311話 EPO配信!_這いよる混沌
「皆様、本日も初めて行きますわよ。司会はわたくし、紅葉と」
「ハヤテだよー」
「トキちゃんです!」
「リノだよ」
「ミルモでーす!」
:キタキタ
:ちょうど切らしてた
:ミルモちゃん!?
:久しぶりやな
「ししし」
「|◉〻◉)ノやぁ僕です」
「皆様、今日も私たちの配信にお越しくださりありがとうございます。ハヤテさんの主神、イグニスです」
「|◉〻◉)僕のマスターですよ!」
「いいではないですか。二柱の推しということで」
「|>〻<)僕のなのに!」
:なんか知らん子がいる
:大きなお口がキュートだね
:いっぱい食べそう
:まさか、ハヤテちゃんの料理の助っ人?
:残飯処理はイグニス様の仕事では?
:残飯処理いうてやるな
「出来立て外外のを収めてるのに、残飯なんてひどーい」
「パッキングのおかげでいつでも出来立て外外が食べられるのはハヤテさんの配慮のおかげです。新界では大変重宝していますよ」
:深海で食べられる貴重な温かいご飯か
:あれ、でも他のプレイヤーもお供物してない?
「それもおいしく食べさせていただいてます」
「ししし! しししし!」
「あ、こら。私のゲートに入らないでください。あー私の非常食が!」
:そのキャラ、自由すぎない?
:待って、神界に勝手に入られるって何?
:神様のお友達なの?
:あー、残飯がぁ
:だから残飯いうな
:開けるまでは出来立てなんだよ
:もう全部冷めちゃったね
「ししし!」
「うぅ、全部食べられてしまいました」
イグニス様、ドンマイ。
また後で美味しいご飯作ってあげるからね。
それはそれとして、このしーちゃんは何者なんだろうか。
その時、ペラリと魔導書が一枚捲られた。
<バグ=シャースの退散>
バグ=シャースを大人しくさせる。
必要な供物は本体のサイズによって増減。
親密度が5になると能力を模倣できる。
うーんコレ……
明らかにミルモちゃんが何かやったな。
アザトースの受肉の件もある。
もしかして今朝おばあちゃん達が和正しかったのって、神格がこぞって脱走したとか?
その手引きをミルモちゃんや他の誰かが請け負って、別のゲームに逃げ込んだとか?
まだ全貌はわからないけど、これは放置してたらやばい気がする。ご飯与えるだけで大人しくなるんなら私たち向きの相手ではあるけどね。
「ミルちゃん、後でお話があります」
「およ?」
「何かわかったの?」
「どうやらこのしーちゃん、AWOの神格の可能性が出てきた」
「ふぅん。やっぱりわかるんだ」
ミルちゃんの表情が、全く別の何かに変貌する。
これは、ナイアルラトテップ?
どうしてミルちゃんの中に!
いや、今はともかくなぜこのような事態になったかを解明する方が先決か。
「ミルちゃんの目的は何? アザトースは何を企んでるのかな?」
「人聞きの悪い言い方をしないでほしいかな。アザトース様は世界を見て回りたいだけだよ。最初こそは別のアプローチを考えてた。今はただの物見遊山だよ。ドリームランドの拡張は難しいからね」
ミルちゃん(?)は悠長に語る。
「じゃ、いいや」
「およ?」
「別に誰かに迷惑かけるんじゃなく、物見遊山でしょ? じゃあ私が何かをすることはないね。しーちゃんもちょっと手のかかる食いしん坊ぐらいだし、他もこのレベルの厄介さに抑えられてる。そういうことでしょ?」
「ははは。やはり君はこちら側の人間だったか」
失礼だね、私はいつだって中立だよ。
「つまり、どういうこと?」
「夢の世界から抜け出して、可愛いアバターを着て別のゲームを遊んでる感じだね。リアル世界からゲーム世界に遊びにきてる感じ」
「それってAWOのNPCが、という意味ですわよね?」
「そうみたいだね」
「それをミルちゃんが指導してるってこと?」
「これ、ミルちゃんじゃないよ」
「え?」
:どういうことだってばよ
:ミルモちゃんはミルモちゃんじゃなかった?
