301話 EPO配信!_酒場クエスト②
私たちの売り物は決まった。
基本的には液体での売り込み。
様はドリンクや調味料に特化させると言う手段だ。
串焼きや、焼肉など単純なものはあらかた出尽くしてると言うのが私の見解。
『調理師』にセットして実際に提供されたレシピを見たので間違いない。
そのためにも葉ちゃんから液体を封じ込めるカップやボトルの製作に打ち込んでもらいたい。
本当ならステージ3で陶器職人などを学んでほしいところだけど。
私たちの調薬セットを作ってもらったところだね。
あそこもジョブ解放クエストが転がってそうなんだよね。
とんと話を聞かないけど。
まずは木材で試作させて、そこから派生をいくつか作る。
問題は木材でどこまで清水に保存させることができるかなんだよね。
私は調味ダレをこの地域の名物にしたいと『商人』として売り込むつもりだった。
『調理師』として味付けを考えながら、それを複数製作。
そして制作者にレシピを渡して、長期販売権を『商人』として獲得。
酒場に納品すると言う仕組みである。
まずは肉の解体がメインになるので、納品された肉を串にさして焼くときにそのままのと調味液に浸して焼いたのと食べ比べをしてもらわねばならない。
そのためにも一度試食会を開く必要がある。
害獣討伐の集まりで許可を取って、それからはみんなで決めようと言うことになった。
やっぱり人によっては好き嫌いがあると思うからね。
:ここまでハヤテちゃん、食事レシピ提供なし
:出したいけど、地元食材を使ったレシピは出尽くしてるからな
:さっきドリンク作ってたろ?
:それは進行度影響しないから
:でもハヤテちゃんなら、ハヤテちゃんなら!
:熱い信頼
:これはやらかす方の期待の可能性が微レ存
「ハヤテー」
「ハヤちゃん!」
「お姉ちゃん、こっちこっち」
お姉ちゃんたちと無事合流。
獲物はネズミ〜イノシシまでと豊富だ。
ダメージを10に固定化されても弓術+剣術でどうにでもなるのが強いよね。
一撃必殺はリノちゃん。特殊防御タイプではお姉ちゃんが輝く。
「ハヤテは何かレシピ考えた?」
「それなんだけど」
私は考えを話す。
:え、調味液を!?
:いや、ありだな
:そうか?
:特定の味付けって飽きるしな
:まさかそこまで考えてバナナスムージーを?
「バナナスムージーって何!? 飲みたい」
「うん、なんだか急に飲みたくなってきた」
このENが設定されてないゲームで急にそんなことを言うのは目に見えていた。
材料はあるのでパパッと作ろう。
「調理台はありますの?」
「あ、ないや」
「でしょうね。AWOやWBOほどこのゲームは利便性が高くありませんもの。それを見越してわたくしは『石工』になったのですわ。高さ指定をご教授くださいまし」
「え、じゃあ私の腰くらい」
「賜りましたわ」
葉ちゃんは私の足元から腰までの寸法を指で測って、ストレージから出した石塊を剣術の『スラッシュ』で切断。
テーブルというにはあまりにも無骨な台が出来上がった。
「これは便利」
「でしょう?」
「欲を言えば凹凸なくまっすぐが良かった」
「それは欲を出しすぎですわ。石を削って洗い場の施工も請け負いましてよ」
「じゃあお願い」
「承りましたわ。それと狩猟で疲れた皆様に椅子をご用意いたしましょう」
「石を膝の高さで切っただけだ!」
お姉ちゃんのあまりにもまっすぐな反応。
「でもまぁ地面に座るよりはね」
「今はこれでご勘弁くださいまし。いずれ木材を使った椅子をご用意して見せますわ」
「じゃあその時を楽しみにしてるね」
「ええ」
:有能葉ちゃん
:そのための石工
:岩ホーミングだけじゃなかったんだな
:むしろその扱い方の方がおかしいっていう
:そういえば木工職人も持ってたっけ
:万能すぎひん?
