4 転入生
さて、次の日になりました。今日は私のクラスに転入生が来るらしいのですが……
「じ、ジュピター・クラインです! よ、よ、よろしくお願いしますっ!」
教壇の前で緊張気味に自己紹介をしたクラインさん。その姿に何故か既視感を感じるのです。それもラル様と初めて会った時と同じ既視感。
ええ、そうなんです。ラル様との出会いの時も同じでした。何故かは分からない既視感。これは一体何なのでしょう。首を捻ってみましたが何か分かるわけでもなく。
それならば、とクラインさんのことをじっと観察してみます。何か分かるかと思って。ああ、もちろん笑顔で、ですよ。
茶髪ボブに緑色の目。うーん、人の顔を覚えるのは得意だと思っていたのですが……思い出せません。
「あっ、悪役令嬢!?」
ん? 私を指差して何か仰いましたね、クラインさん。……ああ、いえ、聞こえていましたけれども。
前世の時に友達だった子から聞いた単語でしたね。『悪役令嬢』、でしたっけ。
この世界にはそのような単語はありませんし、もしかしてこの方も転生者さんですかね。それはそれは。同郷の方でしたか。
仲良く出来ればといつもの笑顔にプラスアルファでにっこり笑顔を上乗せして返しておきました。
「ひぇっ、悪役令嬢が笑ったぁ!?」
あらあら、私のこの笑顔を怖がる人がいるなんて思いもよりませんでした。皆様から癒しだと言ってくださった自慢の笑顔なんですけどねえ……
私もまだまだというわけですか。もっと癒しだと言われるように頑張りますね。
「あらあの方、陽だまり様のことを悪だなんて……」
「私達の癒しを侮辱するつもりかしらねぇ……」
周りの皆様がひそひそと話し始めました。ああ、いけません、この手の争いは憎しみなどの負の感情しか生み出さないのですから。
「皆様……」
私が仲介しようとすると……
「ちょっと! 陽だまりってなんのことよ!」
ひそひそ声を聞いていたのでしょう、クラインさんが急に声を荒らげました。はて、どこに地雷があったのでしょうか。
「陽だまり様はこのマリアルモンテ・ヒダン様のことよ!」
「……! だ、駄目! 陽だまりって呼んじゃ駄目!」
「ど、どうしたのかしら……?」
クラインさんの様子がおかしいです。焦りと怒りと悲しみが混ざったような声色と表情です。どうされたのでしょうか。
私が戸惑っている間にクラインさんはキッと私を睨み、自分の席に着いてしまいました。き、嫌われてしまいましたかね?
「さ、さて、授業を始めます。」
この空気を読んで今まで静かにしていた先生が吃りながらも声を張り上げました。
モヤモヤと心が晴れないまま、授業は無情にも始まってしまったのでした。
あれから今日一日ずっとクラインさんは私を目の敵にしているように睨み、それを周りの皆様が睨み返して追い払ってしまっております。私としてはクラインさんとお話をきちんとしたいところなのですが、毎度毎度逃げられてしまいます。
「皆様、クラインさんも転入してきたばかりで心細いのだと思います。ですから……」
私の言葉に、わっと皆様のお顔が輝き出しました。
「まあ! 陽だまり様はお優しいのですね!」
「いえ、違……」
「違いませんわ! あんな態度の悪い方に優しくする義理はありませんわよ!」
「え、ですが……」
ああ、これはいけません。前世の時に読んだ小説にもこのような展開はありました。争いはよくありません。
さらに言えば前世であの子が話してくれた乙女ゲームにもこれに似たような展開があったような無かったような……
「あれ?」
なんでしょう、何か違和感が……?




