294話 EPO配信!_弓術マスターへの道
「まずは狐エリアからですわね」
「早速『剣豪』で強化しよ」
「弓術はどうしても威力が落ちますし、いいと思いますわ」
リノちゃんはさっき覚えた『剣豪』にジョブを付け替えて、弓術の命中率を下げて威力上昇に全振りしてる。
それ、当てる気あるの? と言うほどの命中率まで低下していた。
もしかして『剣豪』の効果って弓術にものるの?
そういえば『低命中、高威力のスキル』以外の明記がされていない。
リノちゃん、これをわかってて新しく威圧対象を増やすつもりなんだ? と理解して戦慄した。
「何にもわかってないね、みんな。命中率はね、100%以外何も信用できないよ」
100%信者のお姉ちゃんが胸を張っていった。
みんな白け顔である。
「あなたはすっかりホーミング信者ね。他のゲームに移った時にひたすら後悔しそうですが、そこはどうなのです?」
葉ちゃんが老婆心を炸裂させる。
お姉ちゃんはWBOのメインは吟遊詩人。
狩人ではないとたかを括っている。
だと思ったよ。
「ところで葉ちゃん」
「何かしら」
「さっき『商人』のジョブも使ってたよね? 『幻惑』使いながら」
葉ちゃんの『幻惑』のジョブは理解した。
『ハンター』を使用中、使える二刀流。
それは使用者以外見えない状態で行使される。
二刀流をしている前提条件で、確かに『G・城壁』は実在した。
でもそれ以外に、先ほど『商人』スキルの『交渉』を使用していた。
フリの可能性もあるけど、可能性としては低い。
葉ちゃんは特に大したことではないと私の質問を切り捨てる。
「あら、そのことですか」
「大したことじゃなさそうに言うね」
「実際大したことではありませんわ。一般的なジョブと称号ジョブは全く別のものですわ。なのでジョブをセットしていながら、称号ジョブもセットできる。わたくしに取っては常識ですわ」
「え、できたの?」
リノちゃんが驚く。
できない前提でレイちゃんに渡したのに。
まさかできたとは! みたいな顔になっている。
「|◉〻◉)返しましょうか?」
「いいよ、今は剣豪あるから。レイちゃんはそのままハンターつけてて」
「|⌒〻⌒)はい!」
一件落着したようだ。
それはさておき、新事実。
「皆さん、知ってました? 称号ジョブと一般ジョブは同時にセットできるって!」
:まず誰も称号スキルを取得していない件
:ハンターをみんな求めて、散っていった
:ジョブは付け替えるべきって認識があったのは確かやな
:まさか称号スキルは同時セットできるとは
:これは新しいな
:ただ、ダブった称号は付け替える感じ?
「あ、どうだろ。実際にダブらせたのってリノちゃんぐらいだよね?」
「|◉〻◉)返します?」
「あ、じゃあ検証のために一回返してもらうね」
「|ー〻ー)はい」
ちょっと気に入ってたのかな?
途端にレイちゃんのテンションが下がった。
受け取ったリノちゃんがやけにキリッとした表情で『ハンターをセットする。
その上で『剣豪』をセット……キリッとした表情がまた違う雰囲気を纏う。
「あ、ダメみたい。称号ジョブは複数セットできないみたい」
:そんな上手い話はなかったか
「|◉〻◉)ノじゃあ、僕が預かっておきますね?」
「お願いねー」
ウキウキしながらレイちゃんが『ハンター』をセットする。
「|◎〻◎)フォー」
いきなり興奮したかと思うと、踊り出す。
いつものレイちゃんになった。
「|◉〻◉)これですこれ! このジョブをセットすると楽しくなるんですよ」
そんな効果知らない。
「じゃあ、あたしは『剣聖』しながら『解体師』をできちゃうわけ?」
「そうだね、私は『剣豪』しながら農家ができちゃう」
「私は『剣豪』しながら『解体師』しちゃうもんねー。トキちゃんには負けないよ!」
「こっちこそ!」
「ではわたくしは先ほどと同様に『幻惑』をしながら『商人』をいたしましょうか」
「|◉〻◉)僕はハンターしますねー。そいや、そいや」
「私はここで皆様を応援しています」
それぞれの意思がまとまって、私たちはキツネエリアを開始する。レイちゃんのテンションがおかしいけど、それは今更だしね。ジョブがセットできると言うのは実際ありがたいし、私もジョブ効果が欲しいトキ、頼む時があるかもだし。
「今回はお肉多めに確保だね」
「この中で一番弓術育ってるのはお姉ちゃんだからね」
「一番は葉ちゃんじゃない?」
10まで育ってるのはそうだね。
「抜け駆けした人なんて知りませーん」
「まだ言ってますの?」
『これはずっと言われるパターンですね』
「ハヤテさんらしいといえばらしいですが」
「そんなわけで、一番育ってるお姉ちゃんに色々レクチャーしてもらおうかなって」
「レクチャー? ホーミングしてれば勝てるよ」
:草
:まぁ威力は低いけど必中だもんな
:これ、もしかしてずっとホーミングして行く流れか?