「リアル技能は持っていても損はしません。それをハヤテさんたちから学んでいたのですわ。時さんのお料理も随分と上達しましたし、わたくしだけじっとテーブルに座っているのも性に合いません。遅ればせながら参加させていただきました。それと最近フィッシングも始めましたのよ」
ロッドを振る様な仕草。
釣竿は自作するようだ。
木工職人はそのために取った可能性すらある。
あの人昔から釣りバカなところあるからな。
「お肉のほかにお魚かー」
「|◉〻◉)お魚!」
「あ、レイちゃんおかえり」
「|◉〻◉)ノただいま」
「今までどこに行っていらしたの?」
「|ー〻ー)コメント欄で雑談してました」
「自由な人ですね」
「|///〻///)ヾでへへ」
「褒めていませんわよ」
「|◎〻◎)!」
:レイちゃん
:顔に感情出しすぎや
:コメントでも面白いけどリアルの方が面白い子
:大体どうでもいい情報で話題逸らされるけどな
「|ー〻ー)そんなことないです。あとで友達のちくわ大明神を見せてあげますよ」
「その時は是非、ご参席させてください」
:イグニス様! だめだ、この人騙されてる
:そんな神様いません
「|◎〻◎)いるもん!」
「あまりレイさんを困らせてはいけませんよ? いると信じていればいなくても生えてくる。神性を宿し、生まれてくるのがわたくしたち神ですから」
:まじなん?
:じゃあ、俺も信仰しようかな
:ちなみにご利益は?
「|◉〻◉)お魚を食べても小骨が喉に引っ掛からなくなる。小骨がちくわになるからですねー」
:どう言う理屈だ?
:逆に小骨がちくわになる方が喉に与えるダメージ高い件
:それwww
「|◉〻◉)誰が魚のサイズが僕たちくらいと言いました? 深海生物全域の小骨が、僕たちでも噛み切れるサイズのちくわになります。エネルギーが超凝縮されて、食べたら数日食べなくてもいいくらいのパゥワーをもらえるんですよ。クトゥルフ様に次ぐルルイエで信仰されてる神様なんですから。ちくわはいわば僕たちのソウルフード!」
それって共食いじゃないの?
まぁ海では弱肉強食だから問題ないのかもだけど。
:待って
:それルルイエで信仰されてる神様なのか?
:宗教理念バグってんのか?
:いや、今クトゥルフ様お眠りになってるから
:だから代理の神を?
:不敬にも程があるだろ
:クトゥルフ様がお目覚めになったら粛清されそう
さすがレイちゃん、話を明後日の方向に持っていく天才か?
今やもうコメント欄の話題はちくわ大明神の有無より崇拝するかしないかの議題にすり替えられていた。
「お待たせー」
「待ってた」
「なんかNPCからジロジロ見られてるね」
「突然現れた石のテーブルが気になるんじゃない?」
「だろうね」
「このコップは……木の皮?」
「うん、葉ちゃんに加工してもらったバナナののコップ」
「へぇ」
お姉ちゃんは珍しいものを見る様にコップの側面を見ていた。
木の皮で作ったにしては今のところ水漏れをしていない。
一体どんな構造なのかとチェックしてるみたいだ。
まぁ使い捨てなので陶器のコップレベルのものを求められると困るんだけどね。
「バナナスムージーのコップがバナナの木なのはなんかオシャレだね」
リノちゃんは言葉を選んで反応をくれた。
でもね、これ自体は切実な問題なんだよ。
「これを世間では抱き合わせ販売というんだ」
「抱き合わせ販売?」
:これそんなに姑息な商売なの?
:ハヤテちゃん的にはそう思ってないけど
:人によっては姑息に見えるかもって話かな?
