293話 「不穏分子」②
◆(魔人モモ視点)
ガサ、ガサ、ガサ。
木をかき分けて歩いてくる俺にふいに声がかかる。
「モモー、お前よくあいつから逃げられたな」
首筋から青い血を流しながら舌打ちをした俺は、フンと鼻を鳴らすと、木の上に居る青い魔人を睨みつけた。
「もともと幻影を置いて、いつでも逃げられるようにしていたから。余裕だよ」
その言葉を聞いて姿を現した青い魔人は、俺を面白そうに見て、自分の首をトントンと叩いた。
「あれが、モモの余裕ねぇ~」
そう言いながらニヤニヤ笑う。
チッと舌打ちして俺は「うるさいなぁー」と言いそっぽを向いた。
そんな俺に青い魔人は、
「お前あの女のガキ狩りに行くのか?」
そう聞いてきたので、俺は考えて、少し濁して答えた。
「――美味しそうなのは確かなんだけど。めんどくさそうなんだよね~」
チラリと視線を青の魔人に向けて言った、俺の答えがお気に召さなかったのか、ドカリと岩の上に座ると、俺を指さしてきた。
「俺は手伝わねーぞ。あの獣人にどれだけ同胞がやられたか知ってるからな」
その答えに俺は肩をすくめ、口角を上げた。
「フハ。S級冒険者ガルーダって、有名だよなぁー。
でもまぁ~魔族殺しは死神よりは少ないじゃん。
殺れるかな?って」
青い魔人は眉間に皺をよせ馬鹿にするように言う。
「よく言うぜ。あの短い時間で首に傷貰っておいて。
なのに死神なんて恐ろしいこと言うな。
…黒い何かで、魔族の首をフッとばす化け物―――
俺は絶対会いたくねー」
その言葉に、俺は「確かに」と思った。
「ガルーダと別行動する時があればにしようかな~」
俺のセリフに、青い魔人は半眼でこちらを見てニヤニヤ笑いながら、
「あれだけ言っておいて行かないとか、お前性格悪ぅ~」
「狩りの常套手段でしょ」
「別行動するなら手伝っても良いかもな~」
などとこちらを煽るが、流していると…二人の視界に薄青色の空を翔ける淡いピンク色の馬が入った。とっさに木の陰に隠れじっとそれを見やる。
「おい」
「神獣だ」
「バカな、現在地上に降りている神獣など、この国には居ないはずだ!」
「馬だ…スレイプニルであれば…オーラシアン王国にいると噂になっていた奴だ」
「確か今は王家の庇護をしていると公表していたはずだが…」
「なんで…この国に…」
まさかの神獣という大物の登場に俺たちは動揺し、
先ほどまでニヤついていたこの場を、急いで離れる事しかできなかった。
―――――
◆(黄昏視点)
上空から、魔力を探るように意識を落としていく。
すると森の中に、かなり大きな黒い魔力が――やっぱりいた。
あの子に教えて貰えてよかったわぁー。
でも…どうせなら魔族嫌いのあの男も連れて行った方がよさそうよね~
あの脂人間といた、どす黒い魔力の大きなあの男の事もあるし。
はやく迎えに行きましょう~
待っていてねカナカナ~
――――
◆(カナメ視点)
『ヒッヒン』
セルジュの背に乗って飛び立とうとしていた時だ。
上から声が聞こえた。
パカパカパカ
音の方に全員が顔を向ける。すると火口の入口から薄桃色の肢体の馬がかけてくる。
「「神獣!」」
クレイ嬢と猫くんは絶句したが、私たちは違う。
「ターちゃん!」
「黄昏じゃん」
「うはは!!」
ウハハは私のポシェットに化けてターちゃんを避けた。
トーさんはなんでこんなとこいるんだ?とばかりに声を掛け、私は――
「久しぶり―――!!」
とターちゃんの身体に飛びついた。
『カナカナ!こら危ないでしょう。怪我しちゃダメだから降りなさい、ダメよ』
「はい!ターちゃん」
「おいおい、なんでお前がこっちに居るんだ?王太子は良いのかよ?」
『うるさい馬鹿烏。愛しのイルイルに呼ばれたからに決まってるだろ』
ターちゃんのその言葉を聞いて私たちは衝撃を受けた。
二人してよろよろとよろめき、
トーさんは膝をつき、私はぽろぽろ涙が出てきた。
「お兄ちゃん連絡できたのに…私達には連絡なかった…」
「俺たちはそんなに頼りなかったのか…」
「そんなぁーー」
私達の落ち込みぶりに、ターちゃんは慌てて否定した。
『カナカナ泣かないでよ!通信機の魔力範囲が辺境まで届かなかったのよ!』
その言葉に、私達は顔を上げ同時に頷きながら返事をした。
「「なるほど」」
トーさんと一緒にそんな事だろうと思ったと軽口をきいて安堵した。
その様子を見ていたクレイ嬢はアワアワと戸惑い、猫くんには呆れた目を向けられて、さらには大きなため息をつきながら、
『お前ら…コントかよ』という突っ込みを頂きました。
「「真剣です」」とのトーさんとの同時返しに、
猫くんだけではなくターちゃんにまで半眼で見られ納得できない私たちなのである。
ブーブー言っていると、ターちゃんが突然トーさんに近づいて、
『忘れていたわ!おい糞烏』
「お前俺にだけ口悪いのどうにかしろよ」
『お前に取り繕ってどうすんだ糞烏! それより!』
一歩、一歩近づきながら、トーさんに話しかける。
『この国で――すでに3匹も見たぞ』
『お前が大っ嫌いな魔族を』
トーさんの目が見開かれゆらりと揺れ、空気が変わった。
「あぁ……魔族」
いつも抑えられているトーさんの魔力がぶわっと火口内に満たされ、辺りが黒い霧に覆われた。
その中で、トーさんの双眸だけが、黒い霧の中で怪しく光った。
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