3 モブの独白
モブside
「ああもう! 月光様、もっとぐいぐいと攻めていってくださいよ! 陽だまり様は意外と鈍感なんですよ! それにほら、そっぽ向いちゃうから陽だまり様も表情を読めなくなるんですよ!」
草むらに隠れながら本人達には聞こえない程度の小声で思いの丈を叫ぶ。
……ああ、申し遅れました。私はしがない男爵令嬢モブ。陽だまり様ファンクラブに所属する者です。
白金色の髪をふわりふわりと靡かせ、いつもその顔には笑顔が乗る陽だまり様。まさに太陽のように暖かな方。
その暖かさに私も救われたのです。だからこそ陽だまり様を崇拝し、陽だまり様の幸せを願うファンクラブに入ったのですが……
そんな私は今日も今日とて陽だまり様を影から観察して癒し成分を補給していたわけなのです!
まあ、私の事情は置いておいて。
陽だまり様を影から観察していると婚約者である月光様のこともたまに目の端に入るのですが、最近は無表情の中でもコロコロと表情を変えていることが分かるようになりました。凄いでしょう?
月光様は陽だまり様から顔を背ける場面が多いので、草むらに隠れている私からはバッチリ表情が見えてしまうのです。
確認のしようが無いので合っているかは分かりませんが、しかし表情が変わっている、という事実だけは分かります。
その中でも推測の域を出ませんが、月光様は多分陽だまり様のことが好きで好きで仕方ないのだと思うのです。
隣に座った時のあの嬉しそうな表情! やっぱり陽だまり様のことが好きなんですね、そうなんですね、と一人で歓喜していました。
陽だまり様を一番近くで支えられるのは月光様だけだと私は勝手ながらに思っておりますから、是非ともお二人が仲良くなっていただけたらと思っております。
しかし陽だまり様は全く気がついていないようでした。ああ、なんてことでしょう! 陽だまり様も月光様のことを憎からず思っているように見えますし、とんでもないすれ違いです!
まあ、月光様があまり喋らず顔も背けて表情を読ませない。そんなことを続けているからこそすれ違ってしまうのです。ええ、ずっと観察していた私には分かります。
しかししがない男爵令嬢であるこのモブが侯爵家のお二人に近付ける確率もほぼゼロに近く、私がお二人の仲をどうにかすることは出来なさそうです。ああ、何故もう少し家柄が高くないのでしょう!
まあ、嘆いても変わりません。見守ることしか出来ませんが、それでも私はずっとあなた方の味方であります。
心の中でお二人にそう伝えます。そうすることしか出来ませんから。




