100話 バラのお披露目の終幕と新たなる王の誕生へ
気が付くと会場の中、騎士や聖騎士に囲まれているのは、王妃と第一王子アルドリックだけだった。王妃は最後放心しているアルドリック殿下に手を伸ばしたが、すぐさまそれは愛する息子から払いのけられた。
「情けない!情けない!息子である私の道を整えるのが、母上たるあなたの仕事だったはずなのに、なんてことだ!あなたがそんな事だから、私が出来損ないに負けるなんてことが起きたのだ!!魔族と結託するなど汚らわしい!!」
そう言い放つと、第一王子アルドリックは、忌々し気に会場を睨み走り去った。王妃の伸ばした手を取る事も、振り返ることなく……
この時王妃は、自分を守る盾も剣も愛する息子までも失った。そのまま王妃は騎士に引きずられるように連れられていった。王妃の目は死んだ魚の様な、何も写さないモノになっていた。
パーティー会場が荒れてしまったのを、王宮魔道士たちが急いで整えた後、ようやく聖騎士たちの結界を溶き、パーティー参加者に陛下が謝罪した。
「この度、我が国の騒動に他国の王族各位を巻き込む形になり大変申し訳なかった、王妃の愚行、セフェリノの犯罪、第一王子の暴行・暴言…この責めを取って、私は一年後に退位し、王太子ルクレチアに王位を譲ると宣言する。そして次代の王となる、王太子ルクレチア を支える人物を紹介しよう」
陛下が入口に身体ごと向き直り頭を下げる。すると扉が開き、そこから白い衣をまとった聖女が入ってくる。聖女が一歩、一歩近づき陛下の前で止まる。
聖女は陛下ににこやかに微笑み語る
「昨日ぶりかしら、陛下の賢明なご判断痛み入ります。」
そう陛下に告げるとルクレチア殿下が手を繋いでいる少女の横に並び会場の皆に挨拶をする
「私、当代聖女を拝命いたしております、アヤネ・ミカミと申します。この度次代の王、ルクレチア 殿下の後見人を務めることになりました。以後お見知りおきください。」
そう言うと、聖女様は宰相閣下を指し示した。宰相はゆっくりルクレチア 殿下に近づき、ルクレチア殿下の一歩後ろに立ち、会場に声をかけた。
「私、ケリィーズイット公爵家は、ルクレチア殿下を支える後ろ盾になりましょう。」
宰相が言い終わると、ルクレチア 殿下の後ろに側近のニコライさんが立ち、その横にニコライさんによく似た壮年の男性が立ち並び
「我が、ミヤノマエ公爵家もルクレチア 殿下の支えとなる盾になろう。そして息子のニコライは殿下の傍らで剣となり支える事となりましょう。」
次に現れたのはSランク冒険者 ガルーダ
「俺は、直接何かはしない。でも頼りない新王の盾くらいには、なるだろうからこいつを側に置くと良い。」
そう言ってシールドの背中を押す。シールドは殿下の前に片膝を付き
「恩師ガルーダ殿の言うよう、私は殿下の盾となり、この命尽きるまで傍らでお支え続けると誓います」
ルクレチア 殿下は頷き、会場を見回し声をかけようとしたとき、バルコニーから声がした
「ヒヒ~~ン」
「騎士達、ガーデンへ出る扉を開けよ」
ルクレチア 殿下は馬の声を聴いたとたん騎士たちは急いでガラスの扉を大きく開いた。開いたところからバラのいい香りが会場内に広がると、カポ、カポ、カポと馬の歩く音がする。そこにはオーラシアンのバラの色の美しい肢体の馬が居た……が馬の脚の数が多い。会場はざわついた。陛下は逃げ出したはずの馬が自ら戻ってきたことに目を見開き呟いた…「あの、馬は…」
「ヒッヒーン」
馬が軽く鳴くと、少女が殿下に言葉をかける。その言葉を聞きルクレチア殿下は破顔した。馬はルクレチア 殿下に顔をよせると、殿下も嬉しそうに馬の首をなでる。そうして会場に声をかけた。
「この馬はスレイプニルの「黄昏」何代も前の聖女様のご友人。そして私に危険を知らせ、救ってくれた私の友、心優しき神獣様だ。日々空を翔け、愛し子を見守っている。この城にもちょくちょく出入りすることになるが決してこの神獣を害さないよう注意してくれ。」
「ブヒッヒン!!」
神獣が鳴くと、横の少女が「よろしくねって言ってる」と声を出す。殿下がその声を聴き笑い馬をなでる。あの少女は神獣様の声が聞こえるのかと会場内がざわついた。すると一歩、歩を進めた親子が居た。子供はカナメより大きい小柄な少女。ピンクブロンドの髪をハーフアップにしている。その子をエスコートしているのは屈強な騎士の様な男。……あれはコルドナ辺境伯?
