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第四話 探索隊

王城会議から三日後

黄昏の箱庭

王城前広場


空は快晴、城門前には複数の荷車が並んでいる。

食料、水、予備武器、医療用品、携帯天幕、探索用魔導具。

第四軍団謹製の魔導コンパスまで積まれていた。


明らかに遠征準備だった。


「多くない?」


悠真が荷物の山を見て言う。

すると、ミレイアが不思議そうな顔をした。


「少ない方ですが」


「いや多いだろ」


「そうでしょうか」


ミレイアは首を傾げる。


その後ろにはクロエがいた。


クロエ

種族:アラクネ

役職:研究助手

レベル:95

外見年齢:18歳前後

身長:160cm

淡い紫色の長髪

紫色の蜘蛛眼のような瞳

細身

工具だらけ、爆発痕だらけ、裾が薬品まみれの白衣


「第三倉庫の荷物も持っていきますか?」


「良いですね」


「良くない」


二人の横にいたロイドが即答する。


ロイド

種族:アラクネ

役職:技術局長

レベル:95

外見年齢:30代前半。

身長:185cm。

短髪黒髪

銀縁眼鏡

常に作業服

第四軍団で一番常識人


「遠征ではなく侵攻になります」


第四軍団は今日も平和だった・・・・いや、平和ではないかもしれない。


そんな様子を見ながら、悠真は改めて探索隊の面々を見渡した。


今回の目的は一つ。

アステリアの痕跡を追うこと。


舞台は深森エルフ自治領

古代遺跡

そして世界樹伝承の残る地


それ故に、参加者もかなり豪華だった。


まず。


フェンリス

第一軍団長

神狼王

護衛責任者で何が起きても多分どうにかなる。


ラグナ

第二軍団長

竜王

「暇だから来た」と本人はそう言った。

どう考えても護衛戦力であり、軍団長が暇とは思えない。


エルシア

第五軍団長代理

アステリアの痕跡を最も長く追い続けてきた人物で今回の探索では中心人物だった。


オルフェ

第五軍団の学者

遺跡調査担当、古代文字解読担当、実質的な今回の頭脳であり彼なくして今回の探索は成り立たない。


最後はフィア

当然のようにいる。もはや説明は不要だろう。


「よろしくね!」


元気だった。

何故来たのかの答えは単純明快、本人が来たかったから。


ガルムが頭を押さえている。


「止めました」


「うん」


「止まりませんでした」


「だろうな」


全員納得した。

フィアが止まる訳がない。


その時、シェリルが後方から慌てた声が聞こえた。


「フィアー!!!」


シェリル

種族:白狼族

役職:補給隊長

レベル:95

身長:170cm前後。

外見年齢:30代前半

長い白髪

薄青色の瞳

白い狼耳

白い尻尾

美人、優しい、落ち着いている三拍子揃った大人の女性


フィアが振り向く。


「シェリル!」


「ちゃんと着替えは持ちましたか!?」


「持った!」


「薬は!?」


「持った!」


「予備の靴は!?」


フィアが固まる。忘れている。

シェリルが溜息を吐いた。


「やっぱり……」


補給袋を押し付ける。


「これも持っていきなさい」


「ありがとう!」


周囲が微笑ましい目で見る。どう見ても親子だった。



昼頃、探索隊は出発した。

目的地は深森エルフ自治領。


かつて大森林と呼ばれた地であり、今は枯森と呼ばれる土地。


馬車が街道を進むと遠くにはグラディス旧領も見えた。

戦争の爪痕はまだ残っている。

焼けた村、放棄された農園、崩れた砦。


そして、解放された亜人達。

新しい家を建てる者、畑を耕す者、子供と遊ぶ者。


少しずつ、本当に少しずつ変わり始めている。


その光景を見ながら、悠真は呟いた。


「これで良かったのかな」


小さな声だった、普通だったら聞こえない。

しかし、フェンリスには聞こえていた。


「何がだ」


「全部だよ」


聞こえていたのかと、驚きとともに悠真は空を見る。


「戦争、解放、国を潰したこと、価値観を変えようとしてること」


この世界に来てから、答えは出ない。答えの出ない事ばかりだ。


すると、意外な人物ラグナが口を開いた。


「分からん」


即答で返ってきた答えになっていない回答。だがそのラグナらしさに悠真が苦笑する。


「だが」


ラグナは前を見ながらもはっきりとした言葉で言った。


「主は迷う、俺は迷わん」


「だから主が王だ」


それだけだった。

フェンリスも頷く。


「同意する」


「考えるのは主の仕事だ」


「従うのは我らの仕事だ」


答えになっていないようで、なっているような妙な励まし方だった。

でも、少しだけ気が楽になった。



夕方になると探索隊は枯森地帯へ到着する。


そこに広がる景色を見て悠真は言葉を失った。


森・・・・だったもの。

そこに広がっていたのは、死んだ森だった。


枯れた木々

ひび割れた大地

折れた巨木

生命感が無い


まるで、森そのものが死んでいる。

エルシアの表情も曇る。


「……酷い」


その声には感情が滲んでいた。

オルフェが静かに説明する。


「数百年前、この一帯は世界有数の大森林でしたしかし」


言葉が続かないが、言わなくても分かる。


人類国家

開拓

戦争

森林伐採


積み重ねの結果、森は死んだ。

今でもエルフ達は生きているが、森は戻らない。

フィアが俯く。


「悲しいね」


誰も否定しなかった。できなかった。


その夜

野営地で探索隊は焚火を囲んでいた。

静かな時間だった。


すると、エルシアが小さく口を開いた。


「アステリア様なら」


全員が彼女を見る。


「この森を見て怒るでしょう」


懐かしそうに、そしてどこか悲しそうに少しだけ笑みが浮かぶ。


「花が好きな方でした、木が好きな方でした、子供も好きでした」


静かに語る、今までほとんど語られなかったアステリアその人物像について。


「だから」


エルシアは星空を見上げる。


「必ず見付けたいのです」


その声は、決意に満ちていた。

誰も何も言わない、言葉は必要なかった。なぜなら、全員同じ気持ちだったから。


そして、誰も気付いていなかった。

この枯森のさらに奥、古代遺跡の地下深くの誰も知らない場所で、一輪の花が咲いていることを。

本来なら、絶対に咲くはずのない場所で、まるで誰かが訪れるのを待つように。


静かに、静かに、揺れていた。



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