98話 新たなバラのお披露目の時間です。
会場を後にしようとしていた陛下に、甲高い声をあげたのは王妃
「陛下!納得できません!アルドリックの何が出来損ないに劣っているのですか!」
陛下は退室しようとしていた足を止め、一度振り返り王妃を仇を見る憎々し気な目で睨みつけた
「「我の愛するローズを貶めたお前の息子」それが一番の理由かもしれんな」
そう吐き捨てた陛下の言葉に会場はざわめき出す。そう、それはきっと事実なんだろう。公然の秘密と言うやつだろう。僕でさえ何度も毒を盛られ、暗殺されかけた。きっと王妃には母上の存在は嫌で嫌で仕方なかったことだろう。
「!!」
王妃は手に持った扇子を握りしめ全身に力が入り怒りに身体を震わした。
ざわざわと騒めく会場の貴婦人方。扇子を口元に目線は陛下と王妃に、よどむ空気の中大きな笑い声がこだました。
「アハハハハハハハ!」
突如大きな声を上げ王妃は笑い始める。天井を仰ぎ会場に響く笑い声。気品がはげ落ちた、気が狂ったような王妃のその姿に陛下は眉をひそめた。
「そうですか!そうなのですね!それが我が夫 ロナウジール・ド・オーラシアンの答え!わかりました!わかりましたわ!!」
大声で発していた言葉が止まり、陛下に扇子を向けた次の瞬間、会場にパーン!と言う破裂音が響いた
僕は、何が起こったのか分からず、会場がシンと静まり帰る。そこにカツン、カツン、カツン。と硬く高い足音が響く。肩に水色のスライムをのせたピンクの髪の幼子が陛下の前に立っている。
「ウフフ、あら銃なんて野蛮なものがこの世界にあるのね。この国の正妃様ともあろう方が、はしたない…あぁでも陛下の暗殺を実行したのだもの。元正妃様になるのかしら?ウフフ」
コロコロとわらう少女に皆唖然とする。少女は陛下に向き直ると、
「私、陛下にお話が有って参ったのですが、込み入った難しいお話をしていたみたいなので、大人しくしていたのです。でもお話する前に殺されてはたまりませんから、少々お助けいたします。ね♡アーチェ兄さま」
そう笑いかけた少女は、僕に視線を合わせた。僕たちは微笑み合い、スッとカナに手を差し出すと、カナは嬉しそうにその手を取った、そうして僕は会場に響くよう、夜会の参加者に向かって声をかけた。
「私と陛下の安全は考慮しなくていい。会場に配置されてた聖騎士の皆!司教ハインツ、ミヤノマエ!会場の皆の安全な誘導護衛お願いする!!」
僕の声を聴き、人々が大きく動き出した。白い鎧の騎士が一気に会場に現れ、夜会会場の参加者の前に立ち結界魔法を展開する
王妃は忌々し気に僕とカナを睨みつけるが、カナはニコニコしながら王妃に話しかける
「王妃様にはナイトは居ないの?騎士でもいいけど?そのヘタリ込んだ王子様じゃ役に立たないでしょ。そういえば後宮に何人かペットを飼っていらっしゃるとお聞きしたのだけど?」
王妃の横にはへたり込んでぶつぶつつぶやくアルドリック兄上、心が折れたのか…僕に王太子の座を奪われた事が許せないのか…役に立たない状態になっている。僕はカナの王妃への問いに軽く言葉をのせる
「王妃にペット?初耳だな」
「居るのですよ!紺色の髪の女性と黒い髪に赤い瞳の男性を飼っているのですよね。だって私のトーさんが見たって教えてくれたの♡ペットさんの好物が……人間の子供って事も教えてくれたのよ。飼っているんでしょう。魔族を」
「「「「魔族!」」」」
会場中がざわめいた。魔族の活性化は20年前聖女召喚後しばらくして落ち着いてからは、まったく聞くことが無かった魔族。「まさか後宮で?」「なんてことだ!」「恐ろしい」口々に会場にいる人たちが騒ぎ出す。
王妃は歯をギリギリと歯を食いしばって口の端から血が流れてきた。
「王妃おひとりで、この場に立つのは怖くないのかな?あー、あの方たちはナイトでは無くて、共犯者?かしら」クスクスクス
王妃は目を見開きこちらを睨みつけた。正妃は小声で何かつぶやくとブワット後ろに2つの影が現れた。一人は赤いお仕着せの様なワンピースを纏い紺色の髪をした赤目の女性。もう一人は褐色肌で上半身裸。瞳は真紅の赤。髪は黒く、背に生えた羽も黒い。カナメはおぉ!!っと「イケメン」と声を発した。
「凄い強そうな魔族さん達だね~でも私のナイトのトーさんは強いんだから!」
カナはむふん!と胸を張る。その肩の上に居るスライムも身体をそらしている。どうやらカナの真似をしているみたいだ。
「嬢ちゃん緊張感ねーな。」
「え!そんなのいる?」
「カナメと、うははだからな。」
僕とカナの両隣に、ガルーダ殿とクロト殿が来てくれた。
カナは王妃様に笑いかけた。
「えへへ~二人は強いんだぞ!!」
王妃は片眉を上げただけで何も言わない、でも後ろの羽の生えた魔族さんが赤い舌で舌なめずりして一言
「ガキの肉美味そう。あとで喰ってやる」
フワっと横から魔力が溢れる感じがして、カナはコテンと首をかしげ
「おにーさんじゃ私に指一本触れられないよ。だっておにーさんやられちゃうもん」
カナが言うや否や、次の瞬間魔族の男は凄い勢いで壁に叩きつけられ床にひれ伏した。何が起きたか目を白黒させたと思ったら急に大きな叫び声をあげた
気が付けば魔族の羽が消えてそこからダクダクと血が落ちている。
「ハァハァ、なんだ、どういう事だ?なんで羽が…」
パーティー会場の床に赤い血だまりが広がる。会場に居る参加者たちは恐怖でおびえる者、貴婦人に至っては倒れてしまう者も幾人か…そんな皆が恐怖に支配された中、場の空気を壊す高い幼い少女の声が響く
「カナの事美味そうなんて言うから、トーさんが怒っちゃったんだよ。弱い子いじめする人はカナ嫌いよ。」
カナは頬を膨らませプリプリ怒る。
目の前には手負いとはいえ魔族がいて血まみれの状態だ、なのにこの緊張感の無さ。張り詰めた空気が少し緩和されている。僕は王妃を見て、会場に響く声で告げた。
「王城に邪悪なる魔族を招き入れ、陛下を危険に晒した上、私までも襲った!その結果、王妃は国を危機に陥れた逆賊と見做す!今すぐ、魔族共々捕縛せよ!」




