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式神の魔術師  作者: 池上葉
第一章 託された使命
24/25

24、素顔

 千尋の全身が石に覆われ、そして――髪の毛一本も残さず石化した。


「ンーーーーーーーーーーッ!」


 口を石に塞がれたステラ。あまりのショックにその場に崩れ落ちる。


 それを無機質な瞳で見下ろす『石の魔術師(ホルンフェルス)』。千尋が要求に応えなかった時点でステラを生かしておく理由はない。自分の『石眼』も知られてしまったし、例え殺したとしても八芽は自分との約束は果たしてくれるだろう。

 そう考え、短剣を握り締めた時だ。


「!?」


 両手両足、首や胴体に一瞬にして縄のようなものが巻きついてきた。外側へと引っ張られ、立ったまま大の字になってその場で固定される。


 身動きが取れない。何が起きた!?


 すぐに石化させて振りほどこうとするが……。


「……ッ! なんだ! なんだこれはッ!!」


 石にならない。いや、石にできない。もっと正確に表現するなら、魔素が放出できない。


 魔素。全身の細胞からにじみ出る極小の粒子。体外に放出する際、エネルギーの波動へと姿を変えて拡散していくが、術者自身はその魔素を『そこに在る物』として『感じ取る』ことができる。

 魔術を使用する際の原料にもなるため、高位の魔術師ほどその存在を敏感に知覚できるはずだが、その魔素を感知できない。放出しようとするほど、体から失われていく。


「クッ!」


 千尋が最後に仕掛けた罠か!? まさか八芽ではないだろう。邪魔されないように石の魔術で一時的に退場願ったが、立会人としてこの依頼を引き受けた以上、自分に『生命の魂源』を手渡すまではこんな真似をするわけがない。


 八芽の性格は知り尽くしている。子供の頃からこの人を見てきたのだ。こんな裏切り方をする人じゃない。そこは間違いない。


 なら誰が――

 この時『石の魔術師(ホルンフェルス)』の心拍は落ち着きを取り戻していた。最初こそ驚きはしたものの、九割がた千尋が仕掛けた罠であると踏んだからだ。だが、千尋はもう石化した。


 ならそれほどおそれる必要はない。そのように判断したからだ。


 しかし、


「『石の魔術師(ホルンフェルス)』。この勝負、僕の勝ちだ」


 ドクンと、心音が跳ね上がる。


「ち……ひろ? なぜだ! なぜ生きているッ! たった今完全に石化したはずじゃ……」


 横目に見た先に、灰色に染まった人型の物体と、もう一人。感情の失せた瞳で見つめる、三上千尋の姿があった。


 千尋は用済みだとばかりに、石の塊となったそれを倒して破壊すると、


「三年前も、そして今もベラベラ喋っていたでしょ。生き残るために必要な切り札を持てと」


「切り札……? この縄のことか……、いや、違う! お前だ! お前がここに『もう一人』いることだ! なぜだ!? なら今まで戦っていた相手は一体誰だと言うんだ!? まさか自分の分身を造りだすとか、そんな『ふざけた魔術』でも使ったっていうのか!?」


「ふざけた魔術って。あんたがそれを言うのかって話だけど、いいよ。死ぬ前に正解を教えてあげる。あんたが今まで戦っていたのは『本物の僕』じゃない」


「本物……ではない? じゃあ誰だ。まさか自分に似せて造った式神だとでも言うなよ。たかが式神にあんな複雑で高度な動きなんて実現できるわけがない」


「できるよ」


「!?」


「累計七二〇万枚」


「……? 何がだ」


「あんたが今まで戦っていた、僕そっくりの式神に使用した和紙の総数さ」


「……………………」


 驚きか、呆れか、無言で応える『石の魔術師(ホルンフェルス)』。


 通常、虫や小鳥程度の大きさのものであれば、二十センチ四方の和紙一枚あれば事足りる。複雑な命令を組み込む時は、数枚の和紙を使って一つの式を造り上げることもある。


 千尋がよく使用する大蛇や大虎などの式獣は、通常は式札一枚。大体、大学ノート二~三ページほどの余白を持った札を使用する。和紙で換算すれば十~二十枚ほどの量だ。


 それを基準にして考えると、累計七二〇万枚という数字がどれほど異常な数かは想像がつく。もちろん累計というからには、その全てが――すでに破壊されて命が尽きてしまったが――今まで戦っていた『偽者の千尋』の中に含まれていたわけではない。


