298話 事件の概要(前半:クロト・後半:大公視点)
今回区切るとおかしくなりそうだったので少し長いです。
よろしくお願いします。(*- -)(*_ _)ペコリ
◆(クロト視点)
スースーと可愛い寝息だけが静かな部屋に聞こえてくる。
俺は二人の頭を撫でるとベッドから降り、
二人の事をウハハに任せて部屋を出た。
公城の一室から出てきた俺に、声を掛けてきたのはササだった。
「イル君とカナメちゃん寝た?」
眉を寄せ心配げに二人の事を聞いてくるササ。ササ達にもずいぶん気を揉ませていたようだ。
俺は、出来るだけ落ち着いた声で返事をする。
「ああ。心配かけた。二人とも仲良く手を繋いで寝てる。
イルも無理をしていたんだろうな。カナメと手を繋いですぐに目を閉じたよ。」
俺の言葉に息を吐き胸を撫で下ろすササ。
「カナメも何も言わなかったが、眠りがずっと浅かったんだろうな。」
「あの子は本当に強い子だね」
その言葉に俺は小さな笑みをこぼす。
「今はウハハが結界で覆っているから、何人たりとも手出しは出来ない。問題ない」
あの子達は強い子だ。
それでも―――うちの子達を傷つけた。絶対思い知らせてやる。
「そっか。じゃあ始めようか」
ササの目が細められ紡いだ言葉で空気が締まる。
いつもササの側に居る光の精霊の姿が見えない事に気づき、俺は聞いた。
「お前、こっち来てからヴィーチェとは別行動か――」
ササは一層の笑みを深めた。
その無言の返事に、俺も口元に弧を描き前を向く。
「おう。しっかりお礼をしないとな」
まだ見ぬ敵へと殺意を込めて、城の廊下を進んで行った。
ーーーーーー
◆(大公視点)
皆が集う会議室に遅れて入って来た男は、
背がひょろりと高く、髪が爆発したような頭をしていて、黒い眼鏡をかけた、黒ずくめの男。
見た目だけなら、まったく強そうには見えない。
だが――。
禍々しい黒い魔力を纏い、空気を一気に重くする。
息が詰まるような圧を放っていた。
男と一緒に入って来たのはエルフの冒険者のササ殿。
ササ殿の紹介の仕方も異様であった。
「イル君の保護者の”黒烏の暗殺者”クロト君でーす」
この空気の重さを壊しそうな勢いで軽く紹介されたが、内容が物騒! 暗殺者ってなんだ!
「ササ…」
たった一言の低い声が室内に広がり、室内の皆が息をのむ。
―――が、その声も、圧もS級冒険者のガルーダの声で霧散する。
「怒るな。怒るな。
こいつは俺の弟子だから人格は別として、身分は保証するぞ」
「……そうか」
ガルーダ氏は軽く言うが、人格は別とは…どういう事なんだ…冷や汗をかきながら、黒い彼と視線が合い、
「なんだ?」
そう聞かれたので…人格…いや気になる事を聞いてみた。
「物騒な名を持っているなと思ってな」
私の質問に納得がいったのか、頭を掻きながら、あらぬ方向を見て返事をくれた。
「若気の至りで盗賊、山賊を一掃してたらついた名前だ。気にするな」
気になる!気になるが…い、今は置いておこう。
でないと話が進まない。
「そうか…。コホン
さて今回のいろいろ起きている事件をまず確認しよう」
私がそう言葉を発すると、部屋の壁の一面が真っ暗に染まった。
室内に居た我が部下たちはビクッと身体を揺らしたが、オーラシアンからの客人たちは一瞥してその壁に視線を向けた。
そうしてその壁の前に先ほどの黒い男、クロトが立ち話し始める。
「まず第一に、オーラシアン王国では最近になってワイバーンによる誘拐が起こっている。
そして誘拐された人間がココ、セリーヌ公国に集められている」
クロトが発した言葉をササ殿が黒い壁に書いていく。
カツカツという堅い音が文字をつづりながら、部屋に響いていく。
「イルや他の子供たちの証言からも、ワイバーンによる人攫いの拠点がこの国にあるのは、間違いはない」
断言された言葉に、私はテーブルに置いていた手を強く握りしめた。
ここに拠点があると言う事は―――需要があると言う事だ。
需要、それは…
「貴族が大金をはたいて子供を買ってるみたいだな。」
クロトは私を一瞥してそう言い切った。
「この国の今の政策ではそうなってもおかしくない状況だ。」
「ああ…」
はっきり告げられた事実に、私は悔しくも現実を受け止めるしかない。
「第二に、魔物の増加。」
次の疑問点を提言した後、その後を引き継ぐようにササ殿が言葉を紡ぐ。
「オーラシアン王国の魔の森から出てくる魔物の量とレベルが上がっています。
少し前に災害級のクリムゾンボアが出現しました。」
私達はもう言葉も出ない…災害級…それは国を揺るがす大災害になる事だ―――
「すでにガルーダによって討伐済みではありますが、
やはり討伐難易度が上がってきているのは否めません。
そしてどれも、この国のある方向の森からの出現率が多いのです」
「討伐したと…」
私は小さな声で言葉を漏らすと、聞こえたのかガルーダ氏が親指を上げてグッジョブのポーズをする。
なんと…変わった御仁ではあるが、勇ましい事だ…
「第三に、妖精の流出」
次々に上げられていく問題に私は面食らう…この出来事がすべて我が国のせいだというのか?
