300話 EPO配信!_酒場クエスト
お姉ちゃんとリノちゃんは私が料理するためのお肉を獲得しに、葉ちゃんはフリマを開いて酒場を興すための買い付けを始めた。
しかしすぐに顔色を悪くする。
それもそもはず、買い付けるにも手元に商品がない状態だ。
「ハヤテさん、何か物々交換したくなる商品はございませんか? 姉様ほどは求めませんので」
「なんで引き合いにお姉さんを出してくるのかわからないけど、とりあえず売れるものがないか見つけてみよう。バッファロー討伐で捜索エリアも広がったし」
「リノさんがいなくてもハンターは?」
「|◉〻◉)僕が持ってます」
「だ、そうだよ」
そういえば来てたんだっけ。
害獣討伐でキャラ出してこなかったから忘れかけてた。
「なら大丈夫ですわね」
「念の為、農家をセットしといて」
「素材理解を得るのでしたっけ?」
「そうそう」
:そんなのあるの?
:農家って収穫+2の人だけじゃないんだっけ
:薬師なら薬師の専門知識ってあるから
:確か野菜や果樹に関する履歴が頭にすぐ思い浮かぶだっけ?
:そういうのはセットしてなくてもわかるもんじゃないの?
:セットしてないと視界から消える
:セットすると急に思い出す
:ままならねぇなぁ
そうそう、意外と使い勝手悪いんだよね。
ジョブを付け替えるだけでいいから楽だけど。
「農家でしかわからない情報ってあるからね。それにセットしておけば同じ畑仕事をしてる人から情報聞けるかもだし」
「それは盲点でした」
「しっかりしてよ、社長令嬢」
「今までは願うだけでなんでも手に入ってきたのですわ」
:葉ちゃんすごいこと言ってる
:まぁお金持ちのお嬢様だし
:それを言ったらハヤテちゃんもそうじゃないの?
:え?
:あまりにも俺らの平行線で見てた
:やることなすこと明後日の方向にぶっ飛んでくもんな
:やめろ、一緒にするな! ノット俺らだろ
一緒にするなは酷くない?
泣いちゃうよ?
:そういえばハヤテちゃんのおじいちゃんはAWOの重鎮だったな
:別ゲーの話持って来んなよ リアルの話してんだよ
:でもゲームでも孫のために100億の借金はせんでしょ
:それは、まぁ、うん
:そんな決断できる親が一般人?
:散財癖でもあんのか?
言われてるよ、おじいちゃん。
そんなこんなでエリア探索。
プライベートサーバなので誰とも出会わないのは精神的に楽ちんだ。気を遣わなくていいからね。
「まずはここらへんでビビッと来たのを適当に見繕っていこう」
「適当なことを言わないでくださいまし」
「バカだなぁ。商人なんてそれに価値をつけるのが仕事だよ? 需要なんて自分で作ってなんぼでしょ。まさか商人が誰かの褌に乗っかって相撲を取るだなんて真似しないよね? 流行は生み出さなくちゃ」
「言ってることが相当悪辣でしてよ?」
「顧客から絶賛されてる私の料理を信じて。あとはそこに御涙頂戴のエピソードをくっ付ければ飛ぶように売れるよ。頑張れ社長令嬢」
:それを、配信で、言うな!
:リスナーが見てるんだぞ!
:実際商売ってそういうもんだしな
:それに踊らされてる俺ら
:別に泣けなくても美味けりゃ買う心理
:そして後追いの類似商品
:結局本物かどうかは別で、購入しやすさで人は落ち着くもんよな
:なんならわかってて偽物買う人までいるしな
:本物じゃなくてもいい人?
:結局は値段
:そこかー
「あはは、わかります。結局流行作ったって胴元が損したら商売にならないですからね」
「まるで自分はそれで商売してきたような口ぶりですわね」
「AWOでリノちゃんのおばさんのレストラン手伝ってたから」
「確か、シズラさんでしたっけ」
「そうそう。そこで営業理念も叩きつけられてね。私もそうなんだーって感心してたんだ」
「なるほど、そこで……って子供になんてこと教えてるんですか、あの人は!」
葉ちゃんが珍しく私のことで怒っている。
私以外に怒りの矛先が向くだなんて珍しい。
やっぱり紅ちゃん効果かな?
