297話 「再会」④(前半:大公・後半:カナメ視点)
◆(大公視点)
聞きたいことは多くある。
――が、今は何よりも先に黒い霧の正体を明確にしたく、
私は皆に問いかける様にしながらも、ストーティオン子息に視線を合わせ質問をした。
「先程の黒い霧の正体を知っているか?」
私の覚悟を決めた質問に目の前の彼は小さく頷き、嬉しそうに微笑んだ。
「確信はありませんが。たぶんそうだと――」
答えを知っている。そう思いその答えを聞こうとした時、横からも声が入った。
「絶対あれはあいつだな」
あいつ?S級冒険者の仲間か…?
「なんで山の方に居たんだろう?」
いた?火山の中にと言う事か?
……あれは彼らの知り合いが起こした現象と言う事か?
あれは人が成しえた事なのか?あの異常な事を?
私は困惑する思考を押さえつけ、その先を聞こうとした。
―――その時、突然だった。
沈みゆく夕日で染まる空を覆うように大きな影が出来た。
途端、何かの威圧のような―― 空気そのものが押し潰されるような圧が、場を支配した。
その圧と影の正体を確認するため、おそるおそる皆の視線が集まった途端
誰もが息をのんだ。
「飛竜…」
誰かの震えるような声が聞こえてきた…
ワイバーンが国に入っていると言う事でも恐怖を感じていたのに…
我が国に飛竜が…
夕日を受け紫色に染まる飛竜の大きな肢体、悠然と飛ぶ姿に息を呑む。
そんな私の傍から嬉しそうな声がした。
「セルジュ!遅かったな」
ざわつく騎士達をよそにS級冒険者のガルーダは言葉を漏らした。
飛竜は翼をしならせ、空気を抱き込むように滑空し、
そのまま風を制するように一度だけ打ち、静かに少し離れた空いた地へ降りる。
何事もなく地に降りた飛竜を見ていると、
ジャリッと音がした瞬間
ストーティオン子息が、飛竜に向かって駆け出した。
「危ない!」
突然駆け出した子息を止めようと伸ばした手を、白い毛でおおわれた大きな手で止められた。
その腕の持ち主はニッと含んだ笑みを見せた。
その横でエルフが目を細め微笑みながら見守っていた。
「一番のお迎えが来たんです」
「むかえ…」
そう言ったエルフの顔は優しく、その後続いたガルーダ氏の言葉も優しさが含まれていた。
「せっかくの再会だ。
邪魔するのは無粋ってもんだよ」
その言葉を聞き、私は駆けていく彼の背中を見送った。
――――
◆(カナメ視点)
「カナー!トーさん!」
その声が聞こえた瞬間私は、顔を上げた。
視界に、こちらにかけてくるお兄ちゃんが入った途端、
我慢できずに飛び出した。
「お兄ちゃん!」
セルジュ君から落ちる様に飛び出した私を、必死に駆けつけたお兄ちゃんは受け止め、勢いを殺しきれず、そのままクルリと回り、自分を下敷きにするようにして、私を抱え込んだまま倒れた。
お兄ちゃんの腕が、私をしっかりと受け止めて。
その腕が、ぬくもりが、
「カナ。カナ…。」
声が、お兄ちゃんが無事だと教えてくれた。
「会いた…かった…ッ」
私を抱きしめながら言うお兄ちゃんの顔を見ると、その瞳から大粒の涙が溢れていた。
「わっ私も!会いたかった!お兄ちゃんは無事だって信じてた!」
私の瞳からもぽろぽろと涙が溢れ、下敷きにしているお兄ちゃんの赤くてきれいなシャツが私の涙で黒く染まっていく。
「信じてくれて…ありがとう…」
泣きながら笑う姿に喉が痛くて言葉が出ない。
目じりが熱くて…涙が溢れて止まらない…
ずっと不安だった。
お兄ちゃんは大丈夫だと信じていた。
嘘じゃない。
それでも――
心配だった。
「無事で居てくれて、ありがとう。」
泣きながら笑う私を愛おしそうに抱きしめるお兄ちゃん
「大好きだよ。カナ」
縋りついて泣く私と、転んだまま私を抱きしめて涙を流すお兄ちゃん。
そんな私たちの上に影が降りて、そっとお兄ちゃんを私ごと抱えあげた。トーさん。
女の子の憧れのお姫様抱っこに私というコブを付けて。
トーさんがお兄ちゃんにしがみ付く私をみて笑った。
とてもやさしい眼で。
お兄ちゃんの額に自分の額を合わせ、トーさんは聞いた。
「どんな冒険だった?」
トーさんの言葉にお兄ちゃんは涙も鼻水も流しながら
笑顔で答えた
「凄い大冒険。」
「”凄い大冒険”か。
イルの冒険譚を聞くのを楽しみにしてるぞ」
トーさんの言葉が嬉しかったのか、「聞いて!」と話はじめた。
泣きながら自分が経験した事を話す
それを慈しむように聞き入るトーさん。
この時間は――
ただ、愛おしかった。
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