第5章 冒険者ギルドの洗礼
楽しく読んでいただけたら幸いです
王都の中心部からやや外れた場所に、冒険者ギルドの建物はあった。石造りの重厚な外観で、扉を開けると、昼間だというのに酒と汗の匂いが漂ってくる。
「うわ、これぞ異世界って感じの場所だな」
「感心している場合か」
ズィルガードに小突かれながら中に入ると、ギルド内にいた冒険者たちの視線が一斉にこちらへ向いた。身なりの良い少年と、やたら整った顔立ちの青年という、明らかに場違いな二人組である。
「坊主、迷子か?」
「ここは子供の来るところじゃねえぞ」
からかい半分の声が飛んでくる。俺は気にせず、受付カウンターへと歩み寄った。
「すみません、冒険者登録をしたいのですが」
「あら、いらっしゃい。登録ね、はいはい」
受付嬢は慣れた様子で書類を差し出してきた。名前、年齢を記入する欄に、俺は少し迷ってから正直に書き込む。「レイン」とだけ。王族の姓を名乗れば面倒なことになるのは目に見えていたので、そこは伏せておくことにした。
「十二歳……ちょっと若いわね。うちは十歳から登録できるけど、正式な依頼は保護者同伴が原則よ。護衛の人、いる?」
「私が保護者兼護衛だ」
ズィルガードが横から言うと、受付嬢は彼をまじまじと見つめ、少し頬を赤らめた。
「あら、素敵な保護者さんね……。では、簡単な適性検査をしますね。こちらの水晶に触れて、魔力を流してください」
カウンターに置かれた水晶に手をかざすと、内部の光がぶわりと強く輝いた。受付嬢の目が丸くなる。
「え……ちょっと待って、この数値」
「何かおかしいですか?」
「いえ、その……新人にしては、随分と魔力の質がいいというか……。まあ、いいわ。とりあえず最低ランクの『銅級』からのスタートになります。実績を積めば、銀、金と上がっていくわ」
こうして俺は、正式に「銅級冒険者レイン」となった。腰に下げる冒険者証には、簡素な銅のプレートが付いている。
「よし、記念すべき第一歩だな」
「浮かれるのはいいが、まずは掲示板を見てみるか」
ズィルガードに促されて、依頼掲示板の前に立つ。薬草採取、害獣駆除、荷物運搬など、銅級向けの簡単な依頼が並んでいた。
「地味なものばかりだな」
「当然だろう。お前はまだ、実績のない新人なのだからな」
俺は掲示板の中から、比較的簡単そうな依頼書を一枚手に取った。「森の外れに現れた、大型の猪型魔物の討伐」――これくらいなら、今の力で十分対処できるはずだ。
「これでいくか」
「うむ、悪くない選択だ」
依頼書を受付に持っていくと、受付嬢は少し心配そうな顔をした。
「その依頼、ちょっと厄介な相手なんだけど、大丈夫?」
「ご心配なく。護衛が優秀なので」
俺がそう言って隣のズィルガードを見ると、彼はにやりと笑った。
「今回は見学に徹する。お前一人でどこまでできるか、見せてもらおう」
「おい、話が違う」
「保護者は同行するとだけ言ったな。手を出すとは言っていない」
「屁理屈が過ぎるだろ」
受付嬢がくすくすと笑いながら依頼書を受理してくれた。こうして俺の初めての冒険者としての依頼は、思いのほか一人でこなすことになったのだった。
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