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第十二話 開戦前夜

グラディス辺境侯国との戦争が始まろうとしていた。

もはや誰の目にも明らかだった。

黄昏の箱庭とグラディス。

どちらかが引かなければ終わらない。

そして。

どちらも引くつもりはなかった。



中央塔最上階。

会議室。

黄昏の箱庭幹部が全員集まっている。

悠真。フェンリス。ラグナ。リリアーナ。ミレイア。エルシア。

そして各軍団の主要メンバー達。


部屋の中央には巨大な地図が広げられていた。

南部一帯。

グラディス辺境侯国。補給路。街道。村。砦。

全てが書き込まれている。


セレスが静かに前へ出た。


「報告します」


部屋が静まる。


「現在確認できるグラディス軍総数」


「一万四千八百七十二」


一万五千に近い。

やはり本気だった。


「さらに冒険者勢力五百」


悠真の眉が動く。


「そんなにいるのか」


「います」


セレスは頷いた。


「正規軍だけならもっと少なかったでしょう」


「ですが」


「今回の戦争は亜人討伐が名目になっています」


それが厄介だった。普通の戦争ではない。

人類至上主義。奴隷商人。人攫い。亜人狩り。

そういった連中にとっては"儲かる戦争"だった。


「嫌な話だな」


ラグナが呟く。

誰も反論しなかった。


次に前へ出たのはヴィオラだった。


「良い報告もございますわ」


美しい笑みを浮かべる。


「敵軍一万五千」


「実働は一万二千九百程度です」


悠真が聞き返した。


「どういうことだ?」


「援軍拒否です」


ヴィオラは扇子を広げる。


「二つの貴族家が不参加を決定しました」


「表向きは財政問題」


「実際は?」


フェンリスが聞く。

ヴィオラは微笑んだ。


「ただのお話し合いですわ」


絶対違う。全員がそう思った。

だが成果は事実だった。


戦う前から二千人以上減っている。

もはや立派な戦果である。


「さらに」


ノワールが短く告げる。

珍しく自分から発言した。


「補給」


全員が視線を向ける。

ノワールは地図へ印を付けた。

三箇所の赤い印。


「主要補給拠点、把握済み」


ラグナが笑う。


「哀れだな、戦う前から腹を刺されているようなものだ」


ノワールは頷いた。

感情はない。事実だけ。だがその事実が恐ろしい。


グラディス軍はまだ知らない。

自分達の補給路も。進軍経路も。兵力も。


既に黄昏の箱庭へ知られていることを。


「では次です」


レイナが地図を広げる。

今度は黄昏の箱庭側だ。


「軍配置を説明します」


ついにその時が来た。

国家総力戦。

各軍団の役割が発表される。


「第一軍団」


フェンリスが立つ。


神狼族中心

黄昏の箱庭最強軍団


「敵精鋭の撃破」


「遊撃」


「敵指揮官の排除」


フェンリスは短く答えた。


「問題ない」


自然だった。

まるで散歩の予定でも聞かれたように。

実際。神狼王にとっては大差ないのかもしれない。


「第二軍団」


ラグナが立つ。


竜人軍団

主力軍


「中央戦線を担当」


「敵本軍を受け止めます」


レイナもその横にいる。

軍としてもっとも重要な役割。

正面から敵を潰す。国家の壁となる役目だった。


ラグナは鼻を鳴らす。


「一万三千か」


その声には余裕しかない。


「少ないな」


会議室のあちこちで苦笑が漏れた。

普通は逆だ。

だがラグナは本気でそう思っている。


「第三軍団」


リリアーナ

吸血鬼軍団


「開戦後も工作を継続、補給線遮断、敵将暗殺、敵情報網破壊」


リリアーナは優雅に立ち上がった。


「お任せくださいませ」


その笑顔を見ていると。

グラディス側が少し可哀想になってくる。

悠真は思った。敵ながら不憫だと。


「第四軍団」


ミレイア

研究軍団


「通信維持、兵站維持、後方支援、防壁管理」


戦争では目立たない。

だが重要度は極めて高い。ミレイアが停止すれば。軍全体が停止する。