:わからん
「欲しい商品の他に、いらない商品がついてくること」
「どこが抱き合わせなの?」
「これは初回だからバナナの木の皮のコップと葉っぱで作ったストローがついてくるんだけど、2回目からはスムージーだけでいいいって人は出てくるんだよ。前回買ってくれた人にはコップもストローもあるからね」
「あ、そうだね」
:まぁなぁ
:そこは商売してるとぶち当たるところではある
「でも私たちはこのスムージーとコップとストローを一つの商品として見てるから、一回買った人から見たらコップとストローは要らない商品なんだよ」
「うーん? ゴミに出しちゃうかもだから、あるのは嬉しくない? 飲むにもコップって必須だよね?」
:それはな
:カフェとかでコップがない状態は想定できない
:特にステージ4は時代が古いからな
:ああ、そういう縛りもあった
「人によってはコップもストローもあるから欲しいのはスムージーだけになる。けどセットで販売してるから、コップもストローもいらない人はこう考えるんだ。それらはいらないからスムージだけ安く売って欲しいって」
:いるいるw w
:この時代の人間がそこまでずるくなるか?
:プレイヤーには要るだろ
:クレーマーに多い傾向にあるね
:あいつら言ったもん勝ちなところがあるから
「あ、そうか」
「でも私たちは持ってない人を前提に販売してるから、割引交渉には応えられないんだ」
「だね。私でもそう思う。ハヤテはこれを抱き合わせって考えちゃうんだ?」
「そうだね。本当ならマイカップみたいなのをみんなに持ってもらえたらいいんだけど。時代が時代だから」
:ステージ3はガラスや陶器がかろうじてあったけど
:ステージ4はステージ3のアイテム持ち込むのに神秘使うからな
:つまり過去
:未来には持っていけるってルールだから
:なお、劣化する模様
:瓶に封じ込めてないと蜂蜜は枯れます
:枯れるってなんだよ
:保存が効かないからな
:正直持ち越せるアイテムってあるの?
:薬品の粉末なら持ち込めるぞ
:枯れる前に枯らせばいいのか
:それは盲点
:フリマも神秘使用してなら出品できるようになったよな
「なるほどね、他で買うこともできないから、飲みたいならここで買うしかないってことか」
「うん。それとバナナの木って身をつけたら枯れちゃうから勿体無いかなって」
「え、バナナの木ってそうなの?」
「木とは言ってるけど、実際は草なんだよ、あれ」
:この世の不思議である
:まぁ木っていうより植物だからな
:めちゃくちゃ硬くなって木に見えるだけの草だよ
:草www
:草に草を生やすな
:いちごの仲間だから
:いちごの仲間!?
:それほんまなん?
:いちごの仲間は嘘でしょ
言い得て妙だけど、理屈はわかる。
いちごも花が実をつける過程で役目を終えるからね。
それが次のいちごの目になるという意味では一緒か。
なかなか納得はできないかもだけど。
「そっか、だから枯れちゃう葉っぱと木をそのまま加工して一緒に売り込むつもりなんだ」
「そういうこと。けど人によっては中身のドリンクだけでいいって言われかねないから、この商売は誰かに引き継ぐ前提だよ」
「引き継ぎ?」
:それはどういうこと?
:まさか取り分を地元住民に丸投げするってこと?
「端的にいえばそういうこと。結局私たちはステージを移動してすぐに先に行っちゃう。それじゃあここの酒場に大きく貢献はできない。ではどうするかと言われたら、技術を住民に提供する。そうすることで持続的に酒場を維持できるんじゃないかって考えてる。私はスムージーのレシピを。ストローとコップは葉ちゃんの木工職人を」
:まさに歴史の一部になるってことか
:ここの開発が切実に願ってたことだな
:ハヤテちゃんは率先してそれをやるか
:俺らも負けてランないな
:率直に調味ダレがどういうものか気になる
「それはお肉を実際に焼きながら教えます。お姉ちゃん。枝肉を細かく切って、串に刺すのを手伝ってくれる?」
「串焼きだね!」
「私もやるよ」
「もちろんわたくしも協力しますわ」
それからはお肉を切ったり串に刺したりで時間を消費した。
凝ったレシピは必要ない。
肉を消費するならばこれぐらい単純でいいのだ。
今回あえて調味ダレに特化したのは誰でも参加してもらうのを前提としていた。




