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Atlantis World Re:Diverーバグから始めるVRMMOー  作者: 双葉鳴
【ミルモの章】8/4【火】WBO、EPO_配信5日目

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309/319

309話 夜ゲーム部_7【WBO】

「いやぁ。ご苦労様。特に苦戦なく来ることができたね」


 無事、山越えの街に到着。

 当初はどうなることかと思ったけど、無事辿り着けてよかった。これで時間の都合で後回しにしていたレシピをマスターできるぞ!

 味見役も増えたし、いいことずくめである。


「防戦一方で僕は何もできてないけどね」


 リョウ君は少し不満気。

 今回は防戦一方で活躍の機会がなかったのが納得いかないらしい。


「あら、そう気落ちする必要はありませんわ。わたくしだってタンクですが、あなたが率先してヘイトを買ってくれたおかげで動き回ることができましたもの」

「うんうん、葉ちゃんが動き回れたのは涼君の立ち回りが完璧だったおかげだよ」

「そうかな?」

「あまり自分を卑下するのは損ですわ。ただでさえタンクはそんな役回りですもの。いつもなら同じ役割が被ることをあまり快く思わないのですが、あなたの立ち回りを見て自分の不足している場所を確かめられました。どうもわたくしは攻めっ気が強いのが難点なようです」


 自覚あったんだ。


「そんなことないよ。でも、ありがとう。モミジちゃんにそう言ってもらえて少し自信が持てた。ハヤテちゃんもお気遣いありがとうね」

「私はむしろ守ってもらった側だからね。かっこよかったよ、リョウ君」


 リョウ君は照れ臭そうに頭をかいていた。


「しかしあの武器はなんだ? 直剣が棍棒に変わったり、大斧に変わったり千差万別だったな。それもお友達が作れてくれたのか?」


 守られていたもう一人、ランディ君は千差万別なようちゃんの働きを食い入るように見つめていた。

 あれは武器がどうこうより、幻想装備だね。

 ディノちゃんは関わってないよ。

 なんなら多様性で翻弄するのが目的だし。


「ご興味がありまして?」

「俺もそれを作りてぇ。武器を見せてくれ」

「嫌ですわ」

「ケチケチすんなよ」

「だってあなたに渡したら壊しそうですもの」

「はー? 壊さねーって!」

「いやですー」


 ランディ君は少し背が低いのを誤魔化すように髪をツンツンさせているのか。

 それも相まって、長身の葉ちゃんは背伸びして武器を上の方にあげた。

 まるで子供を揶揄う大人だ。

 ただ、彼女がああまで否定している理由は自分でも仕掛けがわからないからだ。

 ただでさえ幻想装備という特級呪物を露見させていいのかという迷いもある。

 君もドリームランドに行かないか? なんて誘えるわけないもんねぇ。

 そもそも誘ったとして他のメンバーが受け入れるかだよ。

 お姉ちゃんはともかくとして、リノちゃんは嫌がるだろうなぁ。


 そういう意味ではまず露呈させる理由がないんだよね。


「じゃ、私調理ギルド行くから」

「いってらっしゃい。味見とかでいいなら手伝えますわよ?」

「おー、助かる。リョウ君もどう?」

「いいの? 実は結構お腹ぺこぺこで」


 葉ちゃんもリョウ君も少し小腹が空いたと申し出た。

 けどもう一人、ランディ君は別行動を取ると言い出す。


「俺はちょっと親から呼び出されてさ。悪いけどまた今度でいいか?」

「まぁ夜も遅いからね」

「そういうんじゃねーよ。なんかじいちゃんがこっちで遊ぶからチュートリアルにこいって話でさ」

「あー」

「なんか今流行ってるの?」

「わかんねーけど、傭兵システムで呼び出したい人がいるみたいだぜ?」


 よくわからないけど、ランディ君はここでお別れみたいだ。

 しかしおじいちゃんといえば森のくま君だよね?

 私に会いに来たって感じじゃないみたいだけど。


「葉ちゃん、何か聞いてる?」

「わたくしが知るわけないじゃないの」

「だよね。まぁフレンド交換したしまた会えるか」

「あいつに振り回される被害者が増えると思うと今から胃が痛いよ」

「リョウ君てば心配しすぎー」


 自分のこと以外で胃を痛めてると将来辛いよ?

