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第十五話 黄昏会戦

夜明けと共に。

その戦争は始まった。


北方平原。

見渡す限りの草原。

その中央で二つの軍勢が対峙していた。


グラディス侵攻軍。

総勢約一万二千。

 

対する。


黄昏の箱庭。

総勢約四千五百。

 

三倍近い戦力差。

数字だけ見れば勝負にならない。

誰が見ても劣勢は黄昏の箱庭だった。



グラディス軍前線。

兵士達の士気は高かった。


「勝てるぞ!」


「数はこっちが上だ!」


「亜人如きが!」


笑い声が響く。

彼らはまだ知らない。

自分達が今から何と戦うのかを。



ゼルバルトは馬上から敵陣を見ていた。

その隣にはオスカー。

白銀騎士団長。英雄級。

グラディス最強の剣。


そして。

ゼルバルトは鼻で笑った。


「少ないな」


四千五百。

想定通り。


副将を失い。補給を乱され。貴族が離反したとはいえ。

こちらは一万二千。

 

負ける理由がなかった。


「全軍前進」


ゼルバルトが命じる。

 

戦争が始まった。


ドオオオオオオン!!


大地が揺れる。


歩兵が進む。

騎兵が進む。

弓兵達が隊列を整える。

 

一万二千の軍勢が一斉に動く光景は圧巻だった。

まるで巨大な津波。


兵士達は興奮していた。


勝利を確信していた。



その頃。

黄昏の箱庭本陣。

悠真は静かに戦況を見つめていた。


緊張している。

しかし不思議と恐怖はなかった。

 

周囲を見る。

 

フェンリス

ラグナ

リリアーナ

ミレイア

エルシア

 

全員いる。

一人じゃない。

 

その事実が大きかった。


レイナが報告する。


「敵軍前進」


「距離三千」

 

悠真は頷く。

 

そして。

初めて王として命じた。


「迎え撃て」


轟音。

 

次の瞬間。

 

エルフ魔導兵団が動いた。


第五軍団

アステリア軍団

 

エルシアが前へ出る。

銀髪が風に揺れる。


その後方には数百名のエルフ魔導兵。

全員が杖を構えていた。


グラディス軍。

 

前進。

前進。

 

まだ距離は遠い。

普通なら届かない。

 

しかし。


エルシアが静かに杖を掲げた。


「第一射」


空気が震える。

 

巨大な魔法陣

幾重にも展開

 

グラディス軍魔導兵団長レオンが顔色を変えた。


「なっ……!?」


遠過ぎる。


届く距離ではない。

人類の魔導士の常識なら。


だが。


「放て」


数百の魔法が空を埋める。

 

光

炎

雷

暴風

 

それらが巨大な流星群となって降り注いだ。


グラディス軍前列。

 

大爆発

轟。

土煙

悲鳴

 

兵士達が吹き飛ばされる。


「敵襲!!」


「魔法だ!!」


「馬鹿な!」



レオンが叫ぶ。


「射程距離がおかしい!」


その通りだった。

 

黄昏の箱庭の魔導兵は異常。

レベル差がある。技術差もある。装備差もある。


その一撃だけで。


グラディス軍前列数百名が崩れた。


ゼルバルトが立ち上がる。


「何が起きた!」

 

誰も答えられない。


まさか。


開戦直後に。

ここまで被害が出るとは思わなかった。


しかし。


本当の絶望はここからだった。


グラディス軍。

 

前進。

前進。

被害を受けながらも止まらない。

 

数が違う。

多少死んでも押し潰せる。

そう考えていた。


そして。

遂に。前線が激突する。


重歩兵隊。

対

黄昏の箱庭兵。


グラディス兵が叫ぶ。


「突撃!!」

 

剣を振るう。

槍を突き出す。


次の瞬間。


「えっ」


グラディス兵の首が宙を舞った。


何が起きた。

誰も分からない。


黄昏兵が通り過ぎた。

それだけだった。


レベル差。

世界が違った。


グラディス一般兵。Lv20〜40。

黄昏一般兵。Lv60〜70。


数値差。二十以上。

実力差はそれ以上。


グラディス兵が三人がかりで襲う。

黄昏兵が一人で迎え撃つ。

 

そして。


死ぬのはグラディス兵だった。


「化物だ!!」

 

前線の悲鳴が変わり始める。


勇ましい叫びではない。

恐怖だった。


「止まらない!」


「剣が通らない!」


「強過ぎる!!」


一方的。

あまりにも一方的。


ゼルバルトの顔から笑みが消えた。


副官が青ざめる。


「ば、馬鹿な……」


想定していた戦争ではない。


精鋭だ。

敵全員が精鋭。


そんな国家は存在しない。


そのはずだった。


しかし。現実に存在していた。


黄昏の箱庭。


フェンリスが静かに前線を見る。

まだ動かない。

ラグナもだ。

リリアーナも。

 

軍団長は誰一人戦っていない。


それなのに。

前線は既に崩壊し始めていた。


ゼルバルトは叫ぶ。


「オスカー!!」


待ちかねたように。


白銀騎士団長が立ち上がった。


オスカー・ヴァレン。

英雄級。レベル85。人類最高峰。


その剣が抜かれる。


白銀の闘気

膨大な魔力

圧倒的な存在感


前線の兵士達が歓声を上げた。


「オスカー様だ!」


「英雄だ!」


「勝った!!」


ようやく。

ようやく本物が出てきた。


オスカーは愛馬へ跨る。

その表情は真剣だった。


開戦から数十分。

既に理解していた。


雑魚ではない。

神狼王という噂も。

誇張ではない。


だから。自ら前へ出る。


「道を開けろ」


白銀騎士団が前進する。

英雄が戦場へ降り立つ。


その圧力だけで。

周囲の空気が変わった。



黄昏の箱庭側。

前線に出ていたフィアがそれを見ていた。


金色の瞳が細くなる。


「強い」


転移後、初めてだった。

彼女がそう言ったのは。


ガルムも前を見る。

レイナも見る。

フェンリスも。


そして。

オスカーの視線もまた。

黄昏の箱庭側へ向いていた。


戦場のど真ん中。

二つの視線が交差する。


英雄 対 神狼族遊撃隊長


そして今までの戦場で二つ名の通り活躍してきたフィアの本領が発揮される。

その名は・・・英雄殺し


書いていて、矛盾がなるべく起きないようにしていたら気づいたらフィアが敵将と一騎打ちになりました(笑)

フィア活躍しすぎ!(笑)

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