30 好き
「私の話を……聞いてくださいますか?」
「もちろん。」
その声色からラル様の確固たる意志を感じました。私の突飛な話を聞く、という。
それなら泣いてばかりではいけませんね。ゴシゴシと涙を拭き取り、気持ちを新たにします!
「そんなに擦るな……」
「いえ、大丈夫です!」
私の話を信じる、その言葉だけで私は元気が出ました。なのでにっこり笑顔を見せると、しかしラル様は困ったような表情になりました。あれ、また笑えていませんでしたか?
「……その笑顔は無理していないか?」
ああ、心配してくださっていたのですね。その気持ちが嬉しくて、もっと笑顔になってしまいました。
「心からの笑みですよ。」
「……そうか。」
私の返答にラル様はホッと胸をなでおろしました。それだけ心配を掛けてしまったのですね。ではこれから挽回しましょう!
「ではまず何から話しましょう……」
「最初は……あ、前世の話の前に泣いていた理由からでは駄目か?」
「うっ、それは……駄目ではないですけど……」
それからですか! ああ、ああ、どうしましょう。これを伝えるには私の気持ちを伝えねばならなくなり、その事実に顔が熱くなってしまいます。
「マリー?」
「ああ、ええと……泣いていた理由は……理由、は……恋だと気が付いた瞬間に失恋だと理解してしまったから……です。」
ああ、こんな形で告白してしまうとは。もっと心の準備をしてから伝えたかったです。自分の気持ちを伝える気恥ずかしさから両手で頬を包み、顔の熱を手の方へ逃がそうと試みてみましたが、上手くいきませんでした。
「何!? マリーには恋い慕う相手がいたのか! どこの誰だ!」
「あうっ、……様、です。」
「聞こえなかった。もう一度はっきりと。さんはい。」
ああ、本人に伝えるとなるとこんなにドキドキしてしまうのですね。すーはー、深呼吸深呼吸。
振られると分かっていても、私の気持ちの整理の為にも伝えなければですね。勇気を振り絞って、さあ!
「……ラル様です!」
「……、……?」
ラル様は私の暴露に驚いて数秒固まり、その後首を傾げました。何故首を傾げたのでしょうか。思わず私もラル様と同じ方向に首を傾げてしまいました。
「何がどうなって失恋したと解釈したんだ?」
「……ヒーローと何もしない悪役令嬢は結ばれないものですから。」
オハナシのシナリオは変わらないのですから。ああ、自分で言ってて悲しくなってきました。
「その言葉……変人も使ってたな。それは何だ?」
「それは……前世のお話での……」
「話?」
「はい。前世で人気だった作り話の中に度々出てくる言葉です。今の状況に当てはめてみるなら、ヒロインはクラインさん、メインヒーローはラル様、そして悪役令嬢は私です。」