 

 さて、時間加速の課金アイテムを使ってちゃっちゃとマスターしちゃうか。

 まずは熟練度6まで溜まっていた味噌を、

 300円課金して買った加速アイテムを4個使ってマスター。


 残り6個で焼豚の熟練度を6まで上げる。


 さらに課金を加速して、味噌の発生系の醤油をマスター。

 これはストレートに10個使った。

 流石に一個制作するのに3日かかるのは想定外。

 3日で出来る醤油もなかなか信用できないけど。


 さらに課金して熟練度7まで上げてた塩麹をマスター。


 残り7個をローストビーフの熟練度上げに使った。


 締めて900円。

 あっという間に使い切ってしまった。


 しかしおかげさまでここで解放されたレシピはいい感じにマスターできている。

 みんなが課金に囚われるわけだ。

 でも使い過ぎには注意しないと。


<山越の街>

★ソーセージ_Master(1回:30分)

★ベーコン_Master(1回:3時間)

★★ハム_3(一回:2日)

★塩麹_Master(1回:1時間)

★★味噌_Master(1回:45分)

★★★醤油_Master(1回:3日)

★焼豚_6(一回:3時間)

★★ローストビーフ_7(一回4時間)


 そのついでに焼豚を仕上げる。

 とろとろホクホクのチャーシューを炊き上げたご飯の上に贅沢に乗せて、ネギとカラシを乗せてリョウ君の前に置く。


「お待たせー。男子はどんぶりが好きかなって、ありきたりでごめんねー」

「ううん、これぐらいなら食べられるから大丈夫」

「焼豚はじっくり煮たからお箸で切れるかも。カラシはお好みで。脂っこかったらつけて食べるとさっぱりいただけるかも」

「説明ありがとう。このゴマは?」

「香ばしさプラスだね」


 脂っこさがとにかくきついから。

 男の子なら食べ切れるかな?

 多分、きっと、メイビー。


「まさかわたくしもこれが出てくるのでしょうか?」

「葉ちゃんのはないよ」

「あら」

「お預けじゃなくて、他のメニューを用意するからまってて。その分手間暇かけるから」

「楽しみにしておりますわ」


 葉ちゃんを待たせつつ、私は湖の街で仕上げたお稲荷さんの残りにご飯を詰め込む。もちろん見た目通りの代物じゃない。一口サイズにしているのがポイント。葉ちゃんはお嬢様だから巨大肉にかぶりつくのをよしとしないからね。


