第7話「離れる理由」
翌朝。
竹中清は教室にいなかった。
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昨日の夜までは「来る」と言っていたはずだった。
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だが、机は空のまま。
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その空席が、やけに目立つ。
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広岡悟はその席を見ていた。
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(もう一段進んだ)
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頭の中で、冷たい声がする。
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休み時間。
阪田健吾が近づいてくる。
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「竹中、今日も休みだってよ」
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声は軽いが、少しだけ苛立っている。
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「親がうるさいらしい」
「勉強しろってさ」
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広岡は黙る。
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(親)
(環境)
(分岐)
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未来の記憶がよぎる。
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竹中はここから“外へ出る”。
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格闘技。
都会。
結婚。
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そして、自分は。
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残る。
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その差が、今ここで生まれている。
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阪田が笑う。
「まあいいけどな、あいつ抜けても」
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だがその言葉は、少しだけ空虚だった。
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放課後。
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校舎裏。
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いつものメンバーは少し減ったまま残っている。
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阪田がタバコを出す。
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火をつける。
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だが、昨日より笑いが少ない。
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「なあ悟」
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阪田が言う。
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「俺らさ」
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「このまま大人になるのか?」
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その言葉で、広岡の胸が締まる。
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(まただ)
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(未来の断片が混ざってる)
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広岡は答えない。
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代わりに、空を見上げる。
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雲がゆっくり流れている。
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その流れが、妙に怖い。
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夜。
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帰り道。
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広岡は一人。
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いつもの公園。
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だが、そこに誰かがいた。
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竹中清。
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ベンチに座っている。
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広岡は足を止める。
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「お前……」
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竹中は少しだけ笑う。
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「ちょっとな」
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「親と喧嘩した」
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その言葉は軽い。
だが、決定的だった。
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広岡は気づく。
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(戻る道がある)
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(まだ完全には離れていない)
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竹中が言う。
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「でもさ」
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「俺、多分このままじゃダメだわ」
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その言葉で空気が変わる。
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広岡の中で、何かが動く。
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(ここで止めるか)
(それとも見送るか)
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未来が揺れる。
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・竹中と共に残る未来
・竹中が離れる未来
・自分だけが取り残される未来
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そのとき。
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遠くで足音。
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あの男の気配。
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広岡は気づく。
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これは偶然ではない。
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人生は今、
分岐ではなく“選別”に変わっている。
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(続く)




