312話 EPO配信!_GAMEOVER
「はい、ではみなさま、害獣討伐をやっていきますわよ。今回私は必要に応じてアシストをするのにとどめ、司会進行を優先させていただきますわね」
うん、まぁ仕方ないか。
お姉ちゃんは城壁ホーミングが恋しいみたいだけど。
それを抜きにしたって剣聖がある。
完全に葉ちゃんがお払い箱になった形だ。
不貞腐れている、というよりはこっちに仕事を回すなという圧すら感じるので、多分司会に集中したいのだろう。
「あたし罠はキラーイ」
ミルちゃんが早速問題発言。
今までこういうわがままを言う子がいなかったのもあり、少し新鮮な気持ちで対応する。
「今時そういう子は置いてかれる環境なんだよね」
「あたしの知らないうちに環境変わってるってマ?」
「その環境を知ってるかどうかでマックスまでのレベル上げが楽ちんになっているのだよ」
新鮮とは言ったけど、面倒は面倒なので塩対応だ。
「|◉〻◉)ノそれが称号ジョブ『ハンター』の力です」
「なんでレイちゃんが得意げになってるの? 私のジョブだよ?」
リノちゃんが対抗心を燃やす。
貸し出しっぱなしの影響か、レイちゃんが我が物顔で扱っているのが気に食わないようだ。
「リノっち、恐ろしい子!」
「ししし! ししししし!」
「しーちゃんも笑ってるよ、ミルちゃん」
そしてこの新顔もなかなかニオあるのがお上手な模様。
何を言いたいのか判別は不明だけど、多分お腹空いたとかそう言うのだと思う。
都合がいいので一緒に煽っっておく。
「くぬー、あたしの凄さを思い知らせてやらなければいけないようね」
「はいはい」
「はいはい」
私とお姉ちゃんは頑張って、と言わんばかりに話を進めた。
狐エリアは相変わらず回避極のキツネが順番通り収穫物に一直線で向かうコースだ。
今回こちらは全員が罠術。
罠は必中なので恐れるものは何もない。
「あ、避けられた!」
とはいえ、丸見えのトラップに引っ掛かるほどキツネもバカじゃない。
必中なのは、あくまで真上を通過した時に限るのだ。
「くぬぅ、こうなったらばら撒き作戦だ」
ミルちゃんは個数制限がないのをいいことに、トラバサミをそこら変に起き始める。
当然キツネは無視。
トラバサミを迂回しながら収穫物に向かっていった。
:うん、まぁこれが普通なんよな
:リノちゃん達がイレギュラーすぎてよ
:これじゃあ物足りなくなっちまってる
「なぬ、リノっちがあたし以上のトラップマスターだって?」
まずミルちゃんがトラップマスターという前提を持っていることが不思議だ。
武器レベル4だよね?
その自信はどこからくるの?
「そうだよー、2日休んでいる間に天と地の差が開いてるよー」
:まだ2日しか経ってないのにこの成長ぶりよ
「ハヤちゃんのおかげでより凶悪に」
「ハヤっちが絡んでるなら納得」
「納得されちゃった」
「ハヤテの信頼のおかげだね」
「その信頼、きっと碌でもないものですわよ」
葉ちゃんのツッコミは耳が痛い。
何はともあれ、私たちの最強コンビネーションを見せつける必要があった。
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<罠術>
LV1 トラバサミ 耐久 2 威力3
LV2 木箱 耐久10 障害物(上限3)
LV3 カカシ 耐久30 前方にヘイト大
LV4 痺れ床 耐久50 対象の回避ダウン
LV5 P落とし穴 耐久50 行動不能+攻撃不発
G落とし穴 耐久80 行動不能2ターン
LV6 P移動床 耐久80 強制移動+攻撃不発
G移動床 耐久100 強制移動
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LV7 ボウガン 耐久???
LV8 城壁 耐久???
LV9 水路 耐久???
LV10栄養剤 耐久???
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と、まぁここまで罠術の情報は出揃っている。
私は6まで、7以上は葉ちゃんしか揃えてない。
あとはコメントから拾った情報で、肝心な中身が見えてこない。城壁は利便性高そうだけど。
ボウガンとかは今の所弓術を並行して使えるハンターの前では役に立つ目処がない。
いや、移動床と組み合わせれば化けるか?
どのみちレベルアップを待つしかないので皮算用は程々に。
私は頭の中で移動床を導くようにそこら辺に落ちてるミルちゃんのトラバサミを巻き取った。
キツネにとってはルートが開けたように見えるだろうけど、それは勘違いというやつだよ。
私はこれをトラップトレインと名付けよう。
指揮者のように腕を振り、トラップを獲物に導くのだ。
:移動するトラップかぁ
:こんなのありなの?
:こういうこともできるってだけで
:ありといえばありじゃねぇか?
「ハヤっち、これは何?」
「移動床だよ」
聞かれたので答える。
前回は城壁を動かしたけど、トラップが動くと分かればやりようはある。
私は設置済みのトラップを自在にエリア中に動かしていた。
「あれって上に乗った対象を動かすんじゃなかったっけ?」
「対象は何も害獣だけにとどまらない。罠も動かせるんじゃないかって思ってね」
実行したらできた。
なんなら収穫物も列車のように運び出せた。
なんでもやってみるものだ。
「罠術、あたしの思ってるより相当厄介な代物だった?」
「イメージ力の差ぁ、ですかね?」
「ぐぬぬ」
「あなた達何をやってますの? キツネが収穫物に向かっておられますわよ?」
「あ、やべ」
ほら、葉ちゃんが呆れてるよ。
「ならあたしはカカシを設置!」
「そのカカシ、もらった」
「あ、あたしのカカシがー」
お姉ちゃんのカカシを移動床で接収する。
これでトラップトレインは
「なら私は弓術でトラバサミに命中増加のバフをかけるよ」
「トラバサミは必中だぞ、リノっち、ププー」
:普通はそうなんだよ
:そっか、ミルモちゃんはあの凶悪なコンボを知らないから
:俺も知らなかったらこんな無邪気に笑えてたのかな
:ある意味で幸せなプレイヤーだった?
:一日置いてかれただけであの大惨事を免れたのはある意味幸運だったか
「からのー『剣豪』の効果で命中を10消費するごとに威力を30加算。命中を90消費して威力273のトラバサミを生成、ハヤちゃん、あとは任せた」
「何それ、すっごい威力! でも命中10だと当たらなくなぁい?」
「そのための命中補正だし! 命中はなんと20ある!」
:20は罠でも弓でも剣でも外れる数値なんだよ
:リノちゃんのこの自信はどこからくるの?
:威力推進派だぞ
:当てるんじゃなくて、ハヤテちゃん任せなのが本当に
:信頼あってのものだね
「そのための私だよ! この移動床トレインの先頭は『P落とし穴!』 続いて『痺れ床』に『カカシ』と身動きができない構成。命中率が低い? だったら相手を行動不能にしてやればいいんだよ」
「えっぐ」
「そこに、威力273のトラバサミが最後尾にあしらえたトラバサミトレインが通過したらどうなると思う?」
「ゴクリ」
ミルちゃんは事の深刻さをようやく理解したようだ。
息を呑む間もなく大爆発。
:キツネ君、爆散!
:これを見にきた
:汚ねぇ花火だぜ
:俺『剣豪』取ったけどここまで華麗に扱えてねぇや
:威力を込めても命中低いからあたらねぇしな
:普通はそうなんだよ
:大丈夫だ、誰もハヤテちゃんほど使い熟してねぇぞ
:多分『剣豪』取るより先に『移動床』マスターしたほうが早い
:『移動床』マスターってなんやねん
:『移動床』を自在に操る能力だよ
:なんと、今なら罠術レベル6で取得可能
:な、なんだって〜!
:持ってるけどあんなふうには使えないのよ
:あれだけ動かせるだけでどんだけ脳みそ使うんだ?
:人間にできることなのかよぉ
それは実際自分でも思う。
前世だったらやれてない力だからね。
しかし、ここで予想外のことが起きた。
<ゲームオーバー>
「え?」
「まだキツネ一匹目だよね?」
「収穫物逃してた?」
「なんでゲームオーバー?」
私たちの理解が及ばない状況。
しかし目をよく凝らせば、私の移動床トレインのカカシに跨っている少女がこちらを振り向く。
「しししし!」
あ、しーちゃん忘れてた。
「どうやらあの子が収穫物を全て食べてしまったようですわね」
「まさかの伏兵!」
:あの子、収穫物に干渉できるのか?
:AWOからのNPCは干渉できないんじゃなかったっけ?
:いや。今レイちゃんに貸し出してる『称号』が
:あ、『幻惑』?
:それだ
まさかの接点が見つかってしまった。
葉ちゃんだけの特権が、魔導書を持つプレイヤ0全員への効果となったら話が変わる。
「ミルちゃんを持ってしても扱いきれない食いしん坊か!」
「まさか狐の一匹を倒すことなく敗北を喫するとか」
「これは罠術の称号ジョブは獲得無理そうだね」
「そうなの?」
「あれは一度も負けずにレベル10達成しなくちゃいけないとこあるから」
:え、これで普通に敗北扱いなの?
:害獣以外が収穫物食べてもアウトなのかよ
:きついなー
:でも今のハヤテちゃん達に新称号ジョブ必要?
:検証はやってほしい
:取得はお前らが頑張れよ
:取得済みだから困ってるんだよ
:確かステージリセット権あったよな
:締めて1万円になりまーす
:高いんだよ
:取得後の救済措置なんだよなぁ
「でも、これからずっと妨害され続けてクリアするのは無理じゃない?」
狐エリアのウェーブ1も持たないとなれば、これからの害獣エリアは全て時間稼ぎもできなくなる。
「そうだね」
「これは収穫+2で無双するしかないね」
「農家で無双?」
「しーちゃん用の食料を収穫で+1された分あげるとか?」
「しーちゃん係が必要になるね」
「ねぇ、この収穫ってさ『剣豪』とか『剣聖』使えないかな?」
「ジョブに武器スキルを?」
リノちゃんの提案に、私は固まる。
普通ならできない。
けど一蹴するには私たちには条件が揃いすぎている。
ハンターという武器スキルを併用できる。
これがレイちゃんに貸し出したことで魔導書の所持者全員が使える権能になった。
「やってみよう」
「勝算はあるの?」
「こんなのいつも通りだよ。やってみてできなきゃそれまで、できたらラッキー。そしてしーちゃんの空腹がどの程度の規模で落ち着くかの検証も始めるよ!」
「一気にやることが増えましたわね」
「けど、しーちゃんをここで捨て置く方が問題になるよ。追い払うにしたって対処法は持ってた方がいいよね? この配信中に退散方法を考えよう」
「悪いねぇ」
今の対応はミルちゃんか、それともナイアルラトテップか。
「いいよいいよ。むしろ罠術マスターするだけだったら簡単すぎて配信盛り上がらなかっただろうし。そういう意味では配信向けのイベントとして申し分ないハンデになったと思うよ」
「流石だね、ハヤっち。普通なら投げ出す難易度でも当たり前のように受け止める。それでこそだ!」
「もしこれが配信じゃなかったら投げ出してると思うけどね」
「なんてこった」
「全くこの方はどの口が言うのやら。ですが、これで私も参戦しやすくなりました。ハンデを設けて、更にわたくしが参戦しないと言うのではまた話が違ってきましょう」
:お、今回はお留守番じゃなくて出番があったか
:今までがあまりにも舐めプすぎた
:いや、ハンターの性能がエグいんだって
:この窮地を経て、ようやく本気か
:みんな当たり前のように受け止めてるけど、この子一体なんなの?
:レイちゃんみたいな存在じゃね?
:またはイグニス様な
:突っ込み始めたらキリがないからな
:むしろそう言うものとして受け止めてる
:草
:|◎〻◎)ちくわ大明神!
:なんだ今の
:誰だ今の




