299話 事件の真相 (クロト視点)
室内では皆俺を見て固まっていた。
あれ?魔力出し過ぎたか?纏わせただけなんだが―――
微妙な雰囲気に俺は嘆息した。
「なんだ?お前らやんねーのか?俺は行くけど」
俺の言葉に呆れ顔のササが大きなため息を吐いた。
そして軽く手を振りながらダメ出しをしてくる。
「はやい。早いから。
後、説明足りないよ。クロちゃん」
「これ以上の説明要るか?めんどくせーから俺が動けばいいだろ。
―――ある程度は片付く」
俺の言葉にセリーヌ公国の人間たちはあっけに取られているようで、室内の空気は相変わらず固かった。
どうしろというんだ?もう行って良いか?投げやりに踵を返すと、ササが思いっきり手にしがみついた。
「クロちゃん。私たちの分、残してくれないと怒るよ。
かわいい孫たちを傷つけられたのだから、私達も怒ってるんだよ!」
頬を膨らませブーブー文句を言うササに呆れながら、
「孫じゃねー。まったく…しょうがねーな――
めんどくせーけど、さっきまでの事件の概要じゃなく、真相に気づいた奴いるか?」
色々と下調べしてくれてたササの意見を聞いて、室内に居る皆に声を掛けた。
すると、今まで固まってまったく動きがなかったが、ようやく大公がおずおずと発言した。
「すまない…真相とは?
君には事件の真相が見えているのか?」
「俺だけじゃねーよ。なぁササ」
俺は知りえたことは全部報告したのに、まだわかってないのか?
マジか…これだけ情報が揃っているし、何人か真相に気づいてると思ったんだがな――俺が大きなため息を吐いたのを見てササが手を上げた。
「じゃあこれは私が説明を担当しましょう!」
その言葉に俺はすかさず頷いて数歩横によけた。
ササはそれを確認すると黒い壁の中心に立って説明を始めた。
「まずクロちゃんから火口の中にあった魔法陣の図の提出があったでしょ。
この魔法陣を鑑定すると、魔力上昇の効果だったんだ」
俺の書き出した魔法陣の図解の用紙を持ってそう言った。
室内の何人かは魔法陣の図解に真剣に目を向けていた。
「これが火龍のねぐらに設置されていたって事は、火龍の漏れ出る魔力量が通常よりも多く流れていたって事になる」
室内の空気がザワリと揺れる。
信じられない言葉を聞いたと、ササを凝視する者が多数いる。
あんまり凝視してるとガルーダがやきもち焼くから気をつけろ。
そんな事を思いながら、追加の情報を出す。
「風化具合から設置されてから数十年は経っていると思うぞ」
「数十年前とは…前の愛し子の頃からなのか…では彼女が早くに亡くなられたのは力の使い過ぎだったのか…」
大公は初めて気づいたその事実に顔面蒼白になっている。
ササの説明は続いていく。
「これで湖の浄化が上手く行かなかった理由が分かったと思う」
「でも愛し子はそれを浄化できてた―――」
セリーヌ公国の、服装からして文官らしい人物が声を上げたが、それは山田の声で上書きされた。山田は口元に拳を当てて眉間に皺をよせ語る。
「魔法陣を設置した奴からしたら”愛し子”って存在は邪魔だっただろうね」
その言葉の後を追うようにガルーダも口を挟む。
「愚かにも愛し子の家に、魅了が使える義妹を入れた当主は愚かだったろうな」
「主犯からしたら義妹はさぞ良い”駒”だったろうよ」
俺の言葉で、ようやく大公や、その息子、幾人かの騎士と文官は顔を上げた。
大公は震える声で真相を聞いてきた。
「まさか…陣を設置したのは―――」
一拍置いて静かな声でササが告げる。
「魔族だよ」
その一言で室内の皆が言葉を失い、空気が凍りついた。
その空気を無視し俺が指を3本前に出して話を進める。
「奴らの動きは簡単だ。人攫いは食料の確保にもつながるし、金にもなる。
そしてそれを買った者達の弱みになる」
一言いうごとに指を折り曲げていくその仕草に公国の人間たちは顔を青くしていく。
その姿をみて最後にグレードが、吐き捨てる様に言った。
「貴族の弱みを握って裏からこの国を崩しにかかっていたんだろ」
その言葉にオーラシアンから来たメンバーは皆うなずき同意を示し、
反対にセリーヌ公国の人間たちは皆頭を抱えている状態である。
それを横目に最後の言葉をササが発言する。
「それには、この国を繁栄させている精霊王は邪魔」
ミホがなるほどと納得を示した。
「妖精達が言っていた滅びゆく国…ってそう言う事だったんだ」
その言葉で事件の真相の解説は終わりを告げた。
セリーヌ公国の騎士の一人が顔面蒼白なまま叫ぶ。
「魔族相手なんて…私たちはどうすればいいんだ!」
そのセリフに呆れたのは俺だけじゃない。
セリーヌ公国の人間も騎士に呆れた視線を向けていた。
「その剣は飾りか?」
ガルーダが馬鹿にしたように騎士を睨みつける。
その視線にひるんだ騎士。
「守る者の為に、戦うしかないだろ?騎士なめんなよ」
まだ少年のグレードが立ち上がりそう言い切った。
うん。こいつ見込みあるな。
「――面白い。少しは鍛え甲斐がありそうだな」
俺がぼそりと告げる。
その瞬間、ガルーダと目が合った。
あいつも同じ事を考えてやがる。
―――俺たちはニヤリと笑った。
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