「おまちどうさま」

「先ほどの蕎麦いなりですの?」

「のんのん。食べてみてからのお楽しみ。私はこれでフレンチを再現したんだ」

「どこからどうみてもお稲荷さんですが?」


 なんならさっきご飯も仕込んでたしね。

 でもそれも含めて仕掛けなのだ。


「この一口サイズを売りにしてるからね。出先でも食べやすいように工夫したんだよ。次々出すからね」

「まぁ良いですが」


 まずは一皿目。

 葉ちゃんはお箸で摘んで口の中に運ぶ。


 シャクッ、シャキシャキ。

 トロッ……ジュワッ。


 一口目はシャキシャキした野菜の歯応え。

 しかし噛むうちにクリームコロッケのとろりとした食感が口の中に溢れる。


「あら、あらあらあら。驚きましたわ。この一口サイズの中にこれだけのギミック。末恐ろしいお方ですわね」

「面白いでしょ? サラダを仕込むだけでは芸がない。中に意外性を含ませておくことで合わせた時の味わいを産むんだ」

「ハヤテちゃん、僕にもそれ食べさせてくれる?」

「焼豚丼、お残ししないんならいいよ」

「もちろんだよ」


 葉ちゃんの驚きの様子を間近でみていたのもあり、この中身の見えないお稲荷さんもどきを口に運んでから、リョウ君は目を閉じて咀嚼した。


「ああ、これはすごいね。上手くいえないけど、意外な組み合わせで面白い。けど少し油が重いかな」

「うん、これは口直し前提の突き出しだから。そのよこのお稲荷さんを食べてみて」

「これは、少し掴みにくいね」

「あぁ、これは煮凝りですわね」

「煮凝り?」

「骨髄を煮出したスープが固まったものだよ。スープを薄めにしてあるから、口直しにちょうどいいの。お弁当にも最適!」

「そうなんだ。すごいね」


 葉ちゃんに続いてリョウ君が口に運ぶ。


「このスープは?」

「オニオンスープだよ」

「ああ、安心する味わいだ。しかしこれがジュレとして出されるか」

「フレンチ風だからね」

「見た目詐欺にも程がありますわね」

「他の2個が楽しみだね」

「コロッケとジュレなのもあって、あまりお腹は膨れませんが」

「あんまり一個にガツンとした重量を仕込まないようにしたよ」


 フレンチって少量を楽しむものだからね。

 お稲荷さんのサイズはちょうどいいのだ。


「ああ、ずっしりしたお肉だ」

「あら、あなたのはそうですのね。わたくしの方はジューシーなお魚ですわ」

「そりゃ人によってメインは変えるよ。リョウ君はお残ししないって前提だから加減しないでお腹いっぱいになってもらうつもりだから」

「うっ」


 いいカッコしすぎたかもしれない、などとぼやいている。


「焼豚丼のお残しは許さないけど、フレンチ風お稲荷さんはお持ち帰りを想定してるので残しても大丈夫だよ。冷めても美味しくというのがこの料理の想定だからね」

「ホッ」


 心底ほっとしていた。

 ちょっと欲を出したのが仇になったね。


 葉ちゃんが最後まで食べ切って、リョウ君も焼豚丼を全部食べたらお開きとなった。

 私の目的は達成したし、あまり夜更かししてもお肌に悪いと葉ちゃんはそれだけ残してログアウトしていった。


「リョウ君はこのままログアウト?」

「うん、そのつもり。あまり夜更かしできないし」

「まぁそうだよね。むしろお付き合いいただいてありがとうね。作ったのいはいいけど、いっぱい残ると困るんだ」

「また作りすぎちゃった時は言ってくれたら協力するよ」

「うん、その時はまた呼ぶね」

「じゃあ、僕はこれで」


 リョウ君はそれだけ残してログアウト。

 さぁ私もログアウトするかなと言った頃に玲音ちゃんからメールが来た。

 どうやら私が一人になるのを見計らっていたらしい。

 いや、普通にメールちょうだいよ。

 ご飯作ってる時に対応する余裕あるから。


 その後トレードで作り置きした料理のいくつかをクランにおろしたり、洞窟の街の報酬を提供したり、レインちゃんのお悩み相談をしてからログアウトした。








 ーーー





昭良(あきら)、ずいぶん長いことログインしてたわね」

「あ、お姉ちゃん。実はさ」


 こっそりゲームにログインしていたことが姉にバレた昭良はバツが悪そうな顔をした。


「またあの悪ガキに誘われたのね? あいつとは縁を切りなさいって言ったじゃない」


 姉の蜜璃(みつり)はランディのことが嫌いだ。

 いや、好きな人を探す方が難しいけど、と昭良は苦笑する。


「そんなとこ」

「その割に顔が笑ってるけど。何かいいことあったの?」

「え、そんなことないけど」


 笑っていたか? 自分では自覚がなかったが、もしかしたら微笑んでいたのかもしれないと昭良は自分のほっぺを揉み込んだ。


「そういえばおばあちゃんから招集が来てたわよ」

「招集?」

「そ、AWOで戦争が起きてるって話。あんたも来なさい」

「今から?」

「今は一人でも多く助けが欲しいそうなのよ。お母さんも今日ばかりは夜更かししても許してくれるらしいわ」

「うちの家族はAWOにだけゆるいよね」

「ひいおじいちゃんから受け継いだものを守らなきゃいけないからね」

「ひいおじいちゃんね……」


 アキカゼ・ハヤテ。

 偉大なるプレイヤーにして、うちの家族が妄執している存在。


 昭良には存在が遠すぎてそこまで尊敬できるものではない。

 しかし家族が傾倒していて。

 馴染めない自分は異物のような感覚を持っていた。


 姉に倣ってログイン。

 今日は普段なら寝ている妹まで出場だ。


「遅いよ、お兄ちゃん」

「ごめんごめん。今他ゲーを漸くログアウトしてね」

「WBO?」

「それそれ」

「来たわね、リョウ」

「うん、それで? 僕にできることってなんだろう?」

「今ドリームランドは混迷を極めているの。あなたの魔導書『セラエノ断章』が必要だわ」


 昭良は断る選択肢がないまま、祖母の頼みを飲むことになった。


 ハヤテより持たされたお弁当が冷め切る前に、またWBOのちを踏むことができるだろうか?


 そんなことばかり考えて、ベルトに魔力を流し込んだ。


『変身』


 リョウはその身に神性を宿し、ドリームランドへと続く門に銀の鍵を差し込んだ。

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