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Atlantis World Re:Diverーバグから始めるVRMMOー  作者: 双葉鳴
【ミルモの章】8/4【火】WBO、EPO_配信5日目

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308/317

308話 夜ゲーム部_6【WBO】

 特に問題なく湖の街に着く。


「いやぁ。楽勝だったね」

「お前強いな。防具作ってやろうか?」

「必要ありませんわ。お友達が作ってくれた装備がありますもの」

「なるほどな。その制作者を教えろ。とりあえず俺の打倒ノートに書いておく。ライバルは多ければ多いほどいいからな!」


 リュウ君曰く、誰彼構わずこうやって勝手にライバル扱いされるだけでなく、ことあるごとに突っかかっては勝つまで挑み続けるのだとか。

 何がランディ君をそこまでさせるのかわからないが、ライバル視される方は大変だ。


「やめておいた方がよろしいですわよ。その方、ろくに手元を見ないで精錬+5を成功させる方ですもの」

「は? 俺もできるが?」

「できないでしょ、嘘言わないの」

「あはは、ランディ君おもしろーい」


 そんなやりとりをしながら、お礼のご飯を制作する。

 合間合間に味噌を作っているので、なんだかんだ無駄な時間を過ごしているわけじゃない。

 これらのレシピは制作するのに異様に時間がかかるだけで、その時間にログインしてるんなら特に難しいものではないんだよね。


「さて、料理作るけど何がいい?」

「お嬢様が知ってるかわからないけど、蕎麦いなりって知ってるか? 俺はあれが好きでな」

「おまっ、ハヤテちゃんがそんな渋いメニュー知ってるわけないだろ。先に好き嫌いが多いのを明言しておいて、相手が知らないであろうメニューを出すのは人が悪いぞ?」

「うるせー、俺は俺が好きなものしか食いたくないんだよ。もちろん、知らないって言うんなら別のメニューを考えてやるが」

「いいよ、受けてたつ」

「おっ」


 ランディ君は挑戦こそ生産の花という考え方だ。

 今回は友達だからこそ、こうやって無茶振りの形。

 これがお客さんからの注文だったら、料理人としての信用を失う形になる。

 いわば実践形式。


「今はまだ修行中の身とはいえ、私もいつかはお店を持つことを目標としてるからね。そこでお客様からの注文を知りません、できませんでは誠意がない。それを見越して注文してくれてるんだよね?」

「流石だな」

「もちろん。これは私への挑戦状だから」


 再びガシッと力強い握手。

 

「ハヤテちゃん、こいつのわがままに付き合わなくていいからね?」

「あはは。こと料理に関しては私の領分。もし知らないお題を出されても、それをどうイメージするかも含めて私の糧になるからね。何も悪いことばかりじゃないんだよ」

「そっか。ハヤテちゃんはそれを苦と思わない人間だったね」

「むしろ、身内からの注文は私の知ってるやつに合わせてくれるから。ずっと楽してきた。そういう意味ではランディ君は武者修行の相手としてちょうどいいんだ」

「わたくしももっとメニュー攻めましょうか?」

「あ、葉ちゃんはもう少し手加減を覚えて」


 素材ない時にマルゲリータを注文したことまだ忘れてないから。


「まずは素材選び。蕎麦いなり。名前から察するにお蕎麦と、お稲荷さん。この二つをどうまとめるかは私の腕の見せ所」


 まずは蕎麦を茹でる。

 その間に油揚げを麺つゆに浸しておく。

 ここで取り出すのはつゆをジュレ状に処理していくことだ。

 ネギ、からしを用意し。

 麺の硬さを見ながら湯から引き上げ、水切り。

 冷水で引き締めてそれを一つにまとめてお稲荷さんにまとめる。

 前回一度仕上げたものからさらにアレンジ。

 良く炒ったゴマをすりつぶし、蕎麦いなりにパラパラと乗せる。これは風味づけだ。

 皿に3個乗せ、からしとネギを添えて人数分提供する。


「どうぞ、お召し上がりください」

「どうしてこの形がわかった?」

「お稲荷さんはご飯を入れる。けどそばの収める場所がわからない。蕎麦の上に油揚げを置くのはきつねそばって言うんだよ。決して蕎麦いなりじゃない。じゃあそばはおいなりさんのように油揚げに入れるんじゃないかと思った」

「正解だ」

「正解なの?」

「ああ、問題があるとすれば一つ。なぜ食い盛りな俺たちに3個でいいと?」

「こうやって注文をつけるお客さんは、きっとあれこれ理由をつけていろんなお料理をさせると思ったから。私もいっぱい作りたいし、もちろんいっぱい食べてもらうつもりで今回はこれだけって意味だよ」

「そこも含めて気に入った! 食おう、リョウ」

「なんでお前が仕切ってるんだよ。ハヤテちゃん、いただきます」

「召し上がれ」

「いただきますわ」


 葉ちゃんは手慣れた感じに口に運ぶ。

 まずはそのまま一口。

 次はおネギを乗せて、最後にからしをお稲荷さんの先っぽにつけてから口に運ぶ。

 食べ方一つとってもお行儀いいんだよなぁ。

 男子たちが葉ちゃんの食べ方をガン見してるのが印象的だった。

 