そう思っていると、聖女の弟子の娘が席を立ち発言を始めた。
「この国から逃げてオーラシアン王国に妖精が移って居る事を、この国の人たちは知っていますか?」
ザワリと部屋の中の空気が揺れる。
どうしてこの国から来たと分かるのか…そう思っていると、
「私たちが出会った妖精がこの国から逃げて来たと。
愛し子を害したこの国は、亡びる国だと言っていました」
ガタン!とイスが倒れ、顔面蒼白の息子が立ち上がった。
「それは…私のせいだ…」
胸元を押えた息子のディーは自分の犯した罪に潰されそうになっている…
ディーの言葉をうけて、「なるほど」そう一言漏らすと、次に手を軽く上げている山田を促した。
山田は席を立ち一礼すると、
「僕たちはこの国に入る時、いくつかの方法を採りました。」
そう話はじめた。
「まず表からの入国を僕たちが。
空から飛竜に乗っての入国をクロトさん達が。
貴族が使っている裏の入国をガルーダさん達が使って入国しました」
「裏だと…」
「僕とミホ、グレード君で、冒険者ギルドの依頼を受け、関所を通り、通常の入国をしました。
でも依頼書にあった場所に行くと、薬の入ったお茶を出され、
飲まずにいたら、浄化が出来る人間を捕らえようとしてきました」
―――どういう事だ?
冒険者ギルド依頼受付で不正があったと言う事か…それとも依頼者が裏の組織的な何かだったのか…
そう思案していると、
「ボーガン・コンラーテ。コンラーテ侯爵家の人間だと、彼は名乗りました」
ボーガン…コンラーテ…確かコンラーテ侯爵家の嫡男…
「俺や山田さんの事は、殺しても良いって言っていたぜ」
ミヤノマエ子息はそう言って、ニヤリと不敵に笑った。
他国の公爵家の子息を殺すなど戦争になりかねん。
私は背中に汗が伝うのを感じた。
ガルーダ氏とササ殿が、クズハレス男爵の息子を使い裏から入り、金で問題なく入国をした。
ササ殿からニコリと笑顔の圧付きで犯罪の温床なので、早めの対応をするようにと苦言を呈された。
「早急に対処しよう」そう言って、この部屋に入って何度目かの、大きなため息をついた。
次にクロトが指摘したのは湖の件。
「ミホが浄化した湖は
愛し子が浄化し続けて居た頃は綺麗な状態を保っていた。
水質が酷くなったのが、愛し子が居なくなってからだとか。間違いないか?」
質問の様で質問ではない言葉に私は神妙にうなずく。「ああ、そうだ」
「クズハレス男爵家に養女にされていた、カミラの姉。イリーナの話では、浄化のために男爵家に買われたが、表向きは養女とされていた事。
地下牢があり、何人かの子供がそこに居たという証言もある。
子供たちの世話は下女が行い、家令の爺が管理していたそうだ」
「イリーナ嬢の浄化は他の者に比べとても範囲が広かった。彼女にはだいぶ助けられていた」
ディーは彼女の事をテーブルの上に組んだ手を握り締めて話す。
そして悔しそうに言葉を続けた。
「なのに、少ししたら湖の状態はまた悪化していくんだ…」
苦しそうに言葉を紡ぐ息子に、クロトは冷めた視線を向け問いかけた。
「そこでおかしいとは思わないか?」
「おかしい…とは」
クロトの質問の意味が解らず、顔を上げた息子は言葉を繰り返す。
そんな息子の様子に呆れた顔をして、質問を変える。
「なぜ最近浄化しても水が汚れていくのか」
「…それは…浄化を担当していた愛し子を失ったから…」
「それが大元の原因。
そこは間違いないが、
―――だが、それだけじゃない」
息子に指を突き付け宣言する彼に、息子は不安げに考えながら彼の言葉を待つ。
「…ほかに…何があると…」
「大いにあるんだよ。
愚か者たちが考えるシナリオが裏で動いて居たんだ。」
「シナリオ…」
クロトは拳を目の前に出し握り込む。
その手にまとわりつく黒の魔力に、室内に居た者達が皆息を呑む
そうして――
はっきりと、彼は言った。
「さあ、その糞なシナリオを終わらせようぜ」
読んで頂きありがとうございます(❁´ω`❁)
イイネ♥をぽちっとしていただくと私のモチベが上がるのでよかったらお願いします✿




