第十ニ章 小さな決意
これからも頑張って投稿しようと思う僕です
翌朝、俺はズィルガードから受け取った情報を携えて、宰相のもとを訪ねた。事情を聞いた宰相は、深刻な顔で頷いた。
「なるほど……。複数国にまたがる組織的な動き、しかも人間が関与している可能性、ですか」
「まだ確証はありませんが、竜たちの情報網は、それなりに信頼できるかと」
「陛下にもお伝えしましょう。レイン殿下、よくぞこの情報を」
「ズィルガードのおかげです。俺は聞いただけですから」
宰相は羊皮紙を丁寧に受け取り、俺に向かって深く頭を下げた。
「殿下には、この件、しばらくは静観していただきたく思います。まだ確たる証拠がない以上、大々的な動きは控えるべきかと」
「わかっています。冒険者としての活動は続けますが、無茶はしません」
宰相の執務室を出た俺を、廊下の角で待っていたのはノエルだった。
「レインさん、宰相様に何のお話をしてたんですか?」
「ああ、実は――」
俺は少し迷ったが、ズィルガードの忠告を思い出しながら、慎重に言葉を選んで、昨夜聞いた情報の要点をノエルに伝えた。彼女の故郷を襲った悲劇に直接関わるかもしれない話だからこそ、隠すべきではないと思ったのだ。
話を聞き終えたノエルは、しばらく黙り込んでいた。
「……人間が、魔族を使って」
「まだ確証はない。ただの可能性の一つだ」
「でも、可能性がゼロじゃないなら」
ノエルは拳を強く握りしめた。だがその表情は、以前のような悲しみに沈んだものではなく、静かで、けれど芯の強い光を宿していた。
「私、頑張って強くなります。もし本当にそんな奴がいるなら、いつか必ず、この手で決着をつけたいから」
「一人で抱え込むなよ」
「わかってます。レインさんと、ズィルガードさんがいますから」
ノエルはそう言って、いつもの元気な笑顔を見せた。悲しみを力に変えようとする彼女の強さに、俺は改めて敬意を抱いた。
「じゃあ、今日も依頼、行きましょうか!」
「そうだな。地道に実力をつけるのが、一番の近道だ」
「はい!」
二人でギルドへ向かって歩き出す道すがら、俺はふと空を見上げた。抜けるような青空に、一羽の鳥――いや、遠目にはそう見えるが、あれはきっと、人化を解いてどこかを見回っているズィルガードだろう。
(頼りになる相棒だな、本当に)
目に見える脅威も、まだ見えぬ陰謀も、これから先、いくつも立ちはだかってくるのだろう。だが今の俺には、支えてくれる仲間がいる。アリシア、ズィルガード、ノエル、そして城内の兄弟姉妹たち。
のんびりとしたスローライフを夢見た第九王子の人生は、思っていたよりもずっと波乱に満ちたものになりつつあった。それでも――と、俺は密かに思う。
この賑やかで温かい日々こそが、俺にとっての「スローライフ」なのかもしれない、と。
王都の空の下、少年たちの小さな決意を乗せて、物語はまだ、始まったばかりだった。
よろしくお願いします