そう言えば聖女が言ってたな、コルドナ領は独立すると……
「私は現在コルドナ領を収める領主を拝命していますロレンシオ・コルドナでございます。この度ルクレチア・ドゥ・オーラシアン殿下が、王太子殿下就任と聞きお祝いを申し上げたく、御前に罷り越しました。」
「叔父上…」
「ご立派になられた。我が妹ローズも空の上で喜んでいる事でしょう。この度は本当におめでとうございます。 」
「ありがとう…ございます。母上に恥じぬよう、今後も精進して行きます。叔父上は…独立されると聞き及びました。今後、国同士のお付き合いになるのは私としては少し寂しいですが、良き隣人となれるようお付き合いお願いします。」
少し寂しそうに微笑むルクレチア殿下の顔を見てコルドナ辺境伯は隣に立つ娘を見た。アリーシャは殿下をじっと見つめ頬を紅潮させた。辺境ではあまり見ない華奢な王子様然としたイケメンのルクレチアの姿に耳まで赤く染めたアリーシャは
「責任を取ってあなたのお嫁さんに私をしてくださるのなら、独立しないで良くてよ。その代わり私の側に居てくれるって約束してくださるならよ!」
「アリーシャ!お前何を言っているんだ?」
辺境伯は娘の言葉に焦るものの、アリーシャ嬢からは
「ルクレチア殿下、私強いのです!長年、危険な地を守る一族の娘!そこいらの魔物くらい簡単に叩き伏せて見せますわ!陰謀渦巻く王宮においては、その複雑な人間関係、権力闘争の機微、全てを見抜き、鮮やかに掌握してみせます。なんせ陛下から独立の許可をもぎ取った交渉術がありますもの!それに 今回の一件で私、貴族令嬢として欠陥品とそしりを受ける身!なれば殿下の剣となり盾ともなうりうるを友好的に活用して、殿下の傍に置いてお見守りくださいませ! 」
おぉぉぉ!!びっくりだいきなりの逆プロポーズ…ルクレチア殿下どうするのか?
ルクレチア殿下は手を繋いでいたカナメを見ると、カナメは微笑んでその手を放した。そうしてアリーシャ嬢の前に片膝をつきその手を取った。
「アリーシャ嬢、あなたを傷つけた事件、聞き及んでおります。貴方には本当に申し訳なかった、心より謝罪いたします。」
殿下は一度頭を下げ再度アリーシャ嬢の瞳を見て
「私の妻になるのであれば、過酷と言われる王妃教育を受けていただかなくてはならない。親元を離れ王宮で暮らすことになるが構わないのかい?」
殿下はアリーシャ嬢を見るとアリーシャ嬢はコクコク頷く。その隣に立つコルドナ辺境伯はアワアワと困っている。ルクレチア殿下はクスリと笑い
「アリーシャ嬢、 私はまだまだ頼りない。歳の差もある、こんな私を守るのではなく、側に居て、常にお互いが支え合えるのであれば、私はあなたとの婚約頷かせていただきたい。」
アリーシャ嬢は顔を真っ赤にしはにかみながら
「はい!年上最高ですわ!言いたいことが言える仲良し夫婦は理想です!勉強も頑張ります!よろしくお願いします!」
殿下は辺境伯の顔をアイコンタクトで「構いませんか?」 と言うように見やると、額に手を押し当てて困った辺境伯が「娘が望むのであれば」と小さくつぶやいた。
アリーシャ嬢は嬉しくて嬉しくて殿下に抱き着いた。
その瞬間「光よ!」と言う言葉と共に小さな光が殿下たちを煌めき包む師匠の隣にはササが杖を振って殿下たちを祝福の光で包んでいる
それを見てカナメが、近くに居る妖精に、あの二人の周りに花びらを散らしてほしいと精霊にお願いすると、風が舞いガーデンと続く扉から花びらが入り二人を祝うように風に舞う
可愛らしいプロポーズは魔法の光と妖精の助けを借りたフラワーシャワーで、美しく幻想的な姿となり、この出来事は、精霊と神の祝福を受けたプロポーズとして今後語られることを、今の二人は知らない。




