33 友
ラルside
マリーの泣き顔を初めて見た次の日。
私は昼休みの時間を使って、昔から関わりがあった数少ない友人の元へと早足で向かう。今の時間ならあの場所にいるはず。
「イオ!」
「はい? ……ああ、貴方でしたか。珍しいですね、どうされました?」
数少ない友人、イオ・ガラッシア・ソラーレ。この国の王太子だ。
人との関わりを絶ってきた私ではあるが、この人とは同年ということもあって小さな頃から会って話し……いや、私から話しかけたことは無かったか。向こうがベラベラ喋ることはあったがな。まあ、そんな関係だ。
細かいことはいいだろう。ただ相談するならこの人が適任だろうと踏んで話しかける。
「今、いいか? 相談したいんだが……」
「ん、構わないけど……珍しすぎて驚きましたよ。では人払いしましょうか。」
「頼む。」
そう言って近くにいるイオの護衛に人払いを頼み、部屋には私とイオの二人が残った。その瞬間、イオの雰囲気が変わる。
「……ラルちゃん。あんたどうしちゃったのよ。相談なんて初めてじゃない?」
「ああ。」
「ほら、アタシに話してごらんなさいな?」
……ああ、イオはこういう奴だから気にすることはない。周りには上手く隠しているが、実はオネエだ。そのことを知る人は数少ないがな。私も最初は驚いたがもう慣れた。
……え? 昨日マリーに『私が話せる女性はマリーだけ』と言っただろうって? ……ああ、イオのことはあまり性別で考えたことは無かったからなぁ……。男だとか女だとかではなくイオはイオだな。うむ、それが一番納得出来る。
ああ、それよりもまず相談をしなければだ。
「実は……だな。頼り甲斐がある人間になるためにはどうすればいいかと……思って、だな……」
マリーがこれから一人で泣くことのないように、そして笑顔以外の表情も見られるように私がどっしり構えていなければと思ったのだが……
数秒の沈黙が続き、この質問をしたことを後悔し始めた頃、やっとイオは声を出す。
「……ぶふっ、……ああ、いや、ごめんなさいね? まさか人嫌いのあんたからそんな言葉が出てくるとは思わなくって。驚いちゃったわよ。どんな心境の変化?」
「いや、あの……マリーが……」
「マリー嬢って……ああ、あんたの婚約者ちゃんじゃない。あの子がどうしたのよ。」
「一人で……その……泣いている現場を目撃して、だな……」
私がそう言うと、イオはとても驚いていた。まあ、いつも笑っているマリーが笑顔以外の表情を見せてくれたとなると驚くのもおかしくは無いだろう。
「あら、あの子もちゃんと人間だったのね。良かった、安心したわ。アタシ実は心配してたのよ? 遠くから見たことしかないけれども、アタシと同じで仮面を被っているんじゃないかって女の勘がピーンと来ちゃってね。だから素を出せる所があればいいけどって。」
そういう驚きだったのか。私には到底気が付かない目線だな。さすがイオだ。
「……ああ、だからこそ私が頼り甲斐のある人間になって、マリーの笑顔以外の表情も引き出したい、と思ったんだが……。」
「そうねぇ……」
私の相談にイオは頬杖ついて考え込んだ。




