗をかいた。
そうすると、反対の手で捕まっていた青年は手を上げて主張してきた。
「よくわからんが良いな!
起き抜けに理不尽な目にあったからな!暴れてぇ!
俺も行くぜ!燃やし尽くしてやるぜ!!」
物騒な言葉に違う意味でドン引きした我らだが、ハタと気づいた一人が小さな声で呟いた。
「黒…と赤…まるで…」
私は全身から冷や汗が流れる。
まさかいや…そんな…
まさか―――
恐る恐る尋ねてみると
「…この者達は?」
私の質問に、疲れた顔のクロトが黒い幼児を抱き上げて
「こっちの黒い小さいのが黒龍。
こっちの真っ赤な髪の兄ちゃんが火龍だ!」
そう告げた。
私を含め公国の人間は白目をむいて倒れたくなったことは言うまでもない。
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