99話 バラの育成に邪魔な害虫は駆除致しましょう。
「くっそ!なんで王城に聖騎士が大勢いるんだ!くそっ!栄養も、魔力も今の俺には十分にある。動きも悪くなかったはずだ!なんで羽が消えちまうんだ!!」
ハァハァと荒い息遣いをしながら、黒髪の魔族は必死に考える。ただゾワッと感じた瞬間、羽が消えた不可解な状態が気持ち悪い。どうにかしてこの場から逃げなくては。聖職者の結界で会場は覆われた、今の状況では人質も取れない。普通の人間の動きなどまったく問題はないが、聖騎士の攻撃は当たり所が悪ければ動けなくなる。今は契約者に縛られているので、命令の「自分を護れ」という願いを聞かなくてはいけない。逃げられない!くそっ!
今回の人間との契約は破棄だな。これだけ多くの聖騎士たちに囲まれては俺とディーナじゃ分が悪い。さっさと契約者を殺してもらって契約破棄しなくては。俺たちの悲願。魔王様の復活のために!!
「ディーナ!あいつら放て!」
紺の髪の魔族の女は、聖騎士の攻撃をよけながら
「はーい!わかったわ。ディディ!!」
あいつらが暴れている間に契約者を殺しておさらばしようぜ!そう意気揚々と決め込んだのに、
「あいつらとはこいつらのことか?」
俺の眼前に出てきた男は口の端をニヤリと上げていきなり俺の上に何かを振らせた。俺は降ってきた何かを払いのけようとしたところで、その見慣れた歪な存在に目を向いた。縄でぐるぐる巻きにされ足には魔力封じの枷がつけられた実験体が……8体全部がここに捕縛されている…それを見たディーナは目を剥いてこちらに走ってくる!
「私の可愛い子達が!!」
走ってきたディーナは男に届く前に、獣人に引っ掴まれぶん投げられた。投げられた先の壁はひずみディーナは軽く血を吐いた。
俺は先ほどの黒ずくめの男の顔を見やる、侮蔑のにじむ顔でこちらを見てきた男は、一体の実験体を引き上げ、じっと見て
「主軸が人間の男一人、部位がコカトリス1体、マッドスネーク1匹、中心魔石はレッサードラゴンか。後は無数の小さな生物だな。作り上げてはいるが回路が混乱してまともに機能していないな…造りが荒いし、作った者への愛が薄い…これではままごとだな」
実験体の材料をほぼ言い当てられ、造り手のディーナの性格までも充てられて俺は冷や汗を流す。あの獣人は有名な冒険者でドラゴンも一人でやっつけるって言うのは知ってるが…この男はなんだ?強いというより存在が異質だ。俺はこの男に攻撃出来る気がしない。なぜだ?ただの人間だ、しかも闇の色の濃いだけの高々人間風情のはずだ!
しかし人間風情といえど、闇に飲まれずここまで闇の色の濃いオーラを持っているのはなぜだ?
これで人間か?
まるで闇の王たる魔王……を畏怖するように、俺の身体が委縮する
まさか……この人間が魔王になるはずの人間?闇に飲まれるように、闇の精霊に運命を捻じ曲げられる者?
でも、この人間は闇に飲まれては居ない
幾多の困難・苦難にも闇に飲まれず正気を保ち大きくなった姿……もしかして魔王に…ならなかった?存在と言う事か?な!!!!!!!
「くっ…」
俺はいきなりの痛みに思考が止まった。気がつけば俺は左腕が肩から無くなっていた。目の前の男は右手を少し動かしただけで身体は動いてない。俺は魔力で傷口を覆い止血だけはする。
「なぁ、呼んでるんだけど?お前らさ、何が目的なの?国家転覆?世界征服?そんな感じ?」
「魔王様の復活だ!」
目の前の男はボリュームのある髪を揺らしながら頭を掻き「あーー」っと言葉を漏らす。男はしゃがみこみ俺の目を見てとても困ったように言う。
「うん。お前らの目的は魔王か…そっか。こっからしばらくは現れないと思うぞ。これ以上害をなすようなら、魔族を敵認定しないといけないんだけど、お前は俺の敵になるか?」
「何をいって…」
「いや、お前自体はもう人間喰いすぎてるから逃がしてやれない。でもな、魔族とお前は違うだろ。魔族の総意で人間に害をなそうとしてるのかなって?」
俺は男の目を見て小さく答えた
「そ…ういでは…ない」
男は俺の顔をまじまじと見て頷くと立ち上がり獣人に向かって声をかけた
「師匠話を聞きたい。殺さずとらえて。」
「ちっ、めんどくさいこと言いやがる」
ディーナと問題なく交戦していた獣人は、たぶん、加減が苦手なんだろう、先ほどまで全身に纏っていた魔力を8割くらい減らし、勢いで突っ込んできたディーナを下に躱し鳩尾に真下から拳を振り上げ吹っ飛ばした。凄い勢いでホールの天井まで吹っ飛ばされたディーナは重力に負けまた会場に戻ってきた。止める者もおらずそのまま床に激突したディーナは、意識を飛ばした。俺と相対していた男は、大きなため息を吐きディーナの元に行くと、黒い闇を出したと思ったらディーナの身体は、そのまま闇に消えた。
魔王特有スキル。「闇沼」だ。
幾千人の軍勢もいきなり登場さすことができるという恐ろしいスキルだ…
実験体も全部回収されて、俺も闇沼に入れられた。
その闇沼の中の世界は黒い闇一色。自分の身体だけはわかる闇。あれだけ待ち望んだ君主のスキルの中に入れたことに感謝しておこう。