「このアバターはミルちゃんだけど、中に宿ってる魂はナイアルラトテップだと思う。確証はないけど、勘」
「え、いつものミルっちだと思ってた」
「確かにミルモさんにしては賢いように見えますわね」
「え、そうなの? この軽薄な感じはミルちゃんだよ」
:みんなしてミルモちゃんへの評価が低い
:もっといいとこ探そ?
:探した結果がコレなんだよ
:悲しいなぁ
:そりゃそうだよ
:よく友達続けてるなって対応してたし
:しょっちゅう離脱してたのはまさか乗っ取られてたのか
「え、別に乗っ取られてないよ? なんか契約? をしてたまに体を貸してるんだ。あたしはあたしのままだよ。ここ数日は用があるから貸してただけだね」
:草
:お前が契約したんか!
:それでAWOが大変なことになってる自覚はないのか?
「ないよ。あたしは面白いと思うことに全力をかける性分だから。多分そこが気に入られたんじゃないかな?──そういうことだよ」
お、中身変わったな。
ミルモちゃんが正気を失ったかと思ったけど、まさかの正気なまま肉体に契約を結んでいたとは思うまい。
「今回しーちゃんを私たちの前に連れてきたのは実験?」
「いや、この子が一番暇してたからね。能力のほとんどを封じて、自由に食事できる環境を探してた。ちょうど君、料理を生業にしてたじゃないか。それで懐いてくれたら計画は大きく進行する。君、どんだけ誘ってもドリームランドに来ないからね。悪いけど侵食度を底上げさせてもらうよ」
ぱらり、ぱらりと魔導書のページが捲られる。
記されたのは
<アザトース召喚>
供物なしでアザトースを召喚できる。
周囲一体が焦土と化す。
退散方法はアザトースとの親密度が5必要。
<ナイアルラトテップ召喚>
供物なしでナイアルラトテップを召喚できる。
邪悪な知恵を授かる。
退散方法は親密度が3必要。
などの項目である。
同時に記される侵食度、正気度の表記。
以下このようになっている。
─────────────────────────
魔導書『ネクロノミコン』
幻影:レイ
所有者:正気度分散人数(7/10)
ハヤテ、トキ、リノ、ミルモ、モミジ、ディノR2、アキル
侵食度 80
正気度 100
頁数 2
<召喚神格>
◇ティンダロス 召喚・送還:親密度5
◇アトラクナクア 召喚・送還:親密度5
◇女神イグニス 召喚・送還:親密度5
◇バグ=シャース 退散 :親密度0
◇アザトース 召喚 :親密度1
◇ナイアルラトテップ 召喚 :親密度1
<権能>
◇幻想装備
◇正気度ロール確定的成功
◇恐怖耐性
◇擬人化(恐怖耐性を成功した対象を女の子化)
◇EPO称号ジョブ持ち込み
◇ゲート(神格を別ゲーム内へ誘致)
─────────────────────────
知らない間にいろんな権能が生えている件。
レイちゃんやイグニス様の権能がこの一冊に勝手にまとめられてない?
まぁ全員に恩恵あるならいいけどさ。
というか、この下地を勝手に悪用したのがナイアルラトテップかな?
その使用者の一人に勝手に契約を仕掛けている姑息さである。
ミルちゃんも姑息なのでいいコンビかもね。
末長くお幸せに。
でも完全に思惑が外れたのは恐怖耐性と擬人化による弱体化か。
これで女の子になってなければ計画の一つは進んだのかもね。
何計画してるかわからないけど、今回ばかりはレイちゃんナイス。
うちの魔導書が迷惑かけちゃってごめんねー?(愉悦)
まぁこっちに迷惑をかける前提で暗躍してるそっちも悪いということで。
「じゃ、配信続けるよー」
「え、この状態で始めますの?」
葉ちゃんは嘘だろって顔をしている。
まぁ不安要素しかないもんね。
AWOから神格が脱出。
そのうちの一つが自分の配信のゲストに!
司会進行を任された葉ちゃんは気が気じゃない。
「特に私たちに影響なさそうだし」
「ハヤちゃんらしいね」
「ハヤテがいうんならそこまで気にしなくていいか」
葉ちゃん以外も概ね同意。
「ははははは、それでこそだ、盟友」
「勝手に盟友にしないで。どうせだし、このゲームを一緒に楽しんでいけば? しーちゃんの求めるご飯と出会えるかもだよ?」
「ししししし!」
これは了承でいいのかな?