「まぁまぁ、私が聞きたいって言ったんだし。覚えがよくてブレーキの効かせる場所を間違えたというか」
「そのまんまリノさんを彷彿とさせますわね」
「リノちゃんに言っとくねー」
「ちょ、やめなさいったら!」
:影口も辞さない葉ちゃんと
:影口を許せないハヤテちゃんである
:いや、葉ちゃんは本人の目の前でもズバッと言うぞ
:草
:多分考えてることが口から出ちゃうタイプ
「天上院の女は逃げも隠れも致しません。間違っていることをしていたら、それを正すのも務めですわ」
「これは相当拗れてるね。ゲームなんだから自由にしてたらいいのに」
「なんだか見ていてむずむずしてしまいますの」
「お花摘み行く?」
「そうではありませんわ!」
:ハヤテちゃん、それはケンカの合図だ
:たまに分かっててやってるような節があるよな
「私、喧嘩ってしたことないんですよねー。なので色々新鮮で」
「そういえばあなたは……いえ、よしましょう。天上院の人間は喧嘩は選んで買うのです。下手な挑発はおやめなさい」
:勝てる喧嘩しか買わないってこと?
:それはそれでどうなんだ
「いいえ、天上院を舐めた相手は真っ向から叩き潰します。ですがその矛先を友達に向けるなんて無粋ですわ」
:ああ、そう言うこと
:これ、ケンカの範疇じゃ済まなそうなニュアンスだな
:もしかして=全面戦争?
:こわっ
:お金持ちの喧嘩に友達は巻き込めないわな
:それにしても葉ちゃんに友達意識があったとは
「そこ、失礼でしてよ。わたくしにだって友達くらいおります。今まではお家騒動で少しごたついて、ピリついていただけですわ」
「なんとかなって良かったねー」
「本当に、ハヤテさんには何から何までよくしていただいて、姉様共々感謝しているんですのよ」
『ありがとうございました』
「まぁそこは持ちつ持たれつ。友達でしょ?」
:ええ話や
:まさか1日で騒動が解決するとはな
:|◉〻◉)この海のレイの目を通しても見通せなんだ
:おい、こらレイちゃん、あそぶな
:いないと思ったらコメント欄に入ってきやがって
:なんだかんだあの雰囲気は邪魔できませんから
:女神様まできとるやんけ
:綺麗な葉ちゃんだ
:え、こんな顔できるんだ
:険がとれた感じだな
:デレ到来
:今までツンドラだったもんな
:なんだよツンドラってデレはどこいった?
:未来永劫ない状態をツンドラって言うんだよ
:草
:それがほんのり見せるデレ
:尊いな
:ツンデレでしか摂れない栄養素は確かにある
:体に染み渡ってくんぜ
:10000円/ええもん見れた
「何もしてないのにお布施が! どうしよう葉ちゃん!」
「落ち着きなさい、いえ、あなたには死活問題なのでしたっけ」
:あなたは確かに盗んでいきました
:それは葉ちゃんの心です
:どこかの怪盗かよ
:そういえばミルモちゃんは?
:現在行方不明中
:休養があるって話だけど、なんのようだろ
:AWOが大変なのと何か因果関係が?
聡い人はいるね。
絶賛アザトース召喚中だからかな?
まぁドリームランド参加者以外で迷惑を被ることはないと思うけど、ドリームランドとチュートリアルワールドは地続きなところあるからね。
問題はそれ関連で私に迷惑をかけてこないかってことだ。
ただそれが終了したとて、ミルちゃんが素直に帰ってくるかも怪しいところ。
それ以前に私たちにドリームランドに赴く準備ができていない。
ある程度の耐性は必要だからね。
なんの耐性かって? ホラー耐性だよ。
:ハヤテちゃんの次に心を盗む相手が決まりましたね
:複雑な友情を確かに育んでおる
「勝手に私を怪盗にしないで。射抜くのは心臓だけだよ」
弓を弾く姿勢を取る。
ついさっき入手した豪弓で一発で仕留めちゃうもんね。
「あとは胃袋を掴むくらいでしょうか」
:自認恋のキューピッドか
:いや、これは命を奪いにきてる
:まさか『豪弓』で?
:まずいですよ!