本人もそれを理解していた。


「働きたくないです」


いつもの一言。

しかし。誰も心配していない。結局やるからだ。

完璧に。


「第五軍団」


エルシアが立ち上がる。


アステリア軍団

現在の代理指揮官


「偵察、遠距離魔法支援、治療支援、結界支援」


エルフ達の仕事は多い。

リーファ。オルフェ。そしてエルフ魔導兵団。

全員が準備を進めていた。

エルシアは静かに言う。


「必ず勝利へ導きます」


その言葉に迷いは無かった。



会議終了後。

夜。

悠真は一人で城壁へ出ていた。


街を見下ろす。灯りが綺麗だった。

人口は増えた。三万五千を超えた。

風牙の住民。白耳の生存者。奴隷市場から救出した者達。

皆ここで暮らしている。守るべき人達だ。


その時。

隣へフェンリスが来た。


「眠らないのですか」


「無理だろ」


悠真は苦笑する。


「明日から戦争だぞ」


フェンリスは街を見る。

子供達。家々。灯り。守るべきもの。

同じものを見ていた。


「大丈夫です」


静かな声だった。


「勝ちます」


根拠は無い。理屈も無い。


だが。

フェンリスが言うと不思議とそう思えた。



その頃。

グラディス辺境侯国。大軍営。

一万三千の兵士。五百の冒険者。無数の軍馬。大量の補給物資。

まさに戦争準備だった。


中央天幕。

そこにはゼルバルト・グラディスがいた。

そして。その横には大柄な男。


白銀の鎧を纏う騎士

オスカー・ヴァレン

白銀騎士団長

英雄級

レベル85

グラディス最強の武人


「準備は整った」


ゼルバルトが言う。

オスカーは静かに頷く。


「敵は?」


「亜人共だ」


短い返答。

オスカーはそれ以上何も言わなかった。

だが。その目には自信があった。


ワイバーンを討った。

国家戦争で功績を挙げた。

英雄と呼ばれた。


自分が負けるはずがないと。

そう信じている。



さらに別の天幕。

そこには冒険者達がいた。


血狼の牙

A級冒険者パーティ

リーダー

ギルベルト

レベル79

奴隷商人や人攫いと深く関わる悪名高い集団


「終わったら報酬だ」


ギルベルトが笑う。部下達も笑う。

獣人の村。奴隷。金。いつもの仕事。

その程度にしか思っていない。


ただ一人も知らない。

その戦場にいるのが。

自分達の常識を超える怪物達だということを。



夜が更ける。

黄昏の箱庭。

グラディス辺境侯国。

それぞれの兵士達が戦争に備えていた。


そして。

まだ誰も知らない。

この戦いが。南部の歴史そのものを変える戦争になることを。


様々な異名を持つ怪物達が、明日一斉に牙を剥くことを。


転移後最大にして人類史が変わる戦い。


黄昏会戦


その幕が、静かに上がろうとしていた。


レベル別の設定を書いておきますのでご参考まで

◆人類側

一般人:Lv1〜10

訓練兵:Lv10〜20

一般兵:Lv20〜40

精鋭兵:Lv40〜50(百人隊長クラス)

名のある将軍:Lv50〜70(一般国家最強クラス)

※例:バルト・アイゼン Lv55前後・・・もう皆さんは覚えていないかな?(笑)

英雄級:Lv80〜(大陸でも有名、一国の切り札)

※各国最低1人は出したいな~とイメージしています。

 レベルは武力だけでは決まりませんのでご注意ください。


◆冒険者

冒険者ランク

D級:Lv10〜20(新人)

C級:Lv20〜40(一般的)

B級:Lv50〜60(精鋭)

A級:Lv60〜80(国家から依頼が来る)

S級:Lv80〜89(英雄)

SS級:Lv90以上(世界に7人)

※一応SS級7人のイメージで作成しており、何人かキャラも作成済みですが全員がでるかは未確定です(笑)


◆黄昏の箱庭

黄昏兵:Lv60~70

軍団長側近:Lv95

軍団長:Lv100

※もっとこうしたほうが良いなどアドバイスがあればどんどんコメントしてください(笑)

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