:この器の広さがハヤテちゃんの魅力か
:アザトースとナイアルラトテップを丸め込む胆力
:これが女子中学生だって?
:人生二周目かな?
:俺人生二周目でもアザトース相手は無理だわ
:俺もだよ
慣れたらいけるよ。
そんなこと言ったら私は一周目から仲良くさせてもらってるけどね。
そんなわけでレッツゴー。
「|◉〻◉)ノあ、そうだ。ハンターの称号以外の仮付け受け入れます」
「え? 私は『剣豪』使いたいから今回もレイちゃんに貸す気満々だったんだけど」
「|ー〻ー)それはもう魔導書に書き込んだのでいつでも使えます」
:いつでもって何?
:え、セットしなくてもハンターの効果が?
「|◉〻◉)利用可能です。使うと侵食度が1上昇しますけど」
「侵食度って何?」
「AWOにおける信用度みたいなものかな?」
ドリームランドでの適応率なところもあるから、決して嘘じゃない。
「使えば使うほど信用されるの? お得だね」
「違うよ。使えば使うほど後戻りできないタイプの信用が貯まるんだよ。決していい感じの信用じゃないよ」
「何それ怖っ」
「ご利用は計画的にね」
よく話を聞いた感じでは、権能による枠の開放に侵食度を使用。一度解放すれば以降使いたい放題とのこと。
今までこの項目が見えなかったのは侵食度が低すぎたとかで、水面下では進んでいたらしい。
レイちゃんもなんだかんだ秘密主義だよね。
バラしたら面白くないのかもしれないけど。
それを運用するの私たちなんだから、そこら辺はお話ししてほしいかな。
「ではわたくしの『幻惑』をお貸ししましょう。もしかしたらレイさんの武器を具現化できるかもしれませんわ」
「|◎〻◎)! 僕も戦闘に参加できるかもってことですか?」
前回は威嚇だけにとどめてたもんね。
それも対して効果が振るわなかったけど。
けど確かに葉ちゃんの『幻惑』なら、武器の具現化も可能か。
「以前は参加されていなかったのは武器が透過されてしまう点だったはず。しかしわたくしの『幻惑』でしたら、見えない、存在しないものをまるでそこにあるように判定させます」
「|>〻<)借りまーす」
そういうことになった。
レイちゃんの興奮具合に、私の『豪弓』を貸そうという目論見は見事に消え去った。
そんなこんなで愉快な仲間を連れての害獣討伐。
今日は全員罠術で登録。
今の状態はこんな感じだ。
剣術 弓術 罠術
ハヤテ 10 10 6
トキ 10 10 4
リノ 10 10 3
葉 10 10 10
紅 10 10 10
ミルモ 1 6 4
ディノ 10 10 10
ユキハ ? ? ?
ディノちゃんがクリアをしたという情報を聞いたのでマックス。
ここにユキちゃんが参加することで未知数。
さて、問題のミルモちゃんだが。
「ミルちゃん、実は今ディノちゃんがEPOに参加しててね。そこで今日始めたばかりのプレイヤーと一緒に冒険してるの」
「うん、それで?」
「私たちがストレートに罠術をクリアした後、そっちに参加して後追いして」
:まぁ武器レベルがこうまで離れるとな
:2日参加しなかっただけこうまで差がつくのか?
:基本飯しか作ってないのにおかしいな
:なんならEPOは丸一日遊んでないから実質遅れは1日なんやで
:1日でこの差か
:ハンターが悪いよ
:大体全部称号スキルが悪いでFA
:ハンターも幻惑も剣豪も剣聖も強かった
:みんな剣豪狙いに行ったからな
:剣聖も特定場面で輝くから!
:ハヤテちゃん豪弓の検証もよろしく
「まさかの追放宣告! あたしがいないとしーちゃん大変だよ?」
「大丈夫、食いしん坊の扱いなら慣れてるから。私がいっぱい料理するだけでいいから楽ちんだよ」
「ちょっとやそっとの食いしん坊じゃないよ?」
え、大丈夫でしょ?