:ありそう
もちろん、それ以外で進んでいくよ。
『早速キツネさんが入場です。皆様、頑張ってくださいね』
紅ちゃんの応援を受けて、私たちは一斉に弓を引く。
まずは普通に『シュート』。
キツネはヒョイっと回避して一直線に収穫物に向かう。
「させないよ! 落とし穴ホーミング」
:必中で落とし穴効果つけるのえぐいって
:これ、罠が100%成功するのか
:やっぱり『ハンター』強すぎんのよ
「続いて『剣豪』ホーミング、いくよ!」
:剣豪ホーミングって?
:威圧?
:これあれだ、命中下げて威力上げたパターン
:10下げても90%あるもんな
「なんと30%下げて威力を100に!」
:バカやろう!
:命中マイナス10につき威力+30は頭おかしいだろ
:剣豪ってもしかして相当強い称号ジョブになるんじゃ?
:ホーミングにつけると威力をいくらでも上げられる
:落とし穴で回避を封じられたキツネくん、これは避けられないー
:耐久5しかないのに100はオーバーキルもいいところだろ!
「でも命中率が高い判定だったのか『威圧』対象にならなかったですねー」
:それはそうだろ
:70%はシュートや曲射と一緒や
:そのうち威力250、命中20%のホーミングが飛んでいくのか?
:それはもはやホーミングという名の何かでは?
ホーミングの名残がどこにもないよね、それは。
リノちゃんならやりそうという予感はあるけど。
:それよりハヤテちゃんの落とし穴ホーミングで死ななかったのはどうして?
:それ気になる
「それはですねー、実際にキツネに当ててないからです」
:つまり?
「狐の移動する場所を予測してその周辺にセットしたって感じです」
:なるほど、当てると倒しちゃうから、あえて外した?
:でもホーミングって言ってるんだよな
「そこは剣豪で命中下げてますよ、流石に」
威力を上げるより、あてないために使ってるのは多分私ぐらいだろう。
リノちゃんはそれでも当てに行くんだけど。
その補佐をね、私がする感じ。
もし当たったらキツネが爆散しちゃうよ。
そうならないように命中率を下げて、地面に罠術をセットするのだ。
:あれもちゃっかり威力おかしいことになってるんだろうか?
:当たってたら爆散しそう
:外すために威力100くらいになってそう
:リノちゃんのこと言えなくて草
:普通にフィールド壊れてないから、多分威力はそんなにないな
:外すために剣豪を使うのがハヤテちゃんで
:一撃必殺のロマンを高めるのがリノちゃん
:絶対当てるために策を弄するのがトキちゃん
:最後に目立ちたがり屋の葉ちゃん
「誰が目立ちたがり屋ですか!」
とても腹立たしいという顔つきだけど、そういうキャラで売り出したのは君だよ?
リスナーさんに当たらないでよ。
「これならどうだ!『剣聖』連射」
お姉ちゃんがホーミング以外の弓術を発動した。
珍しい、と思いつつもこのままホーミング頼りだと、流石に『剣聖』が可哀想だと思ったのだろう。
その予感は当たっていた。
「剣聖って威力を消費して範囲をとるやつだっけ?」
「うん。威力を10消費するごとに範囲+1なんだよね」
つまり連射攻撃が着弾点から十字に拡散するのだが、どうも効果は乗らなかったらしい。
「効果はあった?」
「多段ヒット系は『剣聖』の効果に乗らないのかも。やっぱり弓には使いづらいのかな?」
そもそも威力10から−10したら何も残らないんだから。
そこから範囲広げたって無駄じゃない?
「素直に罠術で運用しようよ」
「絶対弓向きだと思ったんだけどなー」
「弓はただでさえ命中と範囲のスペシャリストじゃない」
「それもそうなんだけどさー。せっかくあたしだけの称号ジョブだよ? あたしが先駆者なんだから、あたしなりの運用方法を考えたいよね」
「そうだね。剣豪は私とリノちゃんで二人いるけど、剣聖はお姉ちゃんだけだもんね」
「そうそう、そういうのって初めてだからさ。あたしがこれから牽制やる人の手本になりたいんだよね」
なるほど、そういうことなら協力してあげなくちゃ。
他ならぬお姉ちゃんが自発的に何かしようというのだ。
「わかった。じゃあそれぞれこれだっていう運用法を考えよう。配信でそれを発表するっていうのはどう?」
「いいね! 発表はどのタイミングでする?」
「配信終了の時でよくない? 称号ジョブと、武器スキル、または通常ジョブの組み合わせを一つ開示する、とかね」
「よし、やる気出てきた」
「私もそれ参加する!」
「わたくしももちろんエントリーしますわよ」
全員が称号ジョブ持ちだからこそできる提案だ。
今はまだ成り手が少ない称号ジョブ。
私たちで徹底解明してしまおう。
まぁ今のところ弓術の育成をしつつになるけどね。




