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超変則将棋型バトルゲーム クロスレイド  作者: 音村真
第九章 最終決戦篇
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第百八十五話「帰還」

 ◇ ◆ ◇


 悪意の怨念体を消滅させてから1時間あまり──

 金太郎たちは死闘を乗り越えた先で、優しい時間を噛みしめながら、お互いのことを語り合っていた。


「へえ。竜崎って何気に紅蘭さんの尻に敷かれていたんだな」

「ちょ、ちょっと……金太郎さん⁉ あまり人聞きの悪いこと言わないでくださいよ!」

「金太郎はデリカシーってもんがねぇからな。余計なこと教えねぇほうが身のためだぜ」

「なんだと……将角!」

「なんだよ⁉ 事実だろうが!」

「ちょっと、ふたりとも辞めなさい!」


 他愛のない金太郎のひと言から不毛な言い争いに発展し、銀子が静止する。

 これもひとつの平和な時間だろう。


 先ほどまでの激闘が嘘のように、周囲には笑顔があふれ、みんな楽しそうに笑っている。


 そんななか、突然深刻そうな顔で竜崎が話題を変えてきた

「そういえば……。おまえたちは、どうやってこの次元に迷い込んできたんだ?」

「え? 言ってなかったっけ? 亞比さん──つまり紅蘭さんの子孫の人が作ったクロスレイド次元転送装置とかなんとかいうのを使ってきたんだけど……」

「まあ、そんな話をする間柄でもなかったしな。その装置とやらを使って、肉体と精神を切り離したといったところか」


 この竜崎の質問には歩夢が答えた。

「そうだね。僕も研究者じゃないから難しいことはわかんないけど、たしか博士がそういうような装置だって言っていたと思うよ」


 竜崎は少し考えこんでから、今度は別の質問をする。

「ふむ……。おまえたちがこの次元の狭間にやってきてから、どのくらい時間が経っているのだ?」


「さあ? どのくらいだろ? カレンダーとか見てなかったし、昼とか夜もなかったからよくわかんないけど、もう何日もこっちにいるよな?」

「そうだな……。2~3カ月ってところじゃないのか?」

 はっきり答えられない金太郎に代わって、将角がアバウトに答えた。


 視線をそらして黙り込む竜崎。


「な……なんだよ? いきなり黙り込んだら不安になるだろ!」

 発言したのは金太郎だけだったが、全員が不安そうな顔で竜崎を見ていた。


「……何も聞かされてないのか? 紅蘭の子孫から」

「だから、いったい何を……?」


 言葉を濁す竜崎に何かを感じたのか、周囲の緊張感が一気に高まる。

 不穏な空気になってしまったことを察して、竜崎がため息をついてから答えた。


「ここで隠しても仕方ないと思うからハッキリ言うが、器から魂を切り離して一定の時間が経過すると元の器に戻れなくなるぞ」

「……は? 元の器?」

「きさまらが元の世界で使っていた身体だ。魂と肉体の定着率には個体差があると思うが……だいたい3カ月程度だと我は考えている」

「え⁉」


 衝撃の事実に一同が驚いているなか、意外にも竜崎は希望的観測を付け加える。

「ただ──紅蘭の子孫が作った装置とやらに、何か特殊な細工が仕掛けてあるかもしれないからな。あくまで我が言ったのは一般論の話だ」


 だが将角が額に血管を浮かび上がらせながら、全力でそれを否定した。

「いや……あのクソヤロウは、たぶん伝え忘れてるだけだろうよ……!」


 竜崎はそれを受けて、それならば──と提案する。

「だったら、早く戻ったほうがいい。すでに2~3カ月経過しているなら、急がねば戻れなくなるぞ」


 この竜崎の言葉に全員が顔面蒼白となり、言葉を失った。そして誰もが例外なく同じことを思い浮かべたのだ。

 その言葉を金太郎が代表して口にした。

「……ど、どうやって戻るんだ?」


 一瞬、辺りを沈黙が支配する。


「くく……。まさかとは思っていたが、本当に戻る方法を知らないまま、こんなところまで乗り込んできたとはな」

 鼻で笑いながら、珍しく茶化すような言葉を口にする竜崎。


 金太郎が全員の顔を見回しながら確認する。

 しかし当然ながら、全員が首を横に振った。


「くっそ……亞比あのヤロウ! 帰ったら絶対にぶっ殺す!」

 マジギレしながら怒鳴る将角。

 さすがの歩夢も、この状況では亞比を擁護できずに頭を抱えていた。


 途方に暮れる金太郎一同。


 すると竜崎から思いがけない助け舟が出された。

「だったら、我が送り届けてやろう。もう手遅れだったら諦めるしかないがな」


「え……おまえってそんなことできるの⁉」

 金太郎が驚きを口にした。


 希望が見えたことで、全員の顔に笑顔が戻りつつある。

 それを見た竜崎の表情も、心なしか穏やかに変化したように見えた。

 竜崎にとって、少しでも恩人の力になれることが嬉しかったのだろう。


 竜崎が自信満々に答える。

「いったい我が何百年ここで生きてきたと思っている? これだけ生きていれば、何かと知る新たな知識も多いのだ」


「まじかよ。助かったぜ」

「まだわからないよ? アンタもう期限切れかもしれないしね」

「演技のわりぃこと言うんじゃねぇ!」

 思わず安堵の言葉を吐いた将角をエサにして、歩夢がコントに持ち込んだ。

 心に余裕ができた証拠である。


 少し元気を取り戻した一同を眺めながら、銀子と響香が笑顔で言葉を交わす。

「ふふ。まあ……でも竜崎くんも世界も助かったわけだし、わたしたちも戻れる可能性があるってわかってよかったわよね」

「そうですね。どちらにしてもダメならダメなわけですし、みんな無事戻れる可能性に賭けましょう」


 時間を惜しむ間もなく、竜崎が金太郎たちの帰還を急かす。

「それじゃ、さっさと送り返すぞ。やるなら急ぐに越したことはない」

 金太郎も笑顔で言葉を返した。

「ああ。おまえも紅蘭さんと楽しくやれよ」


 金太郎と竜崎が、笑顔で握手を交わす。

 その様子を一同が笑顔で見守っている。


 改めて金太郎たちにお礼を言う竜崎。

「うむ。本当に世話になったな。金色の少年と、その仲間たちよ。おまえたちに祝福があらんことを」

「もう少年って歳じゃないけど……ま、お前も元気でな」


 竜崎がかざす手が光り輝き、金太郎たちの頭上に魔法陣のような巨大なゲートが出現した。


 魔法陣ゲートが金太郎たちへと近づくなか、竜崎が最後の言葉を金太郎たちに贈る。

「……もしおまえたちに危機が訪れたら、今度は我が力を貸そう」

「そうならないことを祈るけどな」

 笑顔でそう返す金太郎。そして竜崎もまた笑顔を金太郎たちに向けて言った。


「では、また会おう────金太郎」



 金太郎たちの身体を魔法陣が通過すると、彼らの視界はまばゆいほどの光に包まれ、意識が遠退いていく。

 そして気がついた時には、もうすでに金太郎たちは亞比の研究室のベッドの上にいた。

 それぞれ疲れ切った様子で、あくびをしたり、背伸びをしたりしている。


 その様子を眺めながら、金太郎は小さな声で呟いた。


「……ただいま。俺たちの世界」

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