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第一段階・寄生──主家の実務を握る
道三の父、新左衛門尉が仕えた長井氏は、美濃守護土岐氏の重臣・斎藤氏のそのまた家臣、いわば陪々臣の家である。
新左衛門尉はここで頭角を現し、長井家中で名跡を継ぐまでに至った。僧侶上がりの外来者が武家社会で登用された背景には、読み書き・計算・京都人脈という実務能力があったと考えられる。
乱世の武家は、文書と交渉のできる人材に慢性的に飢えていた。
中世から特に乱世にかけて、武家の精神性は今の暴力団に近い。圧倒的な暴力性でシマと年貢を得て、あとは知力でそれを守る。シマを荒らされればなにをもっても守ろうとするし、メンツを汚されれば、命を懸けても濯がねばならない。しかし平時は儀式や学をもってそれに説得力を求めていく。
ところで、寄生段階の要点は、目立たず、しかし不可欠になることである。
財務、文書、京都との交渉──家の中枢実務を握った者は、主家の内情、家臣間の力関係、そして弱点のすべてを知る位置に立つ。
乗っ取りの設計図は、忠実な実務家の顔の裏で描かれる。経理を悪者に握られた会社の末路は、いつの時代も同じである。