「このジュレのお汁がいい感じに口の中でお蕎麦を作ってくれていますわね」

「ああ、これはやばいぜ。今まで食ってきた蕎麦いなりの派生系だ。お嬢さん、あんた蕎麦いなりを知ってたな?」

「あはは」


 私は笑って誤魔化した。


「美味しいなぁ。ランディ、お前はもっと味わって食えよ?」

「貧乏くさいこと抜かすなよ。うちの家系は金持ちの系譜だ。世のグルメなんか食い飽きてるんだよ。むしろこう言う失伝した料理を求めてやまないんだ。うちの兄弟はありきたりなもので満足しちまってるが、俺は違う。むしろこう言う失いつつある伝統を大事にしてるんだよ。その中でこの蕎麦稲荷は手で摘んでガッと放り込むのが作法なんだよ。な?」


 そんな作法聞いたことないけど。


「好きに食べればいいと思うよ。私は提供するまで、食べ方まで口を出さないから」

「あんた、最高だな。名前を覚えてやるよ」

「ハヤテって言うんだ」


 さっき自己紹介したと思ったけど、ずっとお嬢さん呼びだった時点で『覚えるまでもない』と言う認識だったに違いない。

 そう言う人、いるよね。

 頭の中に記憶するのに一定以上の評価を得ないといけない人。


「俺はランディ! うちの親父が寺井グループの幹部でさ」


 おー、ジキンさんとこの系譜。

 威勢の良さは納得だ。

 しかし納得できないとばかりに身を乗り出す人が一人。

 モミジちゃんだ。


「あら、ではうちのお父様のご親戚ですの?」

「は? お前誰だ」

「改めてご紹介いたしますわね。わたくしはモミジ。天上院家の息女ですわ」

「あ、天上院てケンタおじさんのとこか! あーあー、なんか見たことあると思ったら」

「そう言うあなたはどこの方ですの?」

「うちはその親父さんの兄弟の三番目だよ」


 あの5人兄弟の三番目?

 え、『森のくま』君のお孫さん?

 あそこの娘さんの話は聞いたことがあったけど、そこの息子さんかぁ。


「なんだか世間の狭さを感じるね」

「ハヤテちゃんはそう言うの気にするタイプ?」

「どうかな。どちらかといえば、この広い世界で奇跡的に出会えたことを感謝するタイプだと思うよ。その世代って兄弟多いことあるし。しかも2世代も前の話でしょ? 私たちはお母さんより先の話になると頭がついていかないよ」

「僕も。ハヤテちゃんが遠い親戚だって言われてもピンと来なかったから」

「え?」


 リョウ君は勿体ぶって口を開いた。


「僕のおばあちゃんね、ハヤテちゃんのおばあちゃんの姉妹だったらしいんだ」


 それをご両親かおばあちゃん自ら聞かされたみたいだ。

 うちのおばあちゃんの姉妹の一番上とか前世の長女だよ。

 うわっ、リョウ君はシェリルの孫か。

 そっか。

 うわー。

 

「へー」

「軽い感想ですわね」

「いや、さっきも言った通りだよ。アキルちゃんとだって随分と遠いけど親戚だった。親が兄弟まではわかるんだけど。おばあちゃんの姉妹とかまでいくとちょっと理解が拒む」

「わかるよ。僕もずっと視線で追ってた子が遠い親戚だって言われてショックを受けたけど」

「あら?」

「ハヤテちゃんが気にしてないんなら、それでいいかなって」


 葉ちゃんが何かに気がついた。

 何? リョウ君を狙ってるの?

 やめた方がいいよ。

 シェリルおばあちゃん、手加減ってものを知らないし。


「それで、ここでのご飯はどうする? それともいよいよ山越の街に向かう?」

「そうだな。わりかし腹いっぱいになったし先に進んでもいいぜ。な、リョウ?」

「なんでお前が仕切ってんだよ。まぁ僕がタンクだからだろうけどさ。あ、ハヤテちゃん。フレンドいい?」

「いいよ」

「俺も」

「ランディ君は名前を覚えておく相手には誰でも申請してるの?」

「そりゃ挑むべきライバルの唯一の手がかりだからな」

「葉ちゃんもいるじゃない」


 肩をすくめてやると「説明するまでもないが」と前置きを置いてから口を開く。


「そっちのお嬢様は話にならなくて無理だ。でもあんたは、ハヤテは話がわかるだろ?」

「おい、せめてそこは敬称をだな」

「リョウ、女はこういう余裕のある男が好きなんだぜ? お前にはワイルドさが足りない。そんなんじゃ狙ってる女子を失い続けるぞ」

「そうなの、ハヤテちゃん?!」


 リョウ君が振り回されている。


「オラオラ系はごめんなさい。もっと誠実な人がいいです。味見に付き合ってくれるような」

「ほら、言ってるじゃないか。お前の恋愛観は古いんだよ!」

「ばかやろー、うちの母ちゃんはそう言う男を選んだって、俺にもそうあれって言ってたぞ?」

「お前のところの家族全員おかしいよ!」


 ヒャッコ君は逆に奥さんを立てる感じの家系だったからねぇ。

 リョウ君はそう言う家系で育ったのか、落ち着き払っている印象が強い。


「でもそれ以前に恋愛に興味がないって言うのが本当のところ。今は料理を極めて、あとはそれからかな?」

「そっか」


 リョウ君は急に勢いを失って意気消沈した。

 恋多き年頃である。


「お前は逆に棘がきつすぎて男がよってキそうもないけどな? なんあら俺がもらってやろうか?」

「そこまで自信がおありですと、さぞかし人生薔薇色でしょうね」

「お、わかるか? 人生楽しんだもん勝ちよ」


 のちの夫婦である。

 とかナレーションつけたくなるほど割とお似合いなんだよね、この二人。

 まだ素直になれないところも含めてさ。


 私は、まだ恋愛に向き合う状況じゃないしさ。

 そもそも生体アンドロイドが恋愛とかできんの?

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