314話 EPO配信!_食事のシェア
しーちゃんが寝てる間に収穫物を獲得しながら、枝肉も順調に集めていく。
寝起きの子供はお腹が空いてるものだからね。
「ぬははは、あたしの時代、きたー!」
ミルちゃんが吠える。
罠術を4から6に上げて落とし穴と移動床を入手していた。
「でも、ハヤちゃんほど上手に扱える気がしないんだよね、移動床」
リノちゃんも同様に6まで。
「みんなして6まで上げてずるいぞー」
お姉ちゃんはようやく落とし穴を獲得。
始めた頃の落とし穴レベルが低かったのもあって、一歩遅れてる感じだ。
<罠術5:落とし穴>
P・落とし穴 G・落とし穴
耐久 50 80
デバフ1 行動不能 行動不能+
デバフ2 攻撃不発
<罠術6:移動床>
P・移動床 G・移動床
耐久 80 100
デバフ1 強制移動 強制移動+
デバフ2 攻撃不発
そして私の罠術は7に。
ボウガンを覚えていた。
<罠術7:ボウガン>
P・ボウガン G・ボウガン
命中 70 70
威力 10 10
射程 5 10
耐久 30 50
デバフ1 回避低下 回避低下+
デバフ2 攻撃不発
ずっと収穫しかしてないのにおかしいな。
ちなみにお姉ちゃんの発案した弓バフを使用しての収穫は成功した。
弓術9『S・シャドウ』のおかげで収穫+2の効果を連続3回行えたのは大きい。
そしてこれは朗報だけど、弓バフをかけて収穫してもおかわりは一回しか来なかった。
何が言いたいのかといえば、こちらにとって都合のいい効果であることだ(主にしーちゃん方面で)。
そしてそれは解体効果にも及んでいた。
S・シャドウをかけたリノちゃんの解体も3回分発動したのである。
あれはラストアタックさえ取れば発動するので、お姉ちゃんかミルちゃんがうまいことダメージを調整してくれたんだろう。
多分きっと(罠術の威力の低さを鑑みながら、相当な泥試合だったことには目を瞑って)
「しー」
「あ、しーちゃん起きた」
「お腹空いてるよね? 今ご飯作るから待っててね?」
「いっぱいお肉仕入れてきたんだよ」
「ハヤちゃん、私たちもお腹空いたー」
「オッケーみんなの分も作るね」
「みんなで食べられるご飯はどんなのかしら?」
「しー?」
自分の分だけではないのか? みたいなニュアンスだろうか。
この機会に教えておこうか。
多人数で食べるご飯のおししさを。
それが食事のシェアなのだ。
「まずはピザ! 色々焼いていくよー」
:お決まりのうどん粉ピザか
:まずこの時代に小麦粉が存在していない件
:あ!
:小麦があってもすりつぶす概念がないのか
:食材の下拵えが完成した料理の世界だもんな
:そんな時代に焼肉のたれをぶち込んだ張本人がいるんですよ
:な、なんだって〜!?
:そしてハヤテちゃんの手元から現れる小麦粉
:出所は?
「神秘ですねー」
:知ってた
:そのための神秘
:神秘の消費速度が止まることを知らない
:ピザって言ってもピザ窯は?
「こういうものこそ石工の出番ですわ」
:すでに用意済み
:流石に神秘は使わなかったか
:すっかり葉ちゃんも職人の仲間入りである
:そういえば串焼きの焼き台も葉ちゃん作か
:なかなか器用なことするよなぁ
:これ、ピザ用の棒も葉ちゃんが?
:確か木工職人もてった
「我ながら自分の直感に惚れ惚れしましてよ」
:目の前で見てたら流石に堪えるか
:今まで食うだけだったもんなぁ
:食材は?
:神秘でしょ
:ここで今日の神秘使い尽くすつもりかよ
:いや、このメンツ全員神秘使えるから
:そういえばそうだった
:開放条件厳しいんだよなー
:そうか?
:まだ取得できてない人もいるからな
:まさかこの配信のリスナーで取得してない奴は居ねぇよなー?
:いるわけないやろ(未取得)
:そうそう(EPO未参加)
:お前ら……
:EPOはもう別ゲーになったから
:あまりの変容ぶりに三度見したよな
:課金も充実してるぞ
:WBOみたいに食材をいい感じに揃えられないからな
:俺らも提供したくてもできない
:悲しいなぁ
「もし食材がございましたら、神秘で買わせてもらいますよー、葉ちゃんが」
「わたくしがですの!?」
「この中で神秘の使い道ないのようちゃんくらいでしょ。あと商人持ってフリマ開ける存在は」
「おっとハヤっち、あたしを忘れてもらっちゃ困るぜ。元祖商人のこのミルモちゃんをね!」
「あ、そういえばいたね。すっかり忘れてたや」
「そう言う仲間はずれの雰囲気良くないと思いまーす」
:勝手に離脱したお前のせいやぞ
:まぁまぁ
:たった2日、都合がつかなかっただけでこの言われよう
:2日でつく差じゃねーのよ
:そういえば元祖商人だったね
:なら商人らしい行動せぇや
:基本マウントばかり取ってるもんな
:いや、それが商人としての振る舞いの可能性
:いや、まさか
:ナチュラルに煽る癖がつくのか?
:まさか……
:葉ちゃんを見る(察し)
:ハヤテちゃんを見る(そっと目逸らし)
:これ、やっぱり商人の効果だったのか(愕然)
「あはは、あまり身に覚えがないですね。それともこういうファンサも商人効果とか言い出します? ならやめますけど」
スン……と表情を抜け落ちさせれば効果は抜群。
先ほど私たちに向けられていた感情は途端に犯人探しに切り替わった。
:おい、今ハヤテちゃんの悪口言った奴どいつだよ
:俺たちの食い分がなくなったらお前のせいだぞ?
:今ステージ4来た
:ステージ30からの直輸入やで
「助かりまーす」
:お前ら
:ステージ30ならミソもあるやろ
:あるにはあるけど、焼肉のたれは実装してないぞ
:え?
:材料は揃うやろ?
:素人が作る焼肉のたれと、食に精通した人が作るタレの差よ
:あ、そっか
:素材があってもそこも作り手の腕前が
:なら素材を持ってくる方が安上がり?
:美味い飯も食えるし
:っていうか、ピザ用の食材で焼き肉作ろうとしてるやついねぇ?
:害獣討伐用のタレが少なくなってきたからな
:こっちで賄うのか
:まぁ向こうはこれからも世話になるけど
:ハヤテちゃんの飯はこの配信でしか食えねぇし
:それなぁ
:WBO飯もうまかったが
:EPO飯は果たして?
そういえばこっちでご飯は振舞ってなかったもんね。
調味料の限られた環境と、衛生観念が決してよろしくないステージ。
調理師として振る舞う機会は決してない。
せいぜいが身内向けだろう。
でも焼肉のタレを実装してから、忌避感はだいぶ下がったように思う。
幻想装備が悪いよ。
あの利便性は一度手にしたらなかなか手放せないと思う。
「し? しー?」
「しーちゃんは一つの食事しか食べたことないからわからないだろうけど、これからいっぱいお料理を作るから、それを食べ比べて自分の好きな味を見つけてね」
「まずはピザ一号お召し上がりください」
お姉ちゃんが、WBOで入手したピザカッターを神秘で取得。
ピザを切りつけてしーちゃんの前に出した。
「先におててをパッキングしましょうねー。さぁ召し上がれ」
「し! しーー〜〜〜!?」
たっぷりチーズがびろーんと伸びてしーちゃんを困惑させる。
そう、初めて見る食事なので食べ方がわからないのだ。
こういう時、一緒に食べてくれる人がいると助かる。
「あはは、こうやって食べるんだよ」
お姉ちゃんが切り分けたピザを口に運ぶ。
「こういった食べ方もございますわよ」
「し! しー!」
しーちゃんは自分のために用意されたピザが食べ方見本でガンガン消費されていくのが怖くなってしまったようだ。
短い手でかき集めるようにしながら、慌てて食べている。
まさか食べづらいというだけで自分以外の誰かに食べられるとは思ってみなかったようだ。
「はいはーい、おかわりお待ちしました。しーちゃんはこうやってみんなで食べるの初めてだから、あまりいじめないであげて。見本は自分のお皿に乗ってから、ね?」
「ごめんね、しーちゃん。私の一枚あげるね?」
「申し訳ございません、しーさん。わたくしのも一枚あげますわ」
「し!」
いいの? という顔。
まさか奪われた分が戻ってくるとは思わなかったようだ。
「しーちゃん、これが食べ物のシェアだよ。自分のを分けると、他の人から全く違うものをもらえたりするんだ」
「し〜!」
そんなことあるんだ? みたいな驚きがあった。
しーちゃんにはノーマルピザ。
お姉ちゃんにはツナマヨコーン。
葉ちゃんにはマルゲリータ。
似ているけど、味わいは全く違う。
ピザ初心者のしーちゃんにはどれも美味しいという感覚かもしれない。
「はーい、食材を持ち込んでくれた方優先でメニュー聞きまーす」
「待ってた」
「モッツアレラチーズお待ち」
「俺は新鮮なトマトを。品種改良されてるから甘いぜ」
「俺はキノコとか香辛料を」
「たくさんありがとうございます。一番の焼き立てはしーちゃんとイグニス様にあげますけどよろしいですか?」
「大丈夫大丈夫。俺ら料理できないから素材持ってても腐らせちゃうから」
「助かりまーす」
:というか、EPOでも女神様にお供えできるの?
:できないぞ
:むしろ目の前で飛んでるんだよなぁ
:イグニス様、意外とお茶目な神様だった
:WBOのあの荘厳なイメージは完全に崩れたよな
:ただの食いしん坊になってる
:大体ハヤテちゃんのせいだろ
「美味しいです。パッキングされていないお食事をいただくのはこれが初めてですけど、こんなに味わい深いんですね」
「|◉〻◉)ピザはやけどをしながら食べるものらしいですからね。あち、あち」
:そもそも別ゲーの存在が食えてるのがおかしいのよ
:それは今更だろ
:あれ? 前までレイちゃん食べれてたっけ?
「|◉〻◉)葉ちゃんの『幻惑』効果で僕らも食事できるようになりましたね」
「とてもありがたい効果です。ハフハフ」
「まさか実態のない存在がこの世界に介入する手助けをするだなんて思いもしませんでした」
:あ、そういうことなの?
:『幻惑』効果で実在可能になったのは笑う
:今まで見えてるだけで本当の意味で干渉はできてなかったのか
:葉ちゃん戦犯では?
「あら、わたくしが与えずともそのうち誰かが渡しておりましたわ。それ以前に、ゲームを渡って来られるレイさんたちがおかしいのです。それをわたくしのせいにするのなんて横暴ですわ」
「しー」
しーちゃんが元気出せよ、と葉ちゃんの方をポンと叩く。
そして葉ちゃんの皿からマルゲリータの残りを全部奪ってった。
あ、これはあれだ。
慰めとかじゃなく、美味しかったからまたちょうだいの合図だ。
シェアを完全に履き違えてしまったな。
しかし葉ちゃんはこれを快諾。
「あら、しーさん。マルゲリータを気に入ってくださったのね。ええ、よろしいですわ。皆の誰よりもわたくしのマルゲリータを気に入ってくださったのは鼻が高いですわね」
:マルゲリータの開発者でもないのにこの有頂天ぶりよ
:まぁ小さな子に目くじら立ててもな
:全部あげちゃってるのは大人の余裕か
:ハヤテちゃんに焼いて貰えばおかわり自由だからでしょ
:これが自分で金払ってたら態度変わりそう
:でもお金持ちのお嬢様だしなぁ
:お嬢様はピザなんて食べないのよ
:これを覚えたら他の子の皿から奪う子になっちゃうぞ
「お、しーちゃん。あたしのマヨコーンピザに目をつけたね。でも君ぃ、もらうだけもらうのは通用しないよ。代わりにこのノーマルピザを一枚もらうね。その代わりしーちゃんには二枚あげる。どう?」
お姉ちゃんは交渉を仕掛ける。
自分のを一枚渡して、二枚得る。
しーちゃん的に自分のを失うのは無しだった。
しかし一枚が二枚になるというのは悔いでの問題で見ればあり。
「よし、交渉成立だね。二枚持ってっていいよ」
「し!」
「しーちゃん、私のシーチキンピザもどう?」
「あたしの肉ピザも食べてくー?」
「し! し〜? し!」
最初は全部もらうつもりのしーちゃんだったけど、まさか相手から売り込みに来るとは思わず、迷うそぶりをしたけどやっぱり全部もらっていた。
「よかったね、しーちゃん」
「し!」
そのあとはおかわりをしつつ、ファンサをこなして害獣討伐に戻る。ステージを連続4回クリアすると一時離脱できる機能を駆使して休憩をしてたのだ。
しーちゃんが寝てる間にまたサクッとクリアしてしまおう。
さっきよりたらふく食べさせたから、多分もう少し保つはずだ。




