32 想い
ああ、何故私はあんなにもラル様を疑って勝手に不安になっていたのでしょう。こんなにも真っ直ぐな想いを伝えてくださっていたのに。
今まで私の中で燻っていた不安が、一瞬の間に晴れていくようでした。
ラル様のあの言葉がまるで私のことが好きなのだと言っているようで。じわじわと顔が熱くなっていくのが分かりました。
ああ、先程も伝えましたが、今一度ラル様に好きだという気持ちを伝えたくなりました。
「ラル様、先程はラル様を疑うようなことを口にしてしまい申し訳ありませんでした。」
「ああ。」
「ラル様、お慕いしております。」
「……。」
最高の笑顔で伝えられたと思ったら、何故そこで無言になられるんですかね。やっぱりこの想いは伝えるべきではなかったということでしょうか……?
ぐるぐるとまた考え込んでいると、ラル様は私以上にオロオロとしながら話し始めました。
「マ、マリー。あの、だな。」
「は、はい。」
「私は好き、という感情をはっきりと理解することが出来ないでいる。だが、マリーは私の人生には絶対必要だということは……分かる。こ、これが好きだということなのだろうか。」
「うーん……どうでしょう。好きかどうかの定義はきっとその人それぞれだと思いますので……」
「……ふむ、そうか。なかなか難しいものだな。……そういうことでマリーに同じ気持ちを今は返せないかもしれんが、それでも……隣にいてくれるか?」
「もちろんです。」
好きな人の近くにいられるのなら。それならどんなに辛くてもきっと頑張れるのだと思います。
自然と笑顔が零れた。
「そうだ、マリー。その……話は変わるんだが……」
「はい。」
「言い辛いのだが……一ついいか? 疑問に思ったのでな。」
今度は何を聞かれるのでしょうか。言い辛いこととは……?
「はい、なんでしょう?」
指を忙しなく動かしながらラル様は次の言葉を紡ごうと頑張っているようでした。それを私はぽけらっと見つめます。
「て、転生と言うくらいなのだから、その、前世のひまりは……死んだのだろう? 思い出したくないならいいが、どう死んだか教えてくれないか? 死んだ時の記憶があるなどトラウマになってしまうだろうし、なるべく私はそれを聞いておいて、マリーがトラウマになりそうなことから遠ざけたいと、思う。」
「……! お気遣いありがとうございます。全然思いつきませんでした。私は……あれ?」
あれ、私はどうやって死んだのでしょうか。思い出せません。記憶にあるのは高校に入って……桑さんと仲良くなって……それで……
その後の記憶に霧がかかったように全く何も思い出せません。
「しかし高校生までの記憶しかないので、私は若くして死んだのでしょう。しかしどうやって死んでしまったのかは……分かりません。」
「そうか。もし思い出してしまったら私にも教えて欲しい。」
「ありがとうございます。」
そのラル様の心遣いに、私の心がじんわりと暖かくなりました。
しかし……何故私は死んだ記憶がないのでしょう。もしかして神様がそこら辺の記憶を消してくれているのでしょうか。次の生で健康に生きられるように、と。