 自分と『同じ情報』を持った『分身』に仕立て上げるため、足りないところは貼りつけ、不要な情報は剥がすなど、その調整を繰り返すこと三年。


 それだけの時間をかけて使用した総数が七二〇万枚という数に上るのであって、実際に『偽者の千尋』を構成する和紙の枚数は十万枚ほどで充分だった(それでも異常な数なのだが)。


 昨日、ステラが千尋宅を訪れた時のこと。あのとき千尋が部屋の中で作業に没頭していたのはその最終調整であり、さらにさかのぼっていえば、『バフォメット』襲撃の時にアパートの屋根で隣りに並んだ人物が『それ』だったのである。


 ここに来るときも、真冬に見送られながら家を出た千尋が『それ』であり(千尋の式神である真冬が気付かなかったほどだから、どれだけ二人の千尋が同じ情報を持っていたかは想像がつく)、その様子を監視していたステラの、その背後にずっと潜んでいたのが本物の千尋だったのだ(ステラの行動を怪しんで)。


 この戦いにおいても、本物の千尋は林の中から様子をうかがっており、『石の魔術師(ホルンフェルス)』を拘束した縄も彼が巻きつけたものである。


 その巻きつけた縄を、注連縄しめなわという。元来注連縄には常世とこよ(神域)と現世うつしよ(現実社会)を隔てる結界としての役割があり、神が宿る印ともされているのだが、今回は単に拘束者の魔素を縄が吸収するように――つまり魔術が使えないような術式を施していたことと、あとは拘束者の自由を阻害するという用途以外の意味はこの縄にはない。


 テントを張るように、四方八方からピンと縄に引っ張られた『石の魔術師(ホルンフェルス)』。振りほどくどころか、力を抜くと関節が外れてしまいそうになる。


「やれやれ、まいったね。まさかこんなことになるなんて……」


 言葉ほど余裕はなさそうである。

 実際に、千尋に短剣を奪い取られた途端、必死に縄の拘束から逃れようともがき始めた。


 魔術が使えない今の『石の魔術師(ホルンフェルス)』など、その辺を歩いている一般人と何も変わらない。急所に一突きするだけで絶命してしまうのである。


 そのせいか、歯を食い縛り、体を揺さぶり、うめきにも似た声を吐き出しながら縄からの脱出を図っている。

 今までの彼との対比から、見苦しいとも思えなくない態度だが、潔く敗けを認めるだとか、死ぬことを受け入れるだとか、そういった諦観の境地に今の『石の魔術師(ホルンフェルス)』はない。


 『彼』も千尋同様、目的を果たす前に死ねない理由があるのだ。


「くっ、やめろ……。千尋、頼む。あの人を生き返らせるチャンスをくれ。それが済んだら二度と君たちの前に姿を現さない。約束する。お願いだ!」


「断る。その話を信じるくらいなら最初からこんなことしていない。都合の良いこと言ってるって思わないの」


「わかっている。その上で頼んでいるんだ。あの人は僕と一緒になることを望んでいるだけなんだ。僕はその想いに応えないといけない。それだけだ。僕には最初から千影を狙う動機なんてないんだよ!」


「千影を人質に取ろうとしただろ」


「それは君との交渉材料のためさ。最初から君が協力してくれていればこんなことにはならなかった」


「それが信じられないと言っているんだよ」


 一度息を吐き出すと、


「もう終わりにしよう。これ以上あんたと話すことなんてない」


 短剣を持って『石の魔術師(ホルンフェルス)』の前に移動する。心臓のある位置へと持ち上げ――


「待ってくれ。頼む。『お願い! 千尋!』」


 突如変わった声色に、千尋の動きがピタリと止まる。


 聞いたことのない女性の声。本来ならそれが誰のものであろうと躊躇ちゅうちょする千尋ではなかったのだが……。


「どうした、刺さないのかい?」


 逆に八芽の声が背中に刺さる。すでに石の侵食は無効化したようで、隣りにいたステラも「千尋くん……」と不安げにつぶやいている。


 相手の顔を凝視したままの千尋。彼は一体そこに何を見ているのか……。


 『石の魔術師(ホルンフェルス)』も何かを訴えるように、黙ったまま千尋を見続けている。



 そもそも、なぜ『石の魔術師(ホルンフェルス)』がステラや千影の安全を保証する代わりとして、千尋に『生命の魂源』を使わせようとしたのか――。


 『石の魔術師(ホルンフェルス)』の正体が三上正太郎であればその必要はない。彼は一度千影に対して施術しているのだ。つまり、『四諦したい式を読み解くことができる正太郎』なら、必要なのは『生命の魂源』だけであって、わざわざ第三者の魂を用意してまで千尋に施術させる理由がない。


 『石の魔術師(ホルンフェルス)』の正体が、四諦式を読み解くことができる正太郎であれば……。


 『彼』は……いや、『彼女』は、魔術や呪術、錬金術でも憑依術でも何でもいい。その法則を成り立たせている言語やその仕組みなど教わってきたことはないし、自分から学んだこともない。


 生きた教本は手の届くところにあった。すぐそばに『天才』と称された二人の人間を幼い頃から間近で観てきただけ。


 それで充分事足りた。


 ある一人の『天才』は云った。

 自分なんてあの人の足元にも及ばない。1を忘れずにいることはできても、あの人のように0から1は生み出せないし、100も200も留めておくことはできない――と。


 その、もう一人の『天才』は云った。

 驚いたね。自分の娘ながら、とんでもない才を目の当たりにしたもんだよ――と。




 十五年前。千影に『生命の魂源』を施した正太郎。あの後何が起きたのか――


 千尋が生まれ、千影が亡くなったその日の晩。

 さつきの魂を用いて、千影を蘇らせることに成功した正太郎。


 代わりに脱け殻となったさつきを前にして、一体彼は何を思ったのだろうか……。


 妄執もうしゅうともいえるさつきへの執着心。正太郎自身は気付いていなかったが、その『歪んだ情愛』は、彼をある行動へと走らせた。


 自らの魂を使って、さつきを式神化させたのである。


 ただし、これは元々予定していた行動ではない。


 『当初の予定』では、屋敷からさつきの亡骸を持ち去り、安全を確保したのち、第三者の魂を用いてさつきを蘇らせるつもりだったのだが、そうも言っていられない様子を彼は目の当たりにしてしまったのである。


 通常の遺体よりも早く腐敗していくさつきの肉体を、彼は見てしまったからである。


 元々さつきが式神だったことを、八芽が昔『生命の魂源』を使用した相手がさつきだったということを、正太郎はこの時になって初めて知ったのである。


 焦りを覚えた正太郎。蘇った千影の魂を、再びさつきに戻そうか――。しかし、そんなことすれば、今度は千影の肉体があっという間に朽ちてしまう。それはさつきの意に反すること。


 村を出てさつきと一緒になりたい正太郎からすれば、彼女の気持ちを裏切ることだけは絶対にできない。

 必然的に、彼が下せた結論はこれしかなかった。


 自らの魂を使って、さつきを蘇らせることだった。

 その代わり、正太郎は術者として一つの命令を彼女に下した。



 どのような手段を用いても構わない。『生命の魂源』を使って、俺を蘇らせろ――と。





 遠くの部屋から聞こえてきた泣き声。清之介は布団を跳ね上げ、音源のもとへと駆けつけた。そこで彼が見たものは、死んだはずの千影が泣いているところと、一人の女性。


「さつき……。そこで何をしている……」


 つぶやきにも似た問いかけ。しかしすぐに様子がおかしいことに気付く。


 さつきの右手にはぐったりと横たわる大きな男。弟の正太郎。

 左手に握られた見覚えのある帳面。『生命の魂源』。

 そして今まで一度も見たことのない、敵意を孕んださつきの冷たい瞳。


 ここで起きたことを把握することは、そう難しいことではなかった。


「さつき、その手に持っているものを下ろしてこっちに来い」


 頭では無駄だとわかっていたが、そのように尋ねずにはいられなかった。式神は術者の命令通りに動く。それが使役されたものの存在理由。例えここで千影を人質にしたとしても、『今の彼女』は千影を見殺しにしてでも正太郎を生かすことを最優先に行動する。


 現に、さつきの目は一瞬たりとも千影には向かない。

 この局面を打開するための最大の障壁――清之介の排除、あるいは逃げる算段を整えているのだろう。

 さつきの取った行動は――


「邪魔、しないで」


 瞬間、さつきを中心に一気に石化の波が広がっていく。避ける暇はなかった。油断と言えばそうである。清之介はさつきが魔術を使えるということを知らなかったのだから。


 畳もテーブルも、座椅子も千影の体もあっという間に石にされていく。

 そして自分の体も……。


 水を吸い上げていくように重くなっていく足。すぐに自由が利かなくなる。

 しかし、限られた状況の中でやれるだけのことはやらなくてはならない。

 袖口から一枚の紙を取り出し、八芽に連絡を取り始めた。


 それを防ごうと迫ってくるさつきだったが、背後から網戸を突き破って侵入してきた式鳥に『生命の魂源』を奪われてしまう。


 仕事の時の癖だった。多角的に情報を得たいとき、敵地に侵入する際、そして何か不穏な空気を感じ取ったときなどは、索敵・攻撃用の手段を確保するために事前に式鳥を放つようにしているのだ。今回のケースでいえば、布団から起きた直後に一羽放っていた。


「八芽さん、緊急事態だ。すぐに来てくれ」


 連絡を取られてしまった。ぐずぐずしていれば八芽が来る。一瞬だけ迷うさつき。清之介を殺すか、奪われた呪術書を追うか――


 しかし彼女に与えられた命令は、正太郎を生き返らせること。同時に『四諦式を読み解くことができる清之介』は生かしておいた方がよいとの考えもあっただろう。


 素足のまま庭先へと降り、そのまま正太郎と共に姿を消した。





 目が覚めた、といった感じではなかった。気が付いたら目の前に八芽がいた。自分の胸に手を置いており、上半身から下に向かって徐々に石化した肉体が戻っていく。


「八芽さん、さつきは? 実はさつきが正太郎に――」


「知ってるよ。ここに来る途中で会った。あたしに捕まることをおそれてか、何も言わずに去っていったがね」


「そうですか……」


 顔を落とす清之介。隣を見ると一羽の式鳥が『生命の魂源』を咥えてジッとしていた。どうやら逃げ切ることに成功……いや、正太郎の安全を優先して見逃されただけかもしれない。


「八芽さん、あの術は対象者に魔術的な回路も植えつけることができるんですか? それともさつきは昔から魔術が使えたと?」


「これは……正太郎じゃなくあの子がやったって言うのかい?」


 周囲を見回す八芽。部屋どころか、建物全てが石になっていることである。清之介はここで何が起きたのかを説明した。

 それを受けて八芽は、


「これは驚いたね。自分の娘ながら、とんでもない才を目の当たりにしたもんだよ」


「才? これが才能によるものだと? この呪術書を使って正太郎がさつきに石の魔術を伝授したわけではないのか?」


「まぁ、知識を『焼きつける』ことによって、術者が培ってきた経験を植えつけることはできるだろう。その代わり犠牲にしなければならないものもあるだろうがね。ただ、あの子の場合は恐らく違う」


 ゆっくりと清之介に視線を戻し、


「あたしや正太郎がみせた石の魔術を、そのまま再現したのさ」


「そのまま再現したとは?」


「言葉通りの意味さ。あたしらが魔術を行使する時は、術式言語のなんたるかを知り、一つ一つ文字の意味を理解し、記述式の仕組みやルールを守りながら、効率化された形式に則って式を構築していく。そしてそこに必要な量、必要なタイミングで魔素を送り込んで初めて一つの術が現象として発現する。それが魔術を行使する際の原則であり、唯一の手段である……と、あたしらは教えられてきたし、そう考えてもきた。でもね、中にはそんな段階を踏まない稀有けうな存在もいるんだよ」


「それがさつきだと……」


「そう。数百万人に一人か……いや、確率的にはもっと低いかもね。昔似たようなことができる子に会ったことがあるが、ああいった子たちは、見たものをそのまま『イメージ』として再現する。そこに規則性や法則性はない。自分の中に仮想現実を創り上げているんだろうね。そういったことが出来ると『思い込める力』、『再現出来る力』があの子たちにはある」


「なら、『生命の魂源』がなくても、さつきなら正太郎を式神化させることもできるということですか?」


「いや、無理だろう。アレはそういったものじゃない。アレはまず体の仕組みを四諦式に置き換え、一つ一つの行動をプログラム化させ、なおかつ魂を肉体に定着させないといけない。イメージや漠然とした想いだけでどうこうできるものでもないからね」


「なら、近いうちにこれを狙ってやって来るかもしれませんね……」


 呪術書――『生命の魂源』をぎゅっと握りしめる清之介。


「八芽さん、これは俺が持っていてもいいですか?」


「……別に構いやしないが、ただ、あの子が狙うのはそれだけじゃなく、あんた自身でもあるということもわかっているね?」


「もちろんです。だからこそ、ですよ」


 次こそ自分の手で決着ケリをつける――言葉に表さなくても、それが清之介の顔からは充分過ぎるほどに伝わってきた。


 あの時――

 式鳥を使い、背後からさつきが持つ『生命の魂源』を奪った時だ。あの時さつきは油断していた。殺そうと思えば殺せた。

 今のさつきは正太郎の傀儡くぐつだ。もう自分の知っている彼女ではない。


 それでも――殺せなかった。


 この決断を六年後に後悔することになるとは、今の清之介は知るよしもない。


 ふところに呪術書をしまう清之介。それを見届けた八芽。

 のちに八芽は清之介に向かって「あんたにその呪術書を持たせておいたのは、あたしとあんたのどっちかが生きていれば『石の魔術師(ホルンフェルス)』に対抗するすべが維持できると踏んでのことだ」と語ることになるが、正確にはそれは違っている。


 自分が所持したいと清之介から切り出されたとき、八芽は『生命の魂源』を破棄してしまおうと思っていた。


 しかし、破棄してしまえば同じものを作り出せるのは八芽しかいなくなる。正太郎を蘇らせることを第一に考えて動く今のさつきなら、どれだけの人間を犠牲にして八芽に交渉してくるか想像もつかない。断れば、八芽の心が折れるまで死者の数は延々と増え続けていくだろう。


 だが、八芽もそう簡単には首を縦に振らない。彼女はそういう人間である。


 だから、言い方は悪いが『逃げ道』は残しておく必要があったのである。


 どちらが正解だったかはわからない。しかし、ここから十五年もの間、この決断を何度後悔することになったかは、今の八芽もまた知るよしはない。

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