27 笑顔
ああ、駄目です。涙など見せては『陽だまり』の名折れです。陽だまりでいるには笑顔でなければ……
「マリー。」
心配しているような声色のラル様。私の目に涙が浮かんでいてラル様が見えないのでラル様の声でしか判別出来ませんが、そのような声色でした。ああ、陽だまりがラル様に心配を掛けるなど言語道断。
泣きやめ、泣きやめ、そして笑え……!
ぽたり、また一粒涙が零れた。
ああ、ラル様のことを考えると笑顔だけを浮かべる私でいられなくなってしまいます。
心を揺さぶられる、とはこのことなのですね。ラル様の言動に一喜一憂している自分に気が付きました。
……ああ、それは駄目です。喜び以外の感情は殺さないと……陽だまりでいないと……笑わないと……
呪縛に囚われている私はなんとか笑顔を作る。そうだ、笑わないと。私は笑っていないと存在意義がないのですから。
「……マリー、今何を考えているか、教えてくれ。」
……私、笑えていなかったのでしょうか。ああ、それは駄目ですね。未だに目は潤んでいるけれども、とにかく笑わないと。笑わないと。笑わないと。
今一度頑張って笑顔を作る。しかし表情筋が固くなっているのが自分でも分かりました。
「今、ですか……?」
「ああ。」
「……笑わないと、と。」
ぐしぐしと目の辺りを擦って涙を拭き取ります。そして別に隠すことでもありませんから正直に話します。しかしラル様は首を傾げたようでした。
「何故だ?」
何故かと言われても……。それが私の当たり前ですから。当たり前のことに理由などあるのでしょうか。
「失態を晒してしまった後ですが、笑わないといけないのです。私は……」
「どういうことだ?」
ラル様はよく分からないと言わんばかりな表情を浮かべます。ええ、私のこれはどこか歪なものであることは自分でも理解しています。
しかし私は……
「私は笑うことしか出来ませんから。」
また一粒涙が零れた。