「ミルちゃんの予定に私たちが介入することはないですね。向こうが助けてくれって言うんならやぶさかではありませんが」
「そもそも所用でログインできなくなるだけなら、そんなに心配することはないのではないですか?」
「そうなんだよねー。みんな心配しすぎ。夏休みで一週間顔を合わせなかったぐらいで友達辞めるほど心狭くないよ」
「あの方はなんというか、距離感がおかしいですからね」
「ねー」
:葉ちゃん、苦手そうだもんね
:ミルちゃんはあまりにもダークホースすぎたんだよ
:どうせ所用とか言って別ゲーやってんでしょ
:ありえる
「ミルちゃんのことは何にも心配してないよ。前からそんな感じの子だって知ってるし。本当に用事があるかもだし、変に突いてもね」
「妙な信頼を持っていますのね」
「葉ちゃんにも同じような信頼を持ってるよ?」
「そ、そうですの?」
「そうそう。私たちは友達だよね? はい、これ」
「こちらは?」
「なんかいい感じの木材」
「木材……もしかしてわたくしの木工細工を当てにしていますの?」
「うん。もし葉ちゃんがこの木材を手にしたら、どのようなものが出来上がるのかなって純粋な興味がある」
「そう、ですわね」
葉ちゃんは木材をジロジロ見ながら、手刀で何等分かに切り分けて思案する。
「このサイズですと、お箸でしょうか。まな板にするには幅が足りず、お椀などを掘り出すには幅が足りません」
「なるほどね」
「いったいなんですの?」
「いや、抱き合わせ販売を考えててさ」
「抱き合わせ? 一体『農家』で何を見たんですか?」
「これね、バナナの木なんだ」
「バナナというと、あの黄色い皮の?」
「そのバナナだね。でもバナナって木に見えるけど、バナナをもいだら枯れちゃうらしいんだ。なのでこの木をまとめて処理するならどうしようかなって考えてた」
「なるほど。ちなみにバナナを使って何を作るつもりですの?」
「スムージー」
「ミルクも糖類もありませんのに?」
「そこは神秘でチョチョイと」
「そういえば幻想装備が使えるんでしたわね。でしたらこう言うのはどうでしょう」
葉ちゃんはバナナの葉っぱを包んでストローの形を模した。
そして樹皮を応用してコップを作った。
「おー、コップとストローになった。これは丸ごとバナナスムージーも完成間近かな?」
「体調はお肉レシピを求めておいででしょう? なぜバナナスムージーなど提案したのです?」
「え、お肉ばかりだとさっぱりしたの欲しくなるかなって。獣肉って臭みがある都合上、どうしたって濃いめの味付けになるじゃない?」
「そうですわね。あまり食べつけませんが」
「でもこのステージの人はお腹に入れるために我慢して口に入れなきゃいけないわけだよ」
「そう言うことですのね。ですがスムージーは受けるでしょうか?」
「別に受けなくてもいいよ」
「よろしいのですか?」
「私がただ飲みたいだけだからね」
:おい!
:でも実際肉ばっかじゃ飽きるのは事実
:肉だけで腹一杯になる未来がありありと見える
:串焼きとかどうしても肉! って感じになるしな
「肉の油をさっぱりさせたスープなんかも考案したんだけど、臭み消しも想定するとどうしても胃に負担ばかりかけちゃう。男の人ならそれでもいいかもだけど、女性は厳しいかなって」
「生活に基づいてレシピを考案しますのね」
「そりゃそうだよ。酒場って様はこの世界で初めてのコミュニティでしょ? 人が集まって何かをするってのはどうしても生活の基盤になりがちだよ。私はもし自分がここのお世話になるとしたら、女性の目線でレシピを考案したいんだ」
「そう言うことでしたら、わたくしも色々考案いたしましょう」
「本当? 助かるー」
『^^』
:紅ちゃん
:めちゃくちゃ笑顔だね
:妹ちゃんがようやく友達と仲良くしてる姿を見たらな
:あまりにも不甲斐なかったもんな
「そ、そう言うのとは違いますわ! 姉様も、変な勘違いをしないでくださいまし」
「葉ちゃん、色々遅いよ」
「あなたまで!」
何はともあれ、葉ちゃんの協力を得て私の提供レシピは出来上がる。
お肉レシピは他のプレイヤーが出してくれるだろうし、私は野菜ジュースや果汁をふんだんに使ったドリンクを考案していく。
葉ちゃんにはそのコップやストローを作ってもらって、なんだったら商人としてステージのNPCに仕事を割り振ってもいいし。
結局私たちはこのゲームに長居しないし。
あとはこのステージに生きるNPCに根付けばいいなぐらいの気持ちでアレンジを加えた